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9ライブス:ネコは九死に一生を得、飼い主は20年寿命が縮んだ出来事


これだけでもう大方はお察し頂けるかもしれませんが、これは写真のねこジセラが誘拐された時の話になります。

動物を飼っていると、帰って来ないということがたま~にあるかと思います。本当に嫌なものですよね。。

うちはブロック内でも角の家で、他の家よりも庭の面積が3倍ほどありましたが、ジセラは敷地内にどれだけスペースがあっても、よそ様のお宅へ向かうタイプのコで、兼ねてから少し心配ではありました。

犬さながら人懐っこく、よその家を訪れ、住人やペットに挨拶をし、ゴロゴロと地面に転がったり、ニャーニャーと鳴くのだそうです(汗汗)。。親しい隣人達は寛容でかわいがってくれましたが、”Curiosity killed the cat” (好奇心が猫を殺した)という言葉のように、ジセラはその手のネコかもしれません。。一応どのお宅も裏庭には入れないようになっていますが、警備が緩ければ入れる場合もあるかもしれません。

私は日本だったらネコをおそらく外には出さないでしょう。住んでいる環境にもよりますが、ここのような郊外の住宅であれば、日本では絶対に出しません。田舎だったら場合によりけりです。が、アメリカではネコが比較的自由に住宅地でも歩いています。あまり問題になることも聞きません。犬はもちろん別で、どんなに小さなワンちゃんでも飼い主が傍についてなくて近所を自由に走らせることは、特にそれが頻繁だったら問題になるでしょう。

私の家の裏庭にも10匹程のいろんなゲスト猫が、10年の滞在中にやってきました。ネコがガーデンを荒らすなどの迷惑を受けたことは一度もありません。近所のネコ達は自分の家にも大きな庭があるので、人の家の裏庭へ来るというのは、その家に猫がいる場合で物色するためにやってくるのだと思います。そして裏庭を1-2周して満足げに帰っていくだけです。日本では散々ネコに目くじらをたてられた経験がありますが、アメリカでは賃貸元とのルールなどはありますが、去勢避妊もしていますし、近所で問題になったことはありませんでした。どの家も大抵ペットを飼っていますし、本心は別にしても近所のペットに対して悪いコメントをする人はあまりいないように見受けます。

いずれにしてもこの一件は、ネコを外に出していたという点で飼い主に落ち度があったと言わざるを得ないのですが、それにしても少なからずショックな実情でした。

 ジセラは2年前の2月のある夜帰ってきませんでした。彼女が夜帰らなかったのはおそらく彼女のそれまでの10年の生涯で1-2回あったかと思います。これはネコによったり、季節によったり、何か彼らにとって立派な理由がある時のはずです。2日目の夜にも帰って来なかった翌日から、ネットで情報を探し始め、地元のアニマルシェルターへ赴き、フライヤー(チラシ)を作るなど一連のできる限りのことを始めました。近所の友人も辺りを一緒に歩いてくれたり、フライヤーを一緒に貼りに行ってくれ、力になってくれました。

 ネットの迷い犬ネコのサイトへ写真を出し、貼ったフライヤーには「報酬」と書き、日ごとに距離を延ばして貼って行きました。地域で一番大きなシェルターにも行きました。3-4日経つともう半狂乱+半ば諦め状態でした。とりあえずできることだけはやり、ひたすら「待つ」だけです。5-6日目になると、せめて遺体だけでも見つかりますようにと祈り始めます。24時間PCは立ち上げっぱなしで、一つのポストも見逃さないようにしていました。

「報酬」の文字を入れる時、報酬目当ての電話も覚悟していましたし、また最初から報酬目当ての誘拐の可能性も考えました。(ネコを捕獲して、報酬を出す広告が出たら、あたかも発見したように連絡してくる。もしも報酬を出さないようだったら、後はどうするつもりなのかわかりません。。)
 後に隣人から「報酬」は書かない方がいいと言われ、その言い分もよくわかりますが、彼女の命には代えられませんでした。ところが電話は最後まで1回も鳴りませんでした。

 8日目の朝ネットで、家からはやや離れてはいましたが、道路脇に猫の死体を見たというポストを目にしました。

「今日朝一で、道路に撥ねられて死んでいるネコちゃんを発見。。」

こんな感じでした。どなたか写真を持っていないか、またその猫の外見などを教えてもらえないか、とすぐさま返信しました。こんなネコではなかったかと、ジセラの写真も添えました。

すると3時間後にその返信として、ジセラがステンレスのケージに入っている写真が載りました。悲鳴を上げて保護先へ向かいました。

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↑  迷い犬・ネコサイトに載った写真
きれいに消毒されたようなステンレスのケージに入れられていましたが、ブランケットやタオルの一枚もなく、おトイレの中で寝ていました。。。。涙

ところがそこは3日前に既に探しに来たシェルターでした。そこでは迷い猫用の書類に必要事項を細かく書き、ボランティアに案内されケージの積み立てられた奥まで入って、その日に1匹だけ保護されているというネコを見せてもらったのです。その猫はもちろん違いました。そこへ保護されたのは失踪から2日後で、そのシェルターのサイトには同じ情報を既に提出済み、私が足で訪れたその日は更にそれから2日後。つまり私が来た時にジセラは既にその施設にいたことになります。私を案内してくれたボランティアの女性は通知を受けたその日はいず、マネージャーは「(最初に来た時)奥まで良く見たのか」などと言います。私は1匹しかいないと言われて案内されたのにです。

