誰でも分かる!アメリカ主婦ポリ1
どもー、初めましてー。米国在住22年のTiger.Shark.です!色々あってオレゴンで主婦やってます。
Facebookで、在米日ママ友たちに、やんわりしたアメリカ政治事情解説、主婦ポリティクス略して主婦ポリが結構好評だったので、この大事な大統領選の2020年、急がしい主婦でもつらつら読めて、ニュースがぐっと面白くなる主婦によるざっくり解説、皆さんに読んで頂けるようにこちらでやるようにしまーす。
あの、あんまり細かいことは分からないです。でも米政治事情、ほんっっっっっっっっとに面白いんです。色々考えさせられます。実はそんなに難しくないし、みんなで情報を分かち合えればと思ってます。
今日からしばらくは、Jon FavreauのPodcast、The WildernessのSeason 2
を教材に1話ずつ解説付きでざっくり訳して行きます。Jon Favreauは政治コメンテーターで、過去にはオバマ大統領のスピーチライターをやっていた人です。若いですねー。すごいですねー。同姓同名の俳優もいますので、confuseなさらぬよう。
オバマ政権にどっぷり浸かって仕事してきただけあって彼は民主党支持、リベラル系の書き手です。今回訳す彼のPodcast、The Wildernes Season 2では11月の大統領選に向けて、民主党が共和党を倒すにはどうしたらよいのかと言う戦略を述べています。知識人のインタビュー、データをたっぷり盛り込んであって、アメリカ全体の感じを掴むのにとても分かりやすいので、教材とする事にしました。さあ行ってみよう!
主婦ポリ1:民主勝利への道1〜ブルーウエーブ2018から学ぶ
トランプの戦い
遂に決戦の時が近づいている。2020年、11月3日 午前6時。
トランプが当選して2期目(米大統領の任期は4年。再選すればもう4年。)を許してしまうとどうなる?最高裁判事にカヴナー氏に続き更なる保守派を送り込み、国民健康保険制度はめちゃくちゃになり、温暖化の事も無視、戻れないほど環境を破壊するに違いない。取り返しのつかないことになり、そのダメージから私たちはもしかすると立ち直れないかも知れない。
トランプの集金力はもの凄く、FOX Newsに代表されるありとあらゆる保守派メディア、Facebook、保守派You Tube Channelや地方のフェイクニュースを使って総攻撃をしかけてくる。自党の有権者を煽動し、怒らせ、おののかせ、地を這ってでも投票に来るようにするでしょう。
民主に投票する有権者をあの手この手で、投票から遠ざける。難癖つけて投票者登録を破棄、投票所の閉鎖、票の無効化、、、(Tiger.Shark.より一言:これは実際に共和党陣営が行っています。この傾向がなかなか止められず、2020でも色々な州やカウンティでこれが行われるでしょう。これをまとめてvoter suppressionと言います。)。さらには敵対する候補者のスキャンダルを流し、犯罪者扱いし、ルール違反の戦いをする。ガードレールを突き破り、レフリーを笑い飛ばすのが彼のやり方だ。
どうする?勝てるのか?
勝てる。道はある。既に一度勝っているんだ。(続く)
注釈:ざっくり選挙人制度解説
[Tiger.Shark.note:アメリカの政党は基本分かりやすく2つしかないっす。民主党と共和党。民主党はリベラルで、共和党は保守。民主党は青で共和党が赤。大統領選は「州ごと選挙人全取り合戦(メイン州とネブラスカ州は例外)」ですから州ごとに赤と青で塗りつぶすと先の2016年の選挙結果はこうなります。
州ごとの数字が選挙人の数です。選挙人は全国で538人いて、過半数の270を取った方が勝ち、ということです。、、、なんだか真っ赤っかに見えますね 😓。
人口の密度を考慮した色塗りマップはこちらです。
今度は青い方が勝ってるようにも見えます。
はい。実は2016年、ヒラリークリントンは得票数65,853,514票で62,984,828票のトランプにおよそ3百万票の差で勝っています。これを英語で「popular vote」と言い、なんと選挙人制度の導入されている米国では、得票数で勝っても、選挙人の数で負ける、という事態が発生するのです。2000年のジョージブッシュもそうでした。
僅差で勝っても、大勝してても、過半数を取ってしまえばその州の選挙人を全取りできてしまう事が一つ。
そして、州の選挙人の数が州の有権者の数を必ずしも反映してないという事。対人口100万人に対しての選挙人の数は
民主党派の州はNY(1.52)、CA(1.39)、MA(1.59)、、。
共和党派の南部州はAL(1.83)、MS (2.02)、AR (1.9)、LA (1.72)、、。と数値が高いです。
要は民主主義導入時の南部、奴隷保有の裕福な州の票の方が影響力が大きいと言う訳です。
なぜこんな制度があるのかと言うと、建国者達が民主主義を導入するとき、「やっぱ、さー、農民とか?まださー、教育もあんま整備できてないからさ、変なのに踊らされてとんでもない奴が大統領なったらヤバくね?一応最後はちゃんとした由緒正しい奴に決めてもらう感じにしようぜ。いきなりフル民主主義は危ないって。」って事だったらしいです。なるほど。確かに危なっかしいと言えばそうだったのかも知れません。
