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韓国のWeb3業界の求人トレンド🇰🇷
韓国のWeb3業界における採用動向をローカルの求人サイトを通じて分析してみると、シンガポールや香港市場に負けないほどの活発な求人数が確認された。具体的にどんな企業が採用を行なっているのか見ていこう。
※英語の元記事が2024年5月7日リリースのため、本レポート内の一部表現が最新の情報を反映していない可能性があります
Tiger Research(タイガーリサーチ)は、Web3に特化したアジア最大級のリサーチファームです。Web3企業の経営者から個人投資家まで必読の市場分析レポートを無料でお届けします。
30秒でわかる!本レポートの要点👇
韓国では、直近3ヶ月間で337件のWeb3関連の求人が見られた
暗号資産取引所が最も活発に採用を進めており、特にUpbit(アップビット)の運営会社であるDunamu(ドゥナム)の従業員数は2021年と比べて4倍に
Web3ゲームやセキュリティトークン(ST)関連企業も積極採用中
LGグループやHYBEなど大手企業のWeb3業界への参入も増えている
はじめに
企業の求人数は、企業の戦略に基づくものと特定の業界における需要を表す指標があり、将来の市場を予測するために使われることがある。求人数を分析することは、Web3業界のような新興市場を理解する上でも重要だ。
タイガーリサーチは、2023 年以降継続的にアジアの Web3 関連の求人動向を分析してきた。2024年11月27日公開のレポートでは、グローバルでのWeb3求人動向を分析したが、今回は韓国市場に焦点を当てて見ていく。
韓国のローカル求人サイトにおける直近 3 か月間(※英語の元記事は2024年5月7日リリース、以下同様)のWeb3関連の求人情報を分析した。分析に利用したデータの多くは、Job Korea や Wanted などのローカル求人サイトと、企業の採用サイトで公開されているデータとなっている。
💼 アジアトップクラスの採用市場:韓国🇰🇷
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出典:Web3Jobs、タイガーリサーチ
上記のデータは、Web3Jobsというグローバルな求人サイトで入手可能な、直近1年間のアジアにおける Web3 人材の採用状況を示している。データによると、アジアで Web3求人が最も多い地域はシンガポール、香港、インドとなっており、韓国は求人が非常に少なく見える。
しかしながら、直近3か月間の韓国のローカル求人サイトでの Web3求人を分析したところ、合計337件の求人が見つかった。この数はシンガポールや香港に次いで数が多く、韓国市場においてWeb3人材獲得競争が活発であることを示している。
なお、韓国での求人のほとんどは国内企業向けで、海外を拠点とするプロジェクトの採用は限られている。実際、タイガーリサーチが見つけた求人のうち、海外を拠点とするWeb3プロジェクトは全体のわずか2%だった。これは、多国籍企業が強い存在感を示しているシンガポールや香港とは対照的である。
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しかしながら最近は、Solana(ソラナ)、Avalanche(アバランチ)、Oasys(オアシス)、Celo(セロ)などのさまざまなブロックチェーンプロジェクトが韓国市場に興味を示している。韓国での求人は、今後も増加する可能性がありそうだ。
最も採用が活発な韓国の暗号資産取引所📈
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出典:Datawrapper
韓国で最も採用が活発な企業は、「中央集権型取引所(CEX)」である。2024年11月27日に公開したレポートでは、BinanceやOKXなどのグローバル暗号資産取引所が最も積極的に採用活動を行っていたことがわかったが、韓国でも同様の傾向が見られた。最も活発な求人は、Upbit、Bithumb(ビッサム)、Coinone(コインワン)などの韓国の暗号資産取引所に集中している。
韓国の暗号資産取引所の中では、韓国ウォン(KRW)取引を提供する5大取引所が最も積極的に採用活動を行っている。特に、Upbitを運営するDunamuの従業員数は600人で、2021年から4倍に増加した。Bithumb、Coinoneも活発だ。
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出典:Datawrapper
