58. スラムダンク創作山王でわちゃわちゃする話(深津一成•沢北栄治•一之倉聡•牧伸一•藤真健司)
主人公 佐藤アキちゃん、山王工高出身、大手雑誌編集部で働いている。
沢北:アキの幼なじみ 山王工高出身 アメリカ在住
深津:東京のプロチーム所属 沢北の先輩 山王工高出身
リョーコ:深津の幼馴染 東京プロチームのマネージャー
水原さん:アキの上司、大手雑誌編集部で働いている。
仙道: 東京のプロチーム所属
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※成人指定※
※直接的な表現ありなので、苦手な人はご遠慮ください
完全自己満、結構大人な内容ですので苦手な方はご遠慮ください。あまりバスケに触れず健全な男女として書いてます。誤字脱字あり。すみません。前回の続きです。
※本作はファンアートです。原作とは一切関係ありません。
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練習試合がスタートする大きな合図が鳴る。
スターティングメンバーがそれぞれポジションへ移動し始めた。
たくましい赤銅色の肌に、張り詰めたような筋肉が目に入って、近づくだけで迫力がある。
緊張感が走った。
目が合うと、通り過ぎざまにお互い口を開く。
「牧さん。ちわっす。」
「今日は、延長戦に持ち込む気なんてないぞ。」
すれ違いがてら、交わす言葉に歴史を感じて口角が上がる。
「さすがにすんなり勝たせてもらえないか〜。」
膝に手を置いてかがんだ後、腕を伸ばした。同時に脈拍があがるのを感じる。
緊張とは違う、いつものじりじりとした興奮が迫る。
その感情と一緒に、今までになかった気持ちが湧き出てきて首をかしげた。
あの人を触ったかもしれないその手が少し許せなくて、噴煙のように嫉妬心が湧き出てくる。
心の中で、空をかくような過去の残像を掴もうと躍起になってる。
自分が知らない、いつかの2人を今の自分が追いかけてる。こんな風に思うなんてバカみたいだ。
そう思って、彼女が彼女になる前を知ってる
目の前の人を、羨望してる自分がいて笑いがでた。
※
「あ~聡に会いたい。」
思わず会社の廊下で呟いていた。
一緒に住めたらいいのに。そう思いながらそんな提案はできないな。と踏みとどまる。
私たちのキャリアは、これからだから。
忙殺される時間の中でも、相手を思いやりたい。
つねにダメになるんじゃないかっていう緊張感があって
一之倉があまり忙しさを見せない分、タイミングを配慮してる。
一度は、私たちは夢を優先したから。
そう冷静になる気持ちがあるのに、大好きだからすぐ会いたくなっちゃう。
色んな気持ちが混ざりあって苦しい。
最後にあった夜のことを考えると、毎回一之倉で頭がいっぱいになる。
「聡…。凄かったなあ…。」
思い出して顔が赤くなった。
優しくていつもリードしてくれて、男らしいのに可愛いんだよね…。
また、いつかみたいに全部優先してしまいたくなる。
だから私はいつも、工夫をする。
こういう時、一之倉はこの世界にいない。そう思い込むようにする。
よっぽど考えこんでたのか、反対側から歩いてきた人に気づくのが遅れた。
その人は急に立ち止まって、持ってたファイルを壁に置いて、通せんぼされる。
相変わらず目鼻立ちがハッキリした端正な顔立ちを見上げた。
「ミレイちゃん。俺、バスケの代表合宿見にいくけど行く?」
諸星さんがサバサバした感じで私を見下ろして言う。
「…代表合宿ですか?」
その言い方とは逆に、その提案が凄い事で理解するまでに時間がかかる。
「行きます…。行きます行きます!」
「新入りだから、研修もかねて。」そう言った後、こんなに食いついてくる私に少し違和感を感じてるように見つめてくる。
「ほら」目を逸らした。
「実際に、自分のバッシュ選手が履いてるの見れた方が今後のためにも良いかなって思って。」
浮かれた自分を少し落ち着かせて、諸星さんの顔を見た。
私のため、か。そう気づいて頭を下げた。
こないだ遅くまでオフィスに残って考えこんでたの、覚えててくれたんだ。
諸星さんは、相変わらずお人よしで面倒見がいいな…。
「最初に行っておくけど、スポンサーへの解禁が今日だからミサキさんも来るからね。」
口をとんがらせて意地悪く言った言葉にはっとする。
「え…」あからさまに嫌な顔をして、諸星さんがその様子を面白そうに見つめて
そのまま通り過ぎた。
もってたスタバのコーヒーを傾けてた途中で止まる。
「聡…もしかしたらミサキさんと会うかもしれないじゃん。」
完全に通り過ぎた後、思わず呟いた。諸星さんは余計な一言をいいがちだけど、今回のことは前もって教えてもらってよかったかもしれない。
あの2人が顔を合わせるかもしれない。
