ネクソンのWeb3ゲーム新時代:メイプルストーリー・ユニバース🎮
世界1億8,000万人以上のユーザーを持つメイプルストーリーのIP(知的財産)を活用した「メイプルストーリー・ユニバース」が、ブロックチェーンゲームとして注目を集めている。本レポートでは、その展望と課題について詳しく見ていく。
※英語の元記事が2024年2月1日リリースのため、本レポート内の一部表現が最新の情報を反映していない可能性があります。
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30秒でわかる!本レポートの要点👇
ネクソンが展開するWeb3ゲーム「メイプルストーリー・ユニバース」は、世界1億8,000万人のユーザーを持つ人気IP「メイプルストーリー」をベースに、ブロックチェーン技術を活用した新たなゲームエコシステムの構築を目指している
本プロジェクトは、NFTを活用したMMORPG「メイプルストーリーN」を中心に、モバイル版やサンドボックス型プラットフォーム、SDK(アプリ開発キット)など、4つの製品で構成されている
ユーザー主導のコンテンツ制作を促進するC2E(Create to Earn)システムや、他の人気ゲームとの連携による相乗効果が期待される一方、韓国・中国での規制対応や収益モデルの確立、技術的課題など、克服すべき課題も多い
直近、確率型アイテムの不正操作問題で揺らいだネクソンの信頼回復の機会として、このWeb3ゲーム戦略の成否に注目が集まっている
メイプルストーリー・ユニバース始動🚀
2024年に入り、ネクソンのWeb3ゲーム市場への参入が本格化している。同社は2022年、主力IPであるメイプルストーリーを活用したブロックチェーンゲームの開発を発表し、業界に大きな反響を呼んだ。
グローバルなゲーム企業であり、ゲーム産業のイノベーションを牽引してきたネクソンのWeb3業界への参入は重要な意味を持つ。特に、代表的なゲームIPの大胆な活用と、Nexon Korea(ネクソンコリア)の姜大賢(カン・デヒョン)CEOによる主導的な取り組みが注目を集めている。
💼 開発体制の強化
最近、ネクソンはブロックチェーンプロジェクト「メイプルストーリー・ユニバース」の開発を加速させている。当初はネクソンコリアのブロックチェーン事業部が主導していたが、Nexon Universe(旧Nexon Block)チームに専門人材や資源を集中させることで、開発のスピードを上げている。
💰 積極的な投資
ネクソンコリアは約1,250億ウォン(約137.5億円)の増資への参加や、約245億ウォン(約27億円)相当のゲーム開発リソースの譲渡など、ネクソンユニバースを積極的に支援している。
また、ブロックチェーンプラットフォーム・プランナーや、トークノミクス・デザイナー、NFTゲーム開発者など、Web3領域の専門人材を外部から多数採用し、事業基盤を強化している。
メイプルストーリーの全貌
🌐 エコシステムについて
ネクソンの「メイプルストーリー・ユニバース」は、単なるゲームサービスにとどまらない。NFT技術を中心としたブロックチェーンベースのゲームエコシステムの構築を目指している。主に4つのプロダクトで構成され、以下のような特徴を持つ。
🎮 主要プロダクトの特徴
MapleStory N(メイプルストーリーN):元祖メイプルストーリーのIPをベースに、ブロックチェーン技術を組み込んだMMORPG
MapleStory N Mobile(メイプルストーリーNモバイル):メイプルストーリーNのモバイル版
MapleStory N World(メイプルストーリーNワールド):メイプルストーリーのIPリソースを活用したサンドボックス型プラットフォーム
MapleStory N SDK(メイプルストーリーN SDK):NFTベースのメイプルストーリー派生アプリ開発システム
💎 特徴的な機能
メイプルストーリーNでは、ゲームプレイを通じてNFTやトークンを取得可能である。「ダイナミック・リワードシステム」により、アイテムの最大数量や取得サイクルが事前に定義される。NFT化されたアイテムはユーザー間で自由に取引・移転が可能で、Web3ゲームの重要な要素であるユーザー中心の市場経済システムの形成に重要な役割を果たすと期待されている。
🛠️ クリエイター支援
メイプルストーリーNワールドとメイプルストーリーN SDKは、コミュニティ中心のクリエイティブ活動をサポートする。クリエイターは、メイプルストーリーNで取得したNFTを活用して、ユニークな派生コンテンツを作成可能だ。
さらに、SDKを通じて、NFT保持者向けのグッズ制作ファンディングアプリや、メイプルストーリー・ユニバース全体に及ぶグローバルクエストアプリなど、さまざまなサービス開発が可能となる。
💰収益共有システム
公開されている情報によると、クリエイターはコンテンツやアプリの人気度に応じて収益を得ることができる。また、NFTベースのアイテム生成能力に差異を設けることで、エコシステムへの積極的な参加を促す仕組みも予定されている。
🔍なぜWeb3なのか
ネクソンはメイプルストーリー・ユニバースを基盤に、ブロックチェーンを活用した幅広いエコシステムの構築に力を入れている。伝統的なゲーム業界では珍しい分散型要素の実験に、多額の資本と人材を投資している背景には、以下の戦略的意図が見える。
① 長期IPの持続可能性強化
メイプルストーリーは20年以上のサービス運営で数百回のアップデートを重ねてきた一方、コンテンツの消費スピードと制作スピードの差が拡大。ユーザーに継続して使ってもらうためのコンテンツ制作が限界に達しつつある。
