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米国食品会社の巨大化

米国の大手食品会社の巨大化。政策がそれを促してきた歴史、それにより農業・酪農従事者や消費者が被るリスクの話をまとめたポッドキャストが良かったので抄訳しました。

ゲストは米国上院議員コーリ・ブッカー、The Omnivore's Dilemmaで有名な著者マイケル・ポーラン、Soul Fire Farmのリア・ペニマン。

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Making Ends Meat: Farmers Get Raw Deal


米国内の食肉業界の2/3はたったの6社に牛耳られている。こんな独占はどうやって起こったのか。

レーガン政権。食品業界のM&Aに関する規制緩和が大幅に行われた。それまでの反トラスト法は消費者と生産者両方を守るためのものであった(高すぎず、安すぎず)。レーガン政権下、Robert Bork教授のセオリー「消費者のみ守られていれば、市場独占とはならない」が採用され、価格高騰さえ防げばいくら吸収合併しても良い、と言う形に。

ブッカー議員:例えば豚肉生産業、過去数十年のM&Aにより90%の生産者が職を追われた。食肉だけでなく、農業全体に言えることで、その痛みは農家や酪農家の自殺率が一般の3倍であることにも現れている。4〜5世代以上続く農家で、農地を受け継いで、ルールに従って勤勉に働いている人たちがタイソンなど大手食品会社の下請けとならざるをえず、その契約内容は過酷で過去の(奴隷制2.0の)sharecropping(分益小作制)を彷彿とさせるもの。

農家が大手に片っ端から吸収されることで、地方の過疎化も進んでいる。ある農家は自分が高校生だった頃は何百人も生徒がいた学校が今は三十人しかいない。種屋、精肉屋など違う業種の小商が乱立していた所、それを一社で全てこなす大手が吸収してしまい、その地元の資本を根こそぎ持っていく。

大手同士で縄張りを決める。地域に一つしかないようにする。そうなると下請けの農家は「より高く買ってくれる所に行く」ことができなくなり、売値がどんどん下がっていく。(反トラスト法はそのためにあるんですけどね。。。)そして大手のやり方(CAFO=concentrated animal feeding operation)で、地方の土が汚染されていく。

農業に関して、大手が使える法のループホールは反トラスト法だけでなく、労働法や環境規制法にもある。

ブッカー議員:米国がこの工業化単作農業に走っていったのはトップダウン。政策がきっかけ。70年代、食品のインフレが起こっていたニクソン時代に「とにかく安価で大衆受けし、長持ちする食品を大量に作ること。」を目指した。その政治的慣性がレーガン政権の反トラスト規制緩和でタガが外れた。モンサントもその恩恵で巨大化。

米国は世界人口の5%。しかし世界の20%の農薬を使っている。土地を汚染し、川を汚染し続ける。ガンを誘発、国民を病ませている。南部にはロードアイランド州と同じ大きさの”dead-zone”がある。

このような農業のあり方が、消費者、従事者の健康を損ねている。LA、サウスセントラルの黒人の食育啓蒙活動家Ron Finleyは「ドライブスルーがドライブバイ(ギャング犯罪)よりずっと沢山の人を殺している」と言った。高度に加工された高カロリー、低栄養の食品が人々を殺している、と言う事。それも、政策。

政府が食品業界に支出する補助金のうち野菜・果物にいくのはたった2%。(!)

ポーラン氏:このような業界の構造は自由市場によって作られていない。30年代、FDRの頃から政策で操作されてきた。安くて高カロリーの大豆とコーン。それをとにかく大量に収穫するように補助金なども設定される。とにかくとにかく大量に。余ってもいいから大量に。と、ニクソン。なぜか。前述の通り70年代にインフレで食品の価格高騰が起こっており兎に角政権は食品の値段を下げる事を念頭においた。そして大衆に人気の肉が安価になり、農家は大豆とコーンの単作に走り、収入の4割を政府の補助金に頼るようになり、そのうちそれらは余り、人、家畜を超えて車にエチノールとして与えられるようになる。政策が、栄養のない空のカロリーをプッシュした結果がこれ。政府は今、空のカロリーでなく、国民の健康や環境保全を念頭におくべきだ。

議会にはもちろん大手食品会社のロビイストが入り込んでいるが、その前に、ブッカー議員のような「都会出身の」議員が農業関連の委員会の役職についていなかった、と言う事もある。

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ブッカー議員:大手精肉会社は給餌場にカバーをかけ、一般には公開していない。動物たちがどんな悲惨な状況かは想像つくだろう。昔ながらの酪農のやり方とは全く違う。動物の苦痛も一つだが人間にも脅威がある。ぎゅうぎゅう詰めの状態で動物を飼うため病気にならないように抗生物質を大量に使う。WHOや科学者によればこの状態が、抗生物質の効かない新種の病原菌の温床になる。

