42.スラムダンク創作山王でわちゃわちゃする話(一之倉聡)
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※スピンオフ
※41話の続き
完全自己満、創作なので苦手な方はご遠慮ください。誤字脱字あり。すみません。
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「なぁ、松本」
「寝てる時キスするってどう言う心理?」
今日会ってからずっと様子がおかしい一之倉が
急にそう聞いてきたので、唖然とする。
最近外部コーチを始めたと聞いて
目にできたクマを見ながら、
相当大変なんだな。と少し心配になった。
出会いがしら「お前寝てないのか?」と聞いたら
「昨日寝てない。」と言う一之倉。
その後も上の空で、喋ったと思ったらこれだ。
居酒屋で焼き鳥をお互い食べながら見つめ合う。
何て答えるか迷っていると
寝てる時に…キス?
まさか…?と嫌な予感がした。
あの時の事か…?と手が震える。
「ははっ…それは、悪ふざけだろ。」
冷静を装って明るく笑う。
「悪ふざけ…?」
そう呟く一之倉。険しい顔をしたので
慌ててフォローする。
「いや!悪気はない!その場のノリだよ!」
そう言って笑う。
「…何でそんなことすんの?」
そう言われてドギマギする。
昔合宿の時に、山王でキスが上手い選手権をした。
やってもいいけど女子の顔のサイズで試したい。と俺が言い出したもんだから
目を閉じてスタンバイしてた河田が
俺じゃ不満なのかと怒り出し
深津が無表情で、寝てる一之倉を指差した。
確かに一之倉は顔が小さい。とみんなで言って
一之倉はキレると意外と怖いから
起こさないようにやろう。
とみんなで交互に一之倉にキスをした。
動画を撮って死ぬほど笑ってた。
その動画が流出したのか…?
もしかしてあの時、起きてたのか…?
1人で冷や汗をかく。
「お前が……1番……可愛かったんだよ。」
精一杯褒めたつもりだった。
「は?」
「え?」
変な間が流れる。
「俺が言い出したんじゃないぞ?深津が一之倉にしようって言ったんだ。」
キレてると思って、深津を売った。
「いや…女の子がキスしてくる時って意味だよ。」
「え?女の子?」
言葉の意味を理解して
「は?誰にされたの?どういう事?」
急にウハウハして前のめりになって聞く。
「言えないけど…。」そう言ってビールを飲む。
「てか、待って。何?俺に寝てる時キスしたの?気持ちわりぃ。本当に。」
眉間に皺を寄せてキレ始める一之倉。
「えー。なんだろうなぁ。好きなんじゃないか?お前の事。」松本が腕を組んで自分に置き替えてキュンキュンしながら頭を捻る。
「いや、さっきの話ごまかせないから。俺可愛いって言われるの嫌いだし。」
※
3階校舎の窓ガラス越しに、
校庭を歩いてくる一之倉を見つける。
窓ガラスに手を置いた。
顔を見て「本当わかってないよ。」とつぶやく。
こんなに大好きなのに。
そう思いながら、見つめる。
君は気づかないで体育館に入っていく。
「気づけ。」
そう言い残して教室に入る。
あれから、気まづくて
嫌われたんじゃないかって思って
駐車場にも校舎裏にも行ってない。
こんなに散らかってて
ただ真っ直ぐすぎて、積もり積もってく気持ちに
私もどうしたらいいのか分からない。
ひとつわかるのは、私だけ空回ってるって事。
「ねぇねぇ、コーチの人優しくていい感じだよね。」
そう聞こえてきて、足が止まる。
クラスを除くとバスケ部のマネージャー達だった。
「もうすぐ誕生日なんだってー。」
「ケーキでもみんなであげようかって話してた。」
持ってた教科書を握る。
他の子にも優しいよね。そりゃあ。
そう思って聞きたくなくて足速に立ち去る。
誕生日のお祝い…私もしたいのに。
そう思って悲しくなる。
あの子達は普通に部活で会えるんだ。
羨ましいなぁ。そう思って嫉妬した。
※
いつもなら駐車場に一之倉に会いに行く時間。
迷って、会いたい気持ちもあったけど
困った顔を思い出して
「帰ろう…。」そう思った。
心が痛い。
喜んで欲しかっただけなのに。
私は上手くできない。
校舎を後にすると、体育館からバスケットボールの音が聞こえた。
なんとなく、目がいく。
誰もいない体育館で吉原がドリブルしていた。
あいつ、何してるんだろ。
そう思ってみていたら私に気づいた。
「おう…。」
「何してんの?」
私に見られて恥ずかしそうにする。
「こないだ、ボールとれなかったの悔しくて」
子供みたいに口を尖らすから
おかしくなった。
少し笑って、何も言わず立ち去ろうとする。
「ミレイ。悪かったよ。」
思わず立ち止まる。
「俺、上手くできなかった。」
真っ直ぐ私を見て言う。
言われた言葉の意味を考える。
「うん。私も上手くできなかった。から、いいよ。」
「でも、好きだったよ。お前の事。」
そう言われて少し驚く。
懐かしい感情を思い出す。
「うん。私も好きだった。」
お互い見つめあった。
さよなら。吉原。
好きだったよ。
「じゃあな。」
そう言われてまたドリブルするから
私も前を向いて歩き出す。
「あ…。」
目の前に一之倉が立っていた。
手に鍵を持ってて施錠しにしたんだと気づく。
「あー。なんかごめん。若者の会話聞いちゃって。」
