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Web3業界の実態をアジア主要都市別に見てみよう

Web3をインド、韓国、オーストラリアが牽引する中、各国で異なる発展パターンが浮かび上がる。IT人材と金融インフラが整った主要都市への集積が進む一方、インドでは全土に広がる工科大学ネットワークを活かした分散型の成長を実現している。東南アジアでも、ホーチミン、ジャカルタ、クアラルンプールが新興のWeb3ハブとして存在感を増している。本レポートでは、都市レベルの分析を通じて各地域の特性と成長要因を解説する。


Tiger Research(タイガーリサーチ)は、Web3に特化したアジア最大級のリサーチファームです。Web3企業の経営者から個人投資家まで必読の市場分析レポートを無料でお届けします。


30秒でわかる!本レポートの要点👇

  • アジアのWeb3企業数トップ3は、インド、韓国、オーストラリアである。インドは全土に均等に分布する一方、他国は首都圏への一極集中が顕著だ

  • 人材確保の容易さが重要な要因となり、バンガロール、ソウル、東京など、各国のIT・金融インフラが整った主要都市にWeb3企業が集積。

  • 東南アジアではホーチミン、ジャカルタ、クアラルンプールが新興のWeb3ハブとして台頭。地理的優位性を活かした成長に期待


📋 本レポートについて

Web3業界の分析では一般的に国単位での調査が主流だが、同じ国内でも都市ごとに産業が集積しており、インフラ整備、ビジネス環境は大きく異なる。そこで本レポートでは、都市レベルでの分析を通じて、より実践的なビジネスや投資判断に役立つ知見を提供する。(なお、分析にはスタートアップデータベースCrunchbaseの公開データを使用している。)

アジア主要国におけるWeb3企業の数
出典:Crunchbase、タイガーリサーチ

アジア8カ国におけるWeb3企業の分布を見ると、インドが最多で、韓国、オーストラリアと続く。多くの国では企業が特定の都市に集中する現象が見られるが、インドは例外的に全土に均等な分布を示している。

🇮🇳 バンガロール:インドIT産業の心臓部

出典:Crunchbase、タイガーリサーチ

「インドのシリコンバレー」として知られるバンガロールは、インドのWeb3産業を牽引しており、インドのWeb3企業の約20%が集中している。Kratos Studio、Arcana Network、Bitbns、CropBytesといったグローバル展開するWeb3プロジェクトもここを拠点としており、2023年にはインド最大のブロックチェーンイベント「India Blockchain Week(IBW) 2023」が開催されるなど、その存在感は年々高まっている。

出典:IIT Colleges in India、Maps of India

他の国と異なり、インドの特徴は、ニューデリーやムンバイなど他の主要都市にもWeb3企業が満遍なく分布している点にある。この背景には、広大な国土と各都市の独自の経済圏の存在に加え、インド工科大学(IIT)という最高峰の工科大学が全国各地に設置されていることが挙げられる。これにより、Web3産業に不可欠なIT人材が特定地域に集中することを防ぐことができる。また、Polygon(ポリゴン)に代表されるグローバル級プロジェクトの成功が、インド全土でのWeb3参入機運を高めている。

🇰🇷 ソウル:一極集中が進む韓国のメガシティ

出典:Crunchbase、タイガーリサーチ

韓国のWeb3企業は、ソウルへの一極集中が顕著だ。これは人口と各種インフラの集中度の高さに起因している。ソウルには韓国の総人口の約18%が居住しており、IT開発人材も集中している。韓国のITブートキャンプ「Programmers」の2023年の調査によれば、韓国の開発者の70.7%がソウルで働いているという。

特に「韓国のシリコンバレー」と呼ばれる江南のテヘラン路には、Dunamu、Bithumb、Hashedなどグローバル規模のWeb3企業が集積している。

また、ソウルの衛星都市である城南市の板橋(パンギョ)地区も、韓国第二のWeb3企業集積地として台頭している。パンギョには韓国の主要テック企業が多く立地しており、Nexon、Netmarble、WeMadeといった韓国を代表するWeb3ゲーム企業も拠点を構えている。ソウルとの地理的近接性を活かし、今後はソウルと並ぶ韓国のWeb3市場の中心地となる可能性を秘めている。

🇦🇺 シドニーとメルボルン:オーストラリアの双璧

出典:Crunchbase、タイガーリサーチ

オーストラリアのWeb3企業は、シドニー、メルボルン、ブリスベンという三大都市に集中している。この3都市はオーストラリアのGDPの半分以上を占め、人口増加も続く重要市場だ。

特にシドニーとメルボルンには、オーストラリアのWeb3企業の約57%が集中している。これは政府がこの地域をフィンテック産業の中心地として育成しようとする方針を反映している。

