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ビットコインは企業価値を上げるのか?〜世界的な導入競争〜
2024年1月、米国証券取引委員会(SEC)によるビットコイン現物ETFの承認を受け、金融資産としてのビットコインの購入の動きは欧米のみならずアジアへと広がりを見せている。
本レポートでは、企業によるビットコインへの投資拡大の要因とその戦略について分析する。
Tiger Research(タイガーリサーチ)は、Web3に特化したアジア最大級のリサーチファームです。Web3企業の経営者から個人投資家まで必読の市場分析レポートを無料でお届けします。
30秒でわかる!本レポートの要点👇
米国SECのビットコイン現物ETF承認を契機に、企業によるビットコイン投資が拡大
投資メリット:①高いリターン期待による資産分散効果、②24時間取引可能な運用効率、③株価上昇などの企業価値向上
中国のMeituや日本のメタプラネットなどアジアの企業も次々に参入
課題:企業によるビットコイン価格変動リスクへの対応に加えて、各国当局による暗号資産の保有や会計処理に関する制度整備が必要
企業によるビットコイン投資の活発化 📈
世界的に、ビットコインの価値が認知されるにつれ、その関心が高まっている。国家レベルでも、中米の小国エルサルバドルによる積極的な購入や、米国でのトランプ次期大統領によるビットコイン準備金計画、ポーランドや南米スリナムでの戦略的資産化の動きなどが見られる。
しかし、ほとんどの国では公約段階に留まっており、実現までには時間を要している。現在米国は犯罪収益の没収分を保有するのみで、各国の中央銀行も価格変動性を理由に、ビットコインより金を重視している状況だ。
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出典:Bitcointreasuries、タイガーリサーチ
一方で、企業の参入は加速している。MicroStrategy(マイクロストラテジー)、Semler Scientific(セムラー・サイエンティフィック)、Tesla(テスラ)などが果敢な投資を実施しており、政府の慎重な姿勢とは対照的な展開を見せている。
企業がビットコインに注目する3つの理由 🎯
1)金融資産の分散化 💰
従来、企業の金融資産は現金や国債など安定性が重視されてきたが、低利回りによるインフレリスク(資産価値の実質的な低下)が存在する。
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出典:MicroStrategy創業者Michael SaylorのX
過去5年間、ビットコインはS&P500や金、債券などの伝統的資産、さらにはハイイールド債を上回るパフォーマンスを示している。これにより、単なる代替資産としてだけでなく、企業の財務戦略における重要な要素として位置付けられるようになりつつある。
2)金融資産の効率性 ⚡
24時間365日取引可能なビットコインは、伝統的金融機関(Web3業界では、しばしばTraditional Financeを略してTradFiと称する)の営業時間や煩雑な手続きに縛られず、柔軟な資産運用と迅速な現金化が可能だ。
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出典:Kaiko
Web3業界でのリサーチを手掛けるKaikoによると、ビットコインの市場の厚み(デプス)2%(市場価格の±2%以内の売買注文の合計額)は着実に増加してきており、その過去1年間の日次平均は約400万ドル(約6億円)となっている。ビットコインの市場環境が安定してきている証だ。
3)企業価値の向上 📊
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出典:タイガーリサーチ
ビットコインの保有は、企業価値や株価にもプラスの影響を与える。マイクロストラテジーや東京証券取引所上場のメタプラネット(ティッカー:3350)の事例では、ビットコインの購入発表直後に株価が大幅上昇した。
アジア企業のビットコイン投資拡大 🌏
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出典:Bitcointreasuries、タイガーリサーチ
Nexon(ネクソン)や中国のMeitu、日本のメタプラネット、タイのBrooker Groupなど、アジア企業もビットコインを戦略的金融資産として採用し始めている。
特にメタプラネットは過去6ヶ月で1,142ビットコインを取得するなど、積極的な動きを見せている。
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出典:Bitcointreasuries、タイガーリサーチ
しかしながら、ビットコイン投資を行うアジアの企業はまだまだ限られており、その投資総額は全ビットコイン供給量の1%未満に留まる。
韓国では企業の暗号資産取引所での口座開設が禁止されており、海外ビットコインETFへの投資や取引所関連ファンドの立ち上げにも課題がある。
規制上の課題はあるものの、海外子会社を通じた投資や、日本においては規制緩和の動きがみられ、アジア企業のビットコイン投資拡大への期待は高まっている。
今後の展望 🔮
ビットコインへの投資は企業の財務戦略として広まりつつあるが、国際政治などの外部要因による価格変動は依然として懸念材料だ。
2022年の市場暴落は、ビットコイン保有企業にとってのリスクを浮き彫りにした。企業は安全資産とのバランスを取り、慎重なアプローチを取る必要がある。
また、企業がビットコインでポートフォリオを組みやすくする、制度の明確な枠組みが不可欠である。暗号資産の保有や会計処理に関する明確なガイドラインの不足は混乱を招いている。これらの不確実性が解消されれば、企業のポートフォリオの分散化において、ビットコインがより大きな役割を果たす可能性がある。
※本レポートは、タイガーリサーチがSubstack上で発信する英語の記事(2024年11月28日公開)を翻訳し、一部編集したものです。
※最新の英語のレポートについては、以下リンクよりご確認ください。
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