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自分の商標が他人に先取りされるリスクって非常に高い!【日本編】【知財重視型経営】

前回、中国で商標を他人に先取りされるリスクってほぼ100%だと言いました。

じゃ、それでは、日本はどう?
日本でも他人に商標を先取りされるリスクはあるんでしょうか?

知財重視型の経営者に知っておきたいことがあります。
知財を重視する、知財を重要性をご存知の経営者は、先ず、商標のことを頭に入れてください。

日本の商標出願も激増中!


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日本の商標出願傾向は、上のグラフの通りになります。
これは日本特許庁が出したレポートからの抜粋で、
最近の10年間の日本の商標の出願傾向です。
ここで分かるように、
2019年、日本では年間で約19万件の商標が出されました。

中国の年間商標出願の700万件に比べると桁違いぐらい少ないですが、
それにしても、ご覧の通り、2010年の時点の年間10万件超に比べれば、過去10年間、日本の商標は倍増しました。

特許の場合、ここではグラフを出していませんが、
日本では最盛期の2006年の年間特許出願40万件超から、現在は3割カットの30万件未満であります。

これに比べると、日本の商標出願は倍増した訳で、激増とも言えます。
それでは、これら商標は、全て自分のビジネスのためでしょうか?

例えば、アルファードと言う車を作るために、トヨタ社はアルファードと言う商標を持っていて、これは、トヨタ社は自分のビジネスのために、商標を出していると言えますが、毎年日本で新しく出されている20万件近くの商標は、全て自分のビジネスのためでしょうか?

答えは、【NO】です。
以下、いくつかの事例を上げます。

先ず、一番典型的なのが上田氏のケースです。この方は、テレビにも出た事があり、知財業界の方は大抵知っています。

この方は、Wikipediaに乗るぐらい有名人です。この方はベストライセンス㈱と言う会社を持っていて、社名からも分かるように、

毎年、日本で物凄く多くの商標を出しているからです。
Wikipediaの紹介によると、日本全体の出願件数の1割以上をこの人が出しています。
こんなにいっぱい出している中で、有名なのは、ピコ太郎の『ペンパイナッポーアッポーペン』と『PPAP』商標です。
上田氏の場合、世の中で人気なキーワードを商標的な観点から掴み、それを出願するだけの話です。

これに比べ、悪質な先取りをする人も存在します。
悪質な先取りというのは、他人のビジネスを邪魔する行為、例えば、最初から他人に買わされる目的で商標を取る行為ですね。

悪質な先取り事例紹介

日本商標法の第4条第1項第19号には、他人の周知商標と同一又は類似で不正の目的をもって使用をする商標についての規定があります。

先ず、この条文は、下記の通り。

他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもって使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)

「不正の目的」の該当性の判断については、下記のように規定しています。

(例) 本号に該当する場合
外国で周知な他人の商標と同一又は類似の商標が我が国で登録されていないことを奇貨として、高額で買い取らせるために先取り的に出願したもの、又は外国の権利者の国内参入を阻止し若しくは代理店契約締結を強制する目的で出願したもの。

このような出し方をしている商標はアウトですよ~と言うことですが、
実は、日本特許庁も把握しきれてない事例がいっぱいあります。

それでは、以下、2つの事例を上げてみます。

この事例は両方とも、他社のビジネス展開をみて、その会社の商標登録状況を確認し、扱っている商品と実際出された商標の指定商品の間の隙間を発見し、そこだけで商標を取り、それを持って他社を嫌がらせして買い取らせようとしたケースだと思っています。

それでは、例をみましょう。

例1:KOOLSEN事例

まず、amazonで「KOOLSEN」で調べてみると、下記のように、アウトドア用品を売っている業者であることが分かります。

こちらが店のサイトです。

売っているものは、下記のようなアウトドア用品です。

そこで、KOOLSENと言う日本商標が誰によって取られたかを調べてみましょう。

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ご覧の通り、今現在、日本にはKOOLSEN商標が3つ存在します。
この3つ全ては、中国の深センにある会社が持っています。
そこで、第6112226号登録商標をみましょう。
この商標は出願日が2018/09/13で、
第6186941号登録商標(こちらは2018/08/09出願)より1ヶ月遅れて出されています。
一歩進んで、第6112226号登録商標の中身をみましょう。
この商標の指定商品は、「キャンプ用マット」1つだけです!非常識的な出し方ですね。普通は、10個ぐらいは選びますね。

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経過情報をみましょう。

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なるほど!
この商標は、2019/01/22に登録になって、その3ヶ月後の2019/04/15にこの深センの会社に売却されているんですね。
即ち、某会社によって取られた後、登録になってから他社を嫌がらせして買い取らせたことでしょう。

例2:TELESIN事例

同じく、アマゾンで「TELESIN」検索してみましょう。

この会社のAmazon店をみると、中国深センの会社ですね。

こんな感じのGoproなどアクションカメラ用のアクセサリを売っている会社です。

因みに、こちらのクリップマウントは、私も持っています。

こちらも同じく、日本商標を調べてみましょう。

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現在、日本には3つのTELESIN商標が存在しています。
そのうち、出願番号2019-086796商標の詳細情報を見ましょう。
この商標は、深センの会社ではないところが、2019/06/20(一番最初)に日本特許庁に出しました。
深センの会社は、その4ヶ月後の2019/10/25に日本で出していますね。

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それでは、この最初に出された商標の経過情報をみましょう。
結果的には、この商標が拒絶査定になっています。

何故でしょうか?拒絶理由をみてみましょう。

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なるほど!拒絶理由の抜粋。

■第4条第1項第10号(他人の周知商標)
 この商標登録出願に係る商標は、「TELESIN」(構成中の「TELES」の部分はやや図案化されています。)の文字を横書きしてなるところ、これは、中国広東省深セン市所在の「SHENZHEN TELESIN DIGITAL CO.,LTD」が、本願商標の登録出願前から、商品「電池,充電器,カメラの附属品,ケーブル」等に使用し、本願商標の登録出願前より取引者、需要者間に広く認識されている商標「TELESIN」と同一又は酷似するものであり、かつ、前記商品と同一又は類似の商品に使用するものと認めます(下記の引用情報を参照)。

日本審査官は、拒絶理由で、
この商標は中国深センの某メーカの商品と似ていると言っています。
1つ目の事例に比べて、この深センの会社はラッキーでした。
このように、日本でも、海外企業が日本で商標登録してない隙間を利用して、商標先取りしようとしている業者が存在しています。

結論

なので、ビジネスを進める上で、自分の今現在の業務内容、及び、これから進める予定の業務範囲を正確に掴み、それに似合う商標を先持って十分確保する必要があります。
中国だけではなく、日本でも同じです。
知財重視型経営をされる方は、
先ず、第一歩、自分のビジネスに似合う商標を確保しましょう!
詳しい相談は下記に。

以上

プロフィール

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TRY㈱、LTASS㈱の代表取締役。twitter: @TokyoTigerAniki
東北大学(CNIHA)工学部、東京理科大MIP卒。2007年来日、東京の特許調査会社と特許事務所を経て2014年に起業。中国ビジネスに重みを置く日系企業を幅広く支援。ゼロから開発した総合的知財管理システムECOIPは日中韓の多数の企業や特許事務所に採択されている。現在、日本でIT会社、知財会社を経営しつつ、韓国・ソウルにある特許事務所、中国・北京にある特許事務所の経営にも参画し、日・中・韓の知財業務をシームレスかつダイレクトに支援している。

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