しかし現在2020年。形式だけ残っているこの制度のせいで一票を一票と数えない民主主義という中途半端な感じに。という訳で、この制度をどうにか改正しようという動きが色々起こっています。少しずつ変わってはいますが、今度の11月には間に合わない感じです。]
2018。ブルーウエーブ。
2016と2020の大統領選の間の、2018の中間選挙(主に連邦下院議員、他には知事、州議員や検事)で、民主党は圧勝した。2016で真っ赤っかになったアメリカをブルーウエーブが奪還したのだ。
7知事を奪還し、5州で下院を青に塗り替え、連邦下院議員は40議席(1974年以降最多の増加数)も増やした。票数総計では870万票の差を共和につけており中間選挙では過去最高の票差となっている。
数だけではない。
史上初ムスリム系女性議員2名(ミネソタ州オマー氏とミシガン州トゥライブ氏)
史上初ネイティブアメリカンの女性議員2名(カンザス州デービッズ氏とニューメキシコのハーランド氏)
そして史上最年少の女性議員も誕生した(ニューヨーク州オカシオーコルテス氏、通称AOCと呼ばれています)。
コロラド州では史上初のゲイである事を公言している知事が選ばれ(ポーリス氏)、
見渡せば下院435議席中126議席が女性(過去最高)、1/3が有色人種という、過去に前例のないレベルの多様性を誇る議会となった。
2018に何が起こっていた?
2016年は共和党のトランプが勝利した他、上院も下院も共和党に乗っ取られた。国全体が保守に偏っていたという事だ。では2018年になぜこのブルーウエーブ、リベラルの波が押し寄せたのか?何が起こったのか?
UCLAカリフォルニア大学の教授で、NYタイムスの寄稿者のLynn Vavreck、
トランプ当選からのショックで、(今まで静かだった)民主党支持者が動き始めましたね。次の選挙でショックを受けないように、ちゃんと選挙に行く、周りの支持者を投票に向ける。多くの人が実際に行動に出たんです
The Cook Political Reportの編集者、podcast "Politics with Amy Walter"のホスト、エイミー ウォルター
トランプへの不信感が民主支持者の2018の行動力につながっている。
反トランプ感情は確かに2018の勝利の大きな理由だろう。彼の人間性では無く、政策や政治家としての仕事に大きな反感がでた。
リベラルシンクタンク、Data For Progressのエグゼクティブ ディレクター、Sean McElwee、
反トランプ人々の間で、特に批判され、改善を希求されているのが「国民皆保険」と「税制」。多くの有権者が上がる一方の医療費に苦しんでいるし、富裕層への減税を実現した先の共和党の税制改革に強く反発している。
リベラル系シンクタンクのDemosの元プレジデント、ヘザー マギー
(2018の勝利の理由は)とにかく女性、女性、女性の進出ですね。
2018年、史上最高数の女性が、投票し、選挙活動に参加し、そして自らも出馬した。予備選では589人の女性が全国で上院議員に、下院議員に、知事に出馬した。そして125人が当選を果たしている。
彼女達は今までの候補者達と違う。お職の政治家でなく、この前まで普通に生活していた市井の女性が、これは見ちゃおれん、と立ち上がったのだ。地元から自然と生まれたリーダーだから有権者に歩み寄る事なんてしなくていい。Organically grown candidateだ。 ---Amy Walter
女性に続いて、若者が、有色人種が真っ赤っかの保守ゾーン、今まで共和党が候補も立てなかったようなdeep redの地域で出馬した。
Turn Out(新規投票者)かPersuasion(鞍替え投票者)か。
[Tiger.Shark.note:
日本もそうですが、アメリカも実際投票率は少ないです。50−60%って所です。興味が無くて今まで投票してなかった人、まだ若すぎて投票できなかった人、有色人種で差別を受けて投票できなかった人、理由は色々ですが、このnon-voterと言われる人たちが実は一番大きい有権者集団です。ざっくりと
民主党:30 共和党:30 無投票:40
って感覚で覚えとくといいみたい。この40%の無投票者は
18-35の若者/女性/有色人種
が大部分を占めており、「僕は民主党!決めてんの!プン!」って言ってる民主党、「僕は共和党!ぷんぷん!こっちだって決まってるもん!」という共和党の2勢力で、限りある数の「今年はどっちに入れるかなー?」とふらふらしている人(swing voterと言います)を取り合いしてないで、この無投票者を取り込めよ、ってのがturn outとかmobilizationと言われる戦略。
そしてもう一つ、それでもやはり見逃せない数のobama-trump voterと呼ばれる、2008にはオバマに入れたけど2016にトランプに入れた、代々民主党だったけど2016に共和に鞍替えした人達などswing voter。この人達にまた民主党に戻ってきてもらう戦略がpersuasion。]
2018年の勝因はどちらだったのだろう?
