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政府支出は米国経済を救えるか?

ニューヨークタイムズポッドキャストThe Dailyの5/18版「Can Government Spending Save The Economy?」の和訳。

New York Timesの経済レポーターBen Casselmanが出演。

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5/14、失業者数が新たに300万人とのニュース。2ヶ月で3600万人が職を失っている。

5/15、小売業の売り上げが16%減とのニュース。過去最悪。

外食業は半分の売り上げ。アパレル産業は90%の売り上げ減。

製造業の生産は100年来の低値。先の恐慌よりも酷い値。

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FRB Federal Reserve Board(連邦準備制度理事会)の議長、ジェローム•パウエルのスピーチ。

「これは前代未聞の深く広い経済の落ち込み。貧困層など弱者を一番食いつぶす。年収40K(400万円程度)以下の家庭のうち40%が職を失った。

それに加えて長期に渡るダメージを米国経済にもたらす。長びく不況はまた長期のダメージを国の経済生産性に及ぼす」

景気というのはいつでももとに戻る。不況があったって、絶対に回復する、というのが常識だが、FRBの会長はそういう楽観を今回はしていない。

今、例えば政府の援助を受けている企業。1〜2ヶ月ならその後なんとか戻って来れる。しかし、この不況が長く続いてしまうと、そのビジネスが完全に失われてしまう可能性が出てくる。

で、それを絶対に避けないといけない。その為の政府の援助であり、今までの早急な$3 tri(300兆円)の公的扶助は正解である、と言う。

政府の援助は向こう岸に渡る為の橋のようなものだが、私達はまだ向こう岸についていない。だから、もっともっと援助しないといけない、と、FRBの会長が議会に向かってアドバイスをした。ここまでストレートに議会に対して言うって事はあまり見られるものではない。

そのFRB会長の言葉を議会がそっくり聞くとは思えないが、影響力は少なからずあるはず。

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今の所、過去に可決された連邦の支出は全て党派を超えた合意でなされていた。それは経済がシャットダウンしていたからで、誰も収入を見込めない、という事は誰もが認識する所だったから。

今、そろそろと各州が経済再開する段階で、これ以上の大量支出が必要かどうか、と言う所で民主/共和の意見が分かれてきている。

民主:今だってほとんど閉まってるんだから政府が補償するのは当たり前。

共和:もうビジネス再開してるんだから、ちょっとタンマ。それだけ支出するのが果たして良い事かどうか、ちょっと見てから判断したい。あまり施しすると(失業保険あげすぎちゃうと)、みんなが怠けて働かなくなるだろうし(*でたー。決まり文句。はいはい。)

結局は「民主=大きい政府」VS「共和=小さい政府」
のいつもの戦いになっている。

この何百兆円級の政府による公的扶助。これってどこから払ってんのかと言えば、国が国民に、外国に、国債やらなんやらで「借りてる」お金、と言う事になる。この場合、国民が銀行で、国にお金を貸してる状態となる。これは国はそのうち利子をつけて返さなければならないが、それは十年も先の話だったりする。

今年の財政赤字は$3.7 tri(370兆円)になると言われてる。

そしてこの財政赤字に関して
民主:政府の支出(公的扶助)は長い目で見た米国経済の発展の為の投資のようなものであるから、必要な時にはどんどん借りて公的資金投入したらいい。

共和:赤字あるのは良く無い。兎に角良く無い。赤字を返済する為に公的資金を減らすべき。

と言ういつものポリシーの違いの話にもなってる。

で、今回のコロナ禍救済の公的扶助に関して、ありとあらゆる経済学者は「今は兎に角国債切りまくって、財政赤字を増やしてでも公的扶助を続けるべき。と言っている。共和党お抱え経済学者でもだ。

CPRに例えられている。心臓マッサージ。時にはあばら骨を折ってでも心臓を強くマッサージしなければならない時がある。今の状況で言うならあばら骨が「財政赤字」であり、心臓は米国経済そのもの。心臓はいま止まっている。どうにかして動かさないといけない。今財政赤字にビビってる時ではないと。

それなのに、共和党は「アメリカ経済は自力で立ち上がらないといけない。」と言い張る。

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訳者の私見です。

2ヶ月経った今でも失業保険の申請が止まらない。そうですよね、少し経ってから打撃を受ける業界だってあるでしょう。政府援助はどしどし続けて欲しいと思います。多くの経済学者がそう言っているのならなおさらです。

しかしこの状況はなんだか、政治不安の続く中東やアフリカの各国への国連などの援助にも似てます。助け舟を出した所で、結局は自力で走って行けるようにしないと、意味が無い。そういった意味では共和党の主張にも一理ある、と思います。

しかしだからこそ、お金を振りまくだけではなく、企業が公的扶助を受けるときに、そのお金の行き先をモニター/制御して上層に吸い取られずしっかり国民まで届くような機関/法/システム、みたいなものが必要なのでは、とも思います。

大切なお金。国民を助ける為に使われる、国民が貸してあげてるお金。しっかりモニターしてリーマンショックの時みたいにはしないで欲しい。

関係ないけどパウエル氏の眼鏡が銀行の人!って感じで好きです。


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