② C2E(Create to Earn)エコシステムの確立
①の課題を解決するため、報酬を通じてユーザー自身によるコンテンツ制作を促進するC2Eベースのエコシステムへの転換を決断した。ブロックチェーン技術により、ゲームの品質と体験を維持しながら、ユーザーフレンドリーな収益モデルの構築を目指す。
③ IPの活用範囲拡大
メイプルストーリーNワールドとSDKを通じて、MMORPGというジャンルを超えた多様なファン層の獲得を狙う。
これらのWeb3活用戦略は、長期運営のIPの課題解決と新たな成長機会の創出を同時に実現する試みといえる。
📈 なぜメイプルストーリー・ユニバースが注目を集めるのか
他のWeb3ゲームが苦戦する中、メイプルストーリー・ユニバースが注目を集めている主な理由は以下の3点だ。
① 強力なIPの存在
世界1億8,000万人以上のユーザーを持つメイプルストーリーは、強固なユーザー基盤を持つ。特に、コアユーザー層である韓国のゲーマーは、以下の特徴を持つ。
高い購買力と強いロイヤリティを持つ20〜30代が中心
メイプルストーリーで初めてオンラインゲームを体験した世代で、懐かしい思い出として愛着が強い(ゲームOSTのオーケストラ公演チケットは3分で完売)
② 独自のC2Eエコシステム
従来のWeb3ゲームとは異なるアプローチで市場に新風を吹き込んでいる。
トークノミクス主導ではなく、コミュニティ活動を重視
トークンベースの報酬システムを採用
メイプルストーリーNワールドとメイプルストーリーN SDKを通じてユーザーの創造性を支援
クリエイターにNFTベースのアイテム作成権限を付与
このアプローチは、eコマース業界の急成長を支えた「オープンコマース」に類似しており、報酬を介した競争によってゲームエコシステム内の多様性と創造性を促進すると期待されている。
③ 他のIPとの相乗効果
ネクソンの他の主要IPゲームとの相互運用性により、新しいゲーム体験が期待されている。
世界累計8.5億人のユーザーを誇る「Dungeon&Fighter(ダンジョン&ファイター)」
3.8億人のユーザーを持つ「Kartrider(カートライダー)」
これらの人気ゲームとの統合により、より豊かなゲーム体験を提供するエコシステムの構築が期待されている。
メイプルストーリー・ユニバースが直面する課題
期待が高まる一方で、以下のような課題もある。
① 主要マーケットでのサービス提供の困難さ
最大の課題の一つとして、メイプルストーリーの主要市場である韓国と中国でサービスを提供することが難しいことが挙げられる。例えば、韓国では規制により、ブロックチェーンゲームは現在許可されていない。
これらの地域は、ネクソン本体の総収益の80%以上を占めており、メイプルストーリー・ユニバースのユーザー基盤が限定的になることが懸念されている。
しかし、ネクソンはこの問題を認識しており、当初からグローバル市場を視野に入れているため、今後の戦略、動きを見ていく必要があるだろう。
② 収益モデルの不確実性
また、従来のアイテム販売(課金モデル)に代わる収益モデルとして、手数料モデルが十分な収益を上げられるかどうかも不透明である。
メイプルストーリーのIPの持続可能性を確保することだけではなく、ゲームを収益化することも同様に重要である。手数料モデルは、ユーザーフレンドリーでゲームの妨げにならないという利点があるが、それが十分な収益を生み出すかどうかは不透明だ。
例えば、メイプルストーリーのニックネーム取引所「新ネームオークション」では、1ヶ月の取引高が20億ウォン(約2.2億円)を記録しており、手数料30%の前提で6億ウォン(約6,600万円)の収益を上げていると推定される。
一方、メイプルストーリーの有料アイテム「確率キューブ」は、2020年には月平均約170億ウォン(約18.7億円)の収益を上げていると推定される。
このような収益モデルの違いは、将来の収益に大きな差異をもたらす可能性がある。
③ 技術的な課題
ブロックチェーンベースのゲームには技術的なハードルがある。ブロックチェーンのインフラは大きく進歩しているものの、0.1秒以下であってもレイテンシ(遅延)はゲームプレイに悪影響を与える。
また、Web3に精通していない一般ユーザーが不便を被る可能性も考慮すべきだろう。
ゲームへの没入感や品質を向上させるためには、これらの技術的要件について深く考え、対応する必要があると考えられる。
🎯 まとめ
メイプルストーリー・ユニバースは、現在多くの課題に直面している。
安定したゲーム環境の実現
トークノミクス設計プロセス上の課題
既存のメイプルストーリーとユーザーの取り合いになってしまうことへの懸念
Polygon(ポリゴン)メインネットとの連携再検討
これらの懸念はあるものの、ネクソンのWeb3ゲーム市場への参入自体は重要な意味を持つ。最近、韓国公正取引委員会から確率型アイテムの不正操作に対する制裁金を科されるなど、メイプルストーリーに対するネガティブなイメージが広がる中、ブロックチェーン技術の採用による透明性の確保は、信頼回復への重要な転換点となる可能性がある。
メイプルストーリーがゲーム運営の信頼性を高め、コミュニティ中心のエコシステムを基盤とした持続可能性を強化していけるかが注目だ。
※本レポートは、タイガーリサーチがSubstack上で発信する英語の記事(2024年2月1日公開)を翻訳し、一部編集したものです。
※最新の英語のレポートについては、以下リンクよりご確認ください。
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