①Persuasionだ
(2億4千万人ものサンプル調査をするデータ会社Catalistによれば)2016に共和党に投票した有権者が民主に戻った、と言う動向の方が大きい、となってます ---Amy Walter。
モンタナ州とテキサス州は、例外だったがその他は大体Persuasionの方が影響力大きかった ---オバマ陣営のデータアナリスト、Civis Analyticsの創始者のDan Wagner
②Voter Turn Outだ
白人の有権者ではやはり共和党は強いんだ。2018の勝利は新しい、違うタイプの有権者の参入によってもたらされた ---オバマの世論調査員、Cornell Belcher
③両方でしょ!
だいたい場所によっても全然違うし、そういう議論はあまり有益ではない。両方、起こっていた。カリフォルニアの一地区で起こっていたこととミシガンの一地区で起こっていたことは違う。2018に何が起こった?と簡単に説明するのは不可能だし、意味が無い ---Lynn Vabreck
これらの意見を全部聞いて一つ確実なのは、2020の有権者がどういう人たちかを細かくみていく必要がある、という事だ。
懐古連合と変動連合
政治アナリストで有権者の人口統計動向のスペシャリスト、Ron Brownsteinに話を聞いてみよう。
過去25年間に渡り、有権者のデモグラフィーは文化的に、階級的に、根本的なレベルで変化している。その変化に反発するのが共和党で、受け入れるのが民主党ということになる。民主党が主に擁する人と地域は、若く、有色で、大卒、特に宗教にこだわらない白人(その中で特に女性)。[Tiger.Shark.note:彼はこれをCoalition Transformation、変動連合と呼ぶ]共和党が主に擁する人と地域は、労働者階級、古く、田舎で、宗教心の強い白人だ。[Tiger.Shark.note:Coalition Restoration、懐古連合]
2018に何が起こったって?新しいアメリカが立ち上がって、自分を守ったんだ。変動連合の勝利だよ。ミレニアル(若者)が、マイノリティが、大学生が自分たちでムーブメントを起こしそして投票した。
フィラデルフィア、ミネアポリス、デンバー、シカゴなど元々青い地域で最後に残っていた共和の赤いスポットは一掃。更に元々赤い共和党の地域でも民主党が躍進してるんだ。アトランタ、ダラス、ヒューストン、チャールストン、オクラホマシティー、ソルトレークシティー、オレンジカウンティ、フィニックス、これらは今までだったら民主党が手も付けないほど共和が席巻していた地域。
懐古連合に頼っていた、トランプのビジョンのしっぺ返しだ。
なるほどこの変動連合は2016にはそこまで大きくなかった。2018で爆発した、という事だ。
トランプ/共和の強さ
だからと言って、あぐらをかいていて言い訳ではない。共和の強さを甘く見ては行けないんだ。
The Cook Political ReportのDavid Wasserman。
2018の中間選挙以降民主党支持者の盛り上がりは後退している。それはもちろんそれ以前よりは熱いのだが、少し冷めている感じがある。加えて、中間選挙に投票に行かなかったトランプファンを考慮に入れないといけない。[Tiger.Shark.note:中間選挙は大統領選の間にやる主に下院議員の選挙です]
中高卒の白人有権者で、中間選挙で投票しなかった人は5千2百万人と言う。
元々政治に興味が無くて、他の選挙には行かないけどトランプだけは投票に行く、というトランプファンがもの凄い数。トランプのmobilizationの強さです --- Amy Walter
オバマ政権の元戦略マネージャー、David Plouffe。
トランプの強みは3点。激戦区での新規動員力、支持者の熱量、と金。[Tiger.Shark.note:先程も解説しましたが、州ごと選挙人全取り合戦なため、大統領選に関してはカリフォルニアや、ニューヨークなどぶっちぎりでいつでも民主が勝つ州はあんまり関係ないです。どっちつかずの、swing stateやbattle groundと呼ばれる州が重要なのです。議員選はもっと地域が狭いので、ちょっと違います。]
トランプ政権による経済的成果は思ったほどいい。失業率は低いし、新しい職も生まれている。そして支持率。あんなにめちゃくちゃやってる割には42-45%を行ったり来たり、安定してる。経済効果/支持率で見れば再選へのゴールデンコースを辿っている ---Dan Wagner
なるほど、中間選挙をすっ飛ばしたコアなトランプファンや、支持率のことなど頭の痛い案件は色々ありそうです。政権支持率は全国的には低いが、激戦区のミシガン、ペンシルバニア、ウィスコンシンなどで特に高いところがまたネックです。
どちらにしても、これらの要素は私達が変えられるものではありません。大事なのはこれらを受けて「何ができるか」と言う事だ。
どこで戦う?