そう言って、口角を上げた。
いつもの目で私を見る。
すぐ目を逸らして通り過ぎる。
ほら、私も上手くできない。
だから、吉原の気持ち今ならわかるよ。
手をぎゅっと握りしめて前を歩き出す。
初めて目を逸らされた。
こないだ私がした事は
間違いだったと思い知る。
これ以上嫌われたくなくて、何も出来ない。
そう思って泣きそうになるのを我慢して
体育館を後にした。
※
「どーも。」
「体育館、もう閉めちゃうけどいい?」
口角を上げて吉原に言う。
何か言いたそうに俺を見る。
急にボールをパスされる。
「ミレイの事どう思ってますか?」
真っ直ぐな目で聞かれる。
ちょっと驚いたけど、
高校生って凄いな…。と思いながら
キャッチしたボールをキャスターがついてるボールカゴに投げて入れる。
「吉原君と同じ生徒。」
表情を変えずに笑顔で言った。
「俺たち、付き合ってないですよ。」
聞いてもいない事を言われて
少し間があく。
「そうなんだ?」と答えて施錠を始めた。
自分の様子を確かめるように
吉原が後ろについてくる。
「俺、中学からずっとミレイと一緒だからわかるんだけど。」
そう言ってあまり面白くない様子で口籠もる。
「ミレイ、あんたの事好きみたい。」
そう言われて、不意打ちすぎて
振り向いた。
「迷惑だったら、はやく振ってあげて。」
「…。」
「あんたに振られたら、俺が励ますから。」
何も言わずに見つめ合う。
「それだけ言いたくて…待ってました。」
そう言って、きまづそうにお辞儀する。
吉原が体育館から出て行くのを見送った。
姿が見えなくなって、1人体育館で立ち尽くす。
「宣戦布告かよ。」
持っていたバックを手から落とす。
「むっず…」
思わず言葉が出て、天井を見上げた。
※
次の日帰り際に、校庭を歩く。
なんでまだ私残って勉強してるんだろ…。
会いに行く勇気もないくせに…。
一方通行の気持ち。
一方通行のキス。
考えると、幸せすぎた夜。
頭がぐちゃぐちゃになる。
雨が降ってきた。
「やばー。傘持ってきてない。」
多分、天気雨かなぁ?
そう思って周りを見ると、部活が終わるのを待ってたカップルが相愛傘で帰っている。
「1人身には辛い光景…」
妬ましそうに見て、本降りになってきた道を引き返す。
どこか屋根ないかなー。
そう思ってキョロキョロする。
体育館の近くに避難しようとする。
ふいに雨が当たらなくなった。
大好きなニオイがする方を向く。
一之倉がトレーナーを自分と私の頭の上にかけてくれた。
体育館の屋根の下に向かって一緒に走る。
なんで、見つけてくれるの?
いつも。
いつも、私を独りぼっちにしないよね。
顔が近くてドキドキが止まらない。
屋根の下で雨宿りする。
「俺も、傘持ってきてないわー。」
そう言って、びしょ濡れになった服をパタパタする。
久しぶりに話すので、目を合わせられない。
びしょびしょになったYシャツと
スカートを見て、どうしよう…。と
応急処置でハンカチで拭く。
一之倉が何か言いたそうに私を見る。
いつもの目で見つめられて
安心する。
「元気?」
目が心配そうに、口だけ笑って聞く。
「うん…」
隠しきれなくて顔が赤くなる。
どうしよう。全然普通に出来ない。
「最近、部活終わり会いにこないじゃん。」
服をパタパタさせながら自然に言われて
ギクッとする。
偶然を装ってたんだけど…
無理あるかぁ…。
「…一之倉に、嫌われたかなって思って。」
濡れた服を同じくパタパタしながら
俯いて答える。
「え??」
意外そうな声。
怖くて恐る恐る顔を見る。
「嫌いにならないよ。」
目が合ったらそう言って
眉毛を下げて、目を線にして笑う。
その言葉が私を舞い上がらせる。
「ミレイ、俺と約束したじゃん。もうしないって。」
「うん。もうしない。ごめんなさい。」
謝った後、言葉が思わず続く。
「一之倉の誕生日プレゼント…買いたかったの。」
真っ赤な顔で弱々しく呟く。
それを聞いて、キョトンとする一之倉。
「俺の?」
少し考える一之倉。
私の言葉の意味を理解して
一之倉の顔がどんどん緩んでいって
赤くなる。
顔を手で隠して、目を逸らした。
いつも飄々としてる一之倉の
初めて見る顔に私も動揺する。
何その反応。
すごい期待しちゃうんだけど…。
恥ずかしくて何も言えなくなる。
願わくば、そんな顔するのは
私の前だけにして欲しい。
「だから、バスケ以外で好きなのなに?」
そう聞くと、前にした質問の位置を理解したのか
腑に落ちた表情をした。
その後一之倉がゆっくり私を見る。
「ミレイ。」
「え?」
急に名前を呼ばれてドキドキする。
「あ…。えと。」パーマがかかった頭を触る。
「甘いの好きだよ。おれ。」
甘いの…。
「そんなんでいいの?」聞いて拍子抜けする。
「1番嬉しい。てか、もう嬉しいし。」
そう言って飄々と笑った。
びっくりした。名前呼ばれたから。
好きって言われたかと思った。
「ありがとう。」そう続けて弾けるような笑顔に心臓が鳴った。
その時雨が止んで、2人で空を見上げた。
「誕生日いつ?」
「金曜日」
明後日だ。
「楽しみにしてるね。」そう言って一之倉が先に屋根の外にでる。
私は照れながら手を振った。
ずっと雨降ってればよかったのに。
歩いて行く姿を見つめる。
大好きでたまらない後ろ姿を見て
「好きだよ。」独り言みたいに呟いた。