興味深いのは、既存の取引所サービスに加えて、ブロックチェーン事業を強化するためにウォレットやサービスの開発者を採用している点だ。これは、暗号資産の取引だけに頼らず、様々な分野に事業を拡大する意欲の表れだ。
一方、KRWを取り扱う取引所以外の取引所からの採用は少ない。韓国のユーザーの大多数は主にそれらの取引所を利用しているため、KRWを取り扱わない取引所の収益性が低下し、従業員の採用が難しくなっている。
例えば、Cashierest(キャッシャーレスト)などの取引所は事業悪化によりサービスを停止し、法定通貨を取り扱わない取引所が加入している仮想資産(※韓国では、暗号資産ではなくこのように称されることが多い、Virtual Assetの訳)取引所協会(VXA)でさえ、会員の減少により解散の危機に瀕している。それでも、一部の取引所は法定通貨を取り扱う取引所への移行に向けて積極的に採用を行っている。
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出典:Datawrapper
次に採用が活発なのはWeb3ゲーム(ブロックチェーンゲーム)の領域だ。韓国はゲーム市場が発達しており、大手ゲーム会社と中小規模のゲームスタジオの両方がこの分野で活躍している。特に、ネクソン、ウィーメイド、クラフトンは積極的な姿勢を見せており、採用活動も最も活発だ。
今年は、ネクソンの「メイプルストーリー・ユニバース」やクラフトンの「オーバーデア」などのWeb3ゲームが市場に投入される予定であり、その結果に要注目だ。
最後に、セキュリティトークン(ST)関連企業も採用活動を行っている。これは、2023年1月に韓国の金融サービス委員会(FSC)によるトークン化証券ガイドラインが発表されたことを受けて、ST市場への期待が高まったためである。それ以降、関連するインフラ、ソリューション、コンサルティングを提供する企業は求人を拡大している。しかしながら、まだ明確な法制度は確立しておらず、簡単な道ではない。
その他のWeb3関連の求人動向
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直近3か月間の韓国のWeb3業界で最も注目された求人の1つは、LGエレクトロニクスのブロックチェーン事業だ。韓国で4番目に大きなコングロマリットであるLGグループの参入は、業界に新しいエネルギーをもたらす可能性がある。LGエレクトロニクスなど、LGグループの重要な役割を果たす関連会社の参加は特に注目に値する。さらに、LGグループの子会社であるLG U+とLG CNSもWeb3事業に参入しており、将来的にグループ内での相乗効果をもたらす可能性がある。
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2024年11月25日のレポートでも見たように、韓国のWeb3エンターテイメント事業も将来性が見込める。韓国にはK-POPカルチャーを中心とした活発なエンターテイメント産業があり、Web3テクノロジーとエンターテイメント産業を組み合わせるさまざまな実験が行われている。
分散型ガバナンスを中心にアイドル業界のビジネスモデルを刷新しているModhaus(モードハウス)は、積極的に採用を行っている。韓国の4大エンターテイメント企業の1つであるHYBEのブロックチェーン子会社、Binary(バイナリ)も採用中だ。Binaryは今年の第2四半期にクリエイター中心のプラットフォームを立ち上げる予定であり、同社がエンターテインメント業界をどのように変革していくのか興味深い。
まとめ
様々なデータから見てとれるように、韓国では相当数の求人が出ており、主に暗号資産取引所、Web3ゲーム、ST関連企業による求人が中心であった。
雇用教育プラットフォームCatchが発表したデータによれば、前回の暗号資産ブームと同程度まで採用が増加していることは注目に値する。
しかし、求人市場全体と比較すると、2024年2月末時点で、韓国内の全産業で約12万件の求人がある一方、Web3求人は約0.2%に過ぎず、Web3市場自体はまだまだマイノリティである。将来、Web3市場がより成熟していくにつれて、市場に引き寄せられる人材は増えていくだろう。
※本レポートは、タイガーリサーチがSubstack上で発信する英語の記事(2024年5月7日公開)を翻訳し、一部編集したものです。
※最新の英語のレポートについては、以下リンクよりご確認ください。
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