シェルターは殆どがボランティアにより運営されています。私も野生動物保護施設でボランティアをしたことがあるので見当がつきますが、ボランティアと従業員のコミュニケーションがうまく取れていないことはあり得ます。おそらく私を案内してくれた人も、聞かされていなかったのでしょう。ジセラはその連絡行き違いのため、不要に5日間も多くそこにいたことになります。シェルターでは収容期間が決まっているので、数日遅れていたら手遅れだったかもしれません。が、文句を言っている場合でもありませんでした。私のポストを見てここへ連絡してくれたのも、どこかのボランティアの人かもしれないので。

「それにしてもどうやってここへ来たんですか?」

その答えは知りたくないようなものでした。匿名の隣人がジセラが自分の敷地に入って来るのが気に入らなく、20分運転してわざわざこのシェルターまで連れてきたというのです。シェルター側は、

「飼い猫だってすぐにわかるんだから、こんなことしちゃだめよ。」

程度のことを言ったようですが、(私が)名前を聞いても言わないので、誘拐犯をかばっているとしか考えられませんでした。それから数日のうちに誘拐犯はだいたい目星がつきました。ジセラがうちのコだと知っている隣人は限られているためです。今までひと言も私には直接言わず、困っている等のメモも何もなく、目の前のうちを通り越してわざわざ20分も運転して連れて行ったのです。しかも最初の2日間はおそらくガレージ(外だったら鳴き声が近所に聞こえたはずなので)か物置に、水もおトイレもなく閉じ込めていたに違いなく、帰って来た時は体中が工業用オイルのようなものと泥でベタベタでした。どんな罠にはまってどうしていたのかは想像するのも嫌でしたが、際立った外傷は見えなかったことから、軽症で済んだのか8日間のうちに回復したのかもしれません。つけていた首輪とネームタッグは捨てられていました。犯人は計画的にジセラを狩猟用の罠などで捕獲し、2日間放置した後、シェルターへ持って行ったのです。市が運営しているシェルターには一定の収容期間があり、数日のうちに飼い主が現れない場合は殺処分されるのです。なので自分で殺す手間を省くために持って行ったのです。

シェルターを去る際に背中にチップを埋め込まれたジセラは、帰りの20分のドライブでは張り裂けそうな声をあげて鳴きどおしでした。

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↑ ”I'm home! Feed me already!"
帰宅早々ゴハンを要求するジセラ

手違いはあったものの、このことは本当に運が良かったと思っています。そして何度も言いますが、飼い主の落ち度だとも認識しています。しかしながら友人知人は、声を揃えてこれを立派な犯罪と言い、激怒してくれました。日本では事情は違うかもしれませんが、アメリカではペットは個人の所有物となり、州によって程度の差はあるものの、一般的には盗難罪になります。なので犯人は匿名を名乗り、更には動物を保護するはずのシェルターまでが半肩を担いだのです。私はさらに犯人を起訴に持っていくような余力は到底残っていなく、それどころか自分で問い詰めに行くことさえ嫌でした。

おそらくこの男(または家庭)はこのことで何年も私に恨みを持っていたのでしょう。それより1-2年ほど前に、車のタイヤに3本並べて釘が打たれていたことがありました。その、きれいにネイルガンで打たれた様子から、人為的ないたずらだと思い、気味は悪かったものの、私は泥沼離婚と終わっていた元夫の嫌がらせだと思って放っておいたのです。
 その男は直接のコンフリクトを避けながらも、攻撃的な人間だったようです。自分が気に入らない事は暴力で片付けようとする人間です。普通に子供も孫もいる家庭で、子供に何を教えているかを考えると恐ろしくなりました。。

しかしそれからがまた大変でした。ジセラは数日してほとぼりが冷めると、再び外に行きたがりました。私はその間、裏庭のフェンスを完全に出れないよう強化し、同時に猫用の散歩のリードも買って練習してみました。でもジセラはどうやってもダメで、ミゼラブルでした。猫用リードを使えるネコちゃんもいるようですが、何回かのセッションに分けて、少しずつ導入しようと色々見聞きしたことを試しましたが、どうしてもダメでした。

また彼女だけでなく他のネコも連帯責任を食らい、自由に外出ができなくなりました。近所に猫殺しがいると知っては、たとえ人の家までは行かないだろうコにも危ない橋は渡らせられません。そしてその恐ろしい隣人が近所にいるその家をできるだけ早く出たくなり、準備を始め、一年以内にそれを実現しました。

ネコを飼っていない、ネコのことを知らない人は「出すのが悪い」と言うかもしれません。私の母は動物が嫌いな人間だったので、いつもそちら側の言い分は聞かされていました。「動物が嫌いな人のことも考えなさい」が母の口癖でした。

近所の誰もが驚いて、「今までそんなことは聞いたことはない」と口を揃えて言いましたが、一度あれば十分です。。実に痛い教訓となりました。

私が一番最初にネコをアダプトしたのは、ニューヨークにあるASPCAという大きな保護団体の施設からでした。当時はアパート暮らしで当然一歩も外に出ることのなかったネコのピートは、室内だけの暮らしに不平を言うことも、脱走を試みることもなく、私達は何も疑問に思わずとても幸せに暮らしていました。
 ところがその後段々と犬やネコの数が増え、カントリーに移ることになり、一度外の世界を覚えてしまった動物は、飼い猫であっても決して室内だけで満足することはありませんでした。よかれと思って教えてあげた外の自然の世界は、実に怖い世界でもあることを共に学んできました。
 私(達)は今でも探しています。みんなで安全に住めるどこかを。。。

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↑ フライヤーに使った写真

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↑ 裏庭だけで満足してくれるコもいるのですが。。

もしもサポートを戴いた際は、4匹のネコのゴハンやネコ砂などに使わせて頂きます。 心から、ありがとうございます