両都市ではブロックチェーン技術を活用した研究開発が活発で、IT人材も豊富なことから、Web3企業の成長に適した環境が整っている。

出典:Linkedin Talent Insights、Global Australia

都市別の主要企業を見ると、シドニーにはWeb3ゲーム企業のImmutableやSunflower Land、オーストラリア最大の暗号資産取引所Independent Reserveが、メルボルンにはオーストラリア初の暗号資産取引所CoinJarとCoinTree、ブリスベンには取引所Swyftxが拠点を構えている。

🇯🇵 東京:日本のWeb3企業の7割が集中

出典:Crunchbase、タイガーリサーチ

日本のWeb3市場は東京一極集中が際立っている。Web3企業の約77%が東京に集中しており、特に六本木、渋谷、新宿エリアにクラスター化が見られる。SBI VC Trade、コインチェック、バイナンスジャパンなど、主要なWeb3企業もこれらのエリアに拠点を置いている。

当初、日本では東京、大阪、名古屋、福岡という四大都市圏でバランスの取れた分布が予想されていたが、実際には韓国同様、一極集中が進んでいる。

これは東京が金融インフラと人材の双方で圧倒的な優位性を持つためだ。東京圏のGDPは神奈川や大阪などの他地域の4倍以上を誇り、人口集中も著しい。

🇻🇳 ホーチミンとハノイ:ベトナムの二大拠点

出典:Crunchbase、タイガーリサーチ

ベトナムのWeb3企業は、北部のハノイと南部のホーチミンを中心に展開している。ハノイにはKyber NetworkやIcetea Labsが、ホーチミンにはAxie Infinity、Coin98、Ancient8といったグローバル企業が拠点を構えている。

出典:Vietnam IT Market Report 2023, TopDev

両市とも人口密度が高く経済発展も著しいが、Web3企業の活動はホーチミンがやや優位に立っている。これは両市の環境特性の違いによる。ハノイは政府機関が集中する首都であり、比較的保守的な環境にある。一方、ホーチミンはベトナムの経済中心地として、多国籍企業の進出も活発で、ブロックチェーン技術の開発も盛んである。

ベトナムのIT人材採用プラットフォームTopDevによると、ベトナムの開発者の56.7%がホーチミンに集中しており、この傾向はWeb3産業でも同様と見られる。

🇮🇩 ジャカルタ:インドネシアの中心都市

出典:Crunchbase、タイガーリサーチ

インドネシアは広大な島嶼(とうしょ)国家だが、Web3企業の活動はジャカルタに集中している。これはジャカルタがある島のジャワ島が、人口の半分以上、消費市場の4分の3以上を占めているためだ。また、島々の連結性が限られているため、首都ジャカルタを中心に市場が急速に発展している。

ジャカルタはインドネシアの金融中心地であり、インドネシア証券取引所や国営の暗号資産取引所などの金融インフラが整っている。Reku、Indodax、NOBI、Avarik Sagaといった主要Web3企業も同地域に集中しており、今後もWeb3企業の中心地として発展が期待される。

🇲🇾 クアラルンプール:東南アジアのハブ都市

出典:Crunchbase、タイガーリサーチ

マレーシアのWeb3産業は、首都クアラルンプールとスランゴールなどの首都圏に集中している。クアラルンプールはグローバルなスタートアップ環境ランキングで11位に位置し、起業に適した環境を備えている。また、東南アジアの航空ハブとしての立地を活かし、ホーチミン、バンコク、ジャカルタといった主要都市まで2時間圏内という地理的優位性も持つ。

さらに、ブロックチェーン分析企業のEtherscanやCoingeckoなど、グローバルに成功を収めたプロジェクトの発祥地としても知られ、Web3市場での更なる発展が期待されている。

🇹🇭 バンコク:タイの産業中枢

出典:Crunchbase、タイガーリサーチ

タイでは観光産業を除くほぼすべての産業が首都バンコクに集中しており、Web3産業も例外ではない。タイのWeb3企業の約80%がバンコクを拠点としている。Gulf Energy、サイアム商業銀行、カシコン銀行といった大手企業や暗号資産ライセンス保有企業もすべてバンコクに拠点を置く。

デジタルノマドの聖地として知られるチェンマイでもWeb3市場の活性化が期待されたが、実際の企業活動は限定的だ。これは、チェンマイ自体の人口規模が小さく、観光中心の産業構造であること、また経済中心地バンコクから地理的に離れているためと考えられる。


※本レポートは、タイガーリサーチがSubstack上で発信する英語の記事(2024年1月12日公開)を翻訳し、一部修正したものです。
※最新の英語のレポートについては、以下リンクよりご確認ください。


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