農薬の大量使用で、鳥やミツバチが減って農作物の交配ができなくなってくる。

そしてもう一度だけ強調したい。私たちの社会は言葉通り病んでいる。今70%の子供は肥満や糖尿病で軍隊入ることもできない。子供の1/4は糖尿病持か糖尿病予備軍。人口の1/2が糖尿病持ちか予備軍。2050までにtype3の糖尿病と呼ばれるアルツハイマーは3倍になる(これは知らなかった!食事と関係あるらしい。まじ?)。

子供が商店に入ればツインキーがりんごより安く売っている。それは政府が補助しているからそのような価格になる。

温暖化の20−25%は農業が原因。しかし土を大事に、持続可能な、昔ながらの農業に戻すことで、農業は大気中の炭素を吸収することもできる。

私が、農業委員会の仕事をしているのは、私が重要だと思う問題が全てここに交錯すると気づいたからです。国民の健康労働権利小商支援そして人種問題。100万人いたと言われる黒人の農家は数千人まで減っている。

過去10年間で黒人の子供の糖尿病は2倍になっている。このようなデータは全て加速傾向にあり、このままではメディケア、メディケイドは破綻する。国家支出の1/3、社会経済全体の1/5が医療に使われている。皆保険のあり方がよく議論になるが、そこじゃない。どうして私達はこんなに病んでいるんだ、と言う所に目を向けなければ。今米国がやっているのはhealthcareではない、disease managementだ。

この農業の構造を、なんと輸出している。南アフリカに米国大手食肉会社が進出できるように関税を下げる活動をしている議員もいる。米国内で地域の土地と住民を汚し尽くしたので海外に行こうと言うわけだ。中国は既に米国式の農業を採用している。

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ポーラン氏:体に悪い食生活を政府が推奨してきた形になっている。スーパーに行けば一番安いの食品は加工食品だ。私達は農家から直接食物を買うことは少ない。大手企業は自ら育てない/飼わない。土の近くにはリスクが多すぎるからだ。土から離れてコントロールする。農家をシステムに取り込んで。農家にそのリスクを押し付けて。

米国政府は大豆とコーンの大量過剰生産を奨励してきた。加工食品の基本が大豆とコーンだから。食肉生産のための基本が大豆とコーンだから。そしてそのような健康に悪い食品をそのようにちゃんと表示しない。「健康によい」と勝手に謳った表示をきちんと取り締まらない。南米などではキャンディーに「余り食べるな」とドクロマークがついていたりする。

鶏肉会社最大手タイソンはパンデミック中に生産ラインを止めない為に、大統領を説得した。公衆衛生と従業員の健康を一切無視してゴリ開けた。一企業が余りに大きな力を持っている、いい例。

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ペニマン氏:消費者がちゃんと知っていれば賢い食生活を送れる、と言うのもそれでは足りなくて、やはりアクセスにある。近くの店に、安価で、売っていなければ、健康に良い食生活にはならない。子供たちの教育も大事で、加工食品しか食べないような家庭の子供も、農場を見学し、そこで取れた野菜で調理をして食べると随分変わる。子供の情操に「緑のスペース」はとても重要だ、と言う研究もある。

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これからの議会の動きについて。

ブッカー議員:反トラスト法を再構築してCAFOを2040までにある程度解体する。大手農業企業に環境税をかける。$100Bをかけて奴隷制のような契約で大手企業の工業化農業システムの一部になってしまっている個々の農家を独立させ、持続可能で利益の高い昔ながらの複合農業の支援をする(EQIPプログラム)。グローバル化している大手食品会社が外国産の農作物に「国内産」とのラベルを貼る法的ループホールを閉じる。

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ポーラン氏:このようなプログラムが米国民の支持を得る時に、民主/共和の政治ポジションは余り関係ないはず。農家=田舎=共和党と決まってしまっているが、オバマはアイオワ州でも勝っていた。選挙中彼はこの農業大手巨大化の問題に言及していたからだ。当選後彼はその約束を果たせなかった。それが中西部が民主党から離れていった一因とも言われている。民主党はそのことに気づくべき。元々農家の人々は経済的見地から投票する。田舎VS都会の分断はトランプに鬱憤を分断に横流しにされてしまった結果に過ぎない。

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ペニマン氏:農家はいつだって経済的に理由があればスタイルを変えてきた。「こっちの方が儲かるよ」「こっちの方が地球に優しいよ」と言う政策に反対する農家はいないだろう。

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ブッカー議員:工業化単作農業の大手企業のシステムで農家は壊滅的な打撃を受けた。パンデミックで今まであった社会の不正義が浮き彫りになった。パンデミックで食品業界は大打撃を受けたが、一人勝ちしてるのは土から離れて構造の上層で操っている大手企業だけ。それに立ち向かう為に今までは考えられなかったような共闘が始まっている。農家、酪農家が動物愛護団体や、環境保護団体、労働者権利団体などの活動家たちと手を組むとは誰が想像できただろうか?私が話し合う活動家たちの多様性ーー田舎も、都会も、党派も超えた多様性が私に希望を与えてくれる。



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