選挙戦でフォーカスすべき3点は、何処に金をつぎ込むか、何を言うか、どう伝えるか。後2点はこれから話していくが、まず、「どこで戦うか」を見てみよう。限られた時間と金、選挙人制度で、戦う場所というのは限られてくる。
トランプが2016に一番少ない票差で勝った州が狙いめ。それは”Northarn Trio(北の3州)"と言われるミシガン州、ペンシルバニア州、ウィスコンシン州と”Sun Belt Trio(サンベルト3州)”と言われるノースカロライナ州、フロリダ州とアリゾナ州。
[Tiger.Shark.note:この6州はもう絶対覚えておくとこれからニュースがめっちゃ面白いです。
ウィスコンシン=チーズ
ミシガン=車産業
ペンシルバニア=ロッキー
なので、チーズ、車、ロッキー、と覚えましょう。はい、ご一緒に。チーズ、車、ロッキー。チーズ、車、ロッキー。
アリゾナ州=グランドキャニオン
ノースカロライナ=豚バーベキュー
フロリダ=オレンジ
ご一緒に。谷、豚、みかん。谷、豚、みかん。]
ミシガン、ペンシルバニアはまた民主にフリップする可能性が一番高い州ですね --- Claire Malone (政治サイト538のライター)
ここは他のスペシャリストも同意するところだ。
その後は?
何処も難しい。でも数字的には、ウィスコンシンとアリゾナ。
538ではこの2州をTipping Pointと呼んでいます ---Claire Malone
ウィスコンシンでは民主党が力を弱めている傾向。極めて地方色の強い州だから。アリゾナでは強めている傾向にある。都市化が進んでいるにも関わらず、いまだに共和が仕切っている州だ。
大きく戦わないといけない。北の3州を穫れたとしても選挙人数は272だ(270で勝利)。それを目指していては足りない。ウィスコンシンでも、アリゾナでも、ノースカロライナでも、フロリダでも戦わないといけない。戦い方も変える。北の3州ではpersuasion(obama-trump voterの奪還)を、サンベルト3州はturn out(新規有権者)を狙え。---David Plouffe
広く、戦う。あきらめない。有権者のデモグラフィーが変わっている事を認識して、今まで考えもしなかった地域でも戦う。そして地域によって戦い方を変える。
と言う事のようだ。
これからフィラデルフィア(ペンシルバニア州)、ミルウォーキー(ウィスコンシン州)、フェニックス(アリゾナ州)、マイアミ(フロリダ州)で、独自に行ったフォーカスグループの声を参考に、戦い方を見ていこうと思う。大統領選だけじゃない、議員選もだ。上院の過半数を民主が奪還するために、あと3席必要だ。
森からの脱出。
どうしてここまで来てしまったろう。右も左も分からない深い森に入ってしまったようだ。ここから出るにはどうしたらいい?インタビューからは何か明るい未来が伺える。決して簡単ではないけれど。
どちらにしろ民主がpopular voteを勝ち取るのだと思う。誰の票でそれを勝ち取るのかと言えば、ミレニアル、Generation Z、非白人、宗教観の緩やかな大卒白人、その中でも特に女性。この変動連合はこれからどんどん人口が増えていく。これから減る一方の懐古連合にだけ頼っている共和は長い目で見れば先はない。しぼんでいく懐古連合の中で得票拡大するしかないんだ。ただ、選挙人制度や、voter suppressionなどの大きな障害が変動連合に立ちはだかる。トランプは懐古連合の最後の一滴まで絞りきる。民主にそれができるか ---Ron Brownstein
アメリカはいつだって若く、その力で障害を乗り越えてきた。人種を、出生を、言語を超えて団結して乗り越えてきた。またできる。外敵じゃない。私たちの家族や子供達からAmerican Dreamを一部の汚れた集団にかっさらわれないようにする戦いだ。私たちは守り、戦う。私たちの力はこんなものじゃない。私たちにできない事なんてない。でもバラバラでは、一人だけではできない。団結して戦い、Americam Dreamにまた火を点そう ---Heather Mcghee