そう思っただけで、噴き上がってくるような嫉妬が起こる。
一度考えてしまうと、抑えが効きそうにないほど激しい。
絶対に、見たくないな。そう思った。
別に何か起こるわけでもないのに、少し引っかかる。
前、一之倉といる時にミサキさんと偶然会った。
ミサキさんが一之倉を見つめた後に私を見た時、変な間が合ったこと。
あの時、やけに胸が騒いで心に残ってた。
一之倉と過ごす時間が少ない私には、誰かが一之倉と過ごす時間が羨ましくて仕方がないんだ。
※
「深津さん、アキとあんまり一緒にいれないからってイライラすんのやめてくださいよ。」
休憩中、ウォーターボトルを傾けてたら沢北が軽く肩をぶつけてきて小さな声で言われた。
「イライラ……してるぴょん?」
不思議そうに顔を傾けた。
全く無自覚だったから。
「してますよ!空気悪いじゃないですか!」
辺りを見て、軽く胸にアタックをされたあと、考えながら言葉を選ぶ。
「沢北、選考中だし緊張感を与えるのもキャプテンの仕事ぴょん」
正直、神経質な不調和が心地よかった。
揺さぶられるような、呼吸音だけが響き渡る空間は自分を活かせるから。
「…めちゃくちゃ、ポジティブに切り替えしてきましたね?」
「それに、俺よりみんなピリピリしてるぴょん。」
「へ?」沢北の肩越しに、沢北を睨みつけている藤真を見て言った。
沢北はまるで気づいてないけど。仙道もなんだかいつもと違うぴょん。
そう思って少し真剣な眼差しで牧を見つめる仙道に目線をうつした。
「お前なんかしたぴょん?」
そう言われて、目をぱちくりさせる沢北。
「俺ですか?全然わかんないです。俺そういうの疎いんで。興味ないです。」
沢北はあっけらかんとして、周りへの敵意なんて一瞥もくれない様子で屈伸した。
こういう時の沢北は、整った容貌が助長して驚く程冷酷だ。
「バスケができるなら、なんでもいいです。」
「…お前のそういう所、たまに見習いたいぴょん。」
拳で胸を叩く。
「今日、ファールが多くなりそうだから怪我に気をつけるぴょん。」
叩いた拳を両手で握りしめる沢北。
「深津さん……。俺のこと心配してくれてます?」
「手、離さないとぶん殴るぴょん。」
「俺、嬉しいです。」
さっきの表情を一変させて目をキラキラさせながら、初めて人に優しくされたみたいに喜ぶ沢北を呆れて見つめた。
無神経なくらい押しが強い。ここが沢北の強さだよな。
そのくせ、ころころ感情が変わるくせに、勝気だ。
「あいつら。何してんだ。」
沢北が深津の手を握りしめてうっとりした顔をして喜ぶのを選手達が遠くから見つめる。
※
『あいつが...佐藤に合ってると思わない。』
ネガティブな言葉には力があると思う。
面と向かって、そう言われると思わなかったな。
私は大丈夫だって強がってる。
どうしてこんなに、自信がなくなってくるんだろう。
過去の喪失にとらわれて、起きてない事に不安を感じてる。
どこかで釣り合ってないんじゃないかって、考えこんでしまう自分を見透かされた気がして
ドキッとした。
マイナス思考になるとどんどん加速していって、飲み込まれそうになる。
考えこんでると、ホテルの廊下で誰かとぶつかりそうになった。
「佐藤。」
「あ、藤真さん。」
お互い顔を見つめて、一瞬止まった。
何か、適切な言葉を探してるみたいに。
藤真さんは、またコンビニの袋を持っていて缶チューハイが見えた。
私の困ったような顔を見て、藤真さんが気を遣うようにかぶっていたフードをとった。
「こないだ、悪かった。」
思ってもいない唐突な謝罪に目を丸くする。
「俺、踏み込みすぎたわ。」
真っすぐビー玉みたいな綺麗な目で私を見る。
藤真さんは、いつも熱くて意思が籠もった言葉をくれる。
ずっと気にしていたような言い方で、構えていた気持ちがほぐれる。
「あ...。」
「気にしてるだろうな。って思って。」
何て答えていいかわからずに、目を伏せた。
藤真さんは、私と違って気持ちが強い。
言われた言葉を否定するには、ちゃんと相応な言葉が必要な気がして
必死で心の中を取り繕う。
コンビニの袋から、私がいつも飲んでいた缶チューハイを取り出して
はにかんで差し出される。
私が好きな安っぽい缶チューハイが、好青年のような藤真さんには不釣り合いで少し笑った。
手にもってパッケージを見つめて、昔を思い出す。
困ったように見る藤真さんの表情を見て、私がいつも困ってたからそんな表情が板についてるんだと気づいた。
「確かに、辛いです。」
言葉が自然にでた。
「なんだろう。本当に私で大丈夫かなって。考えちゃうくらい。」
ぽつりぽつりと言葉がでた。
「…佐藤。」
「たまに、一人で考え込んで、寝る前に泣いちゃうくらい。」
体の前で組んだ指を、組みなおす。
深津先輩が私に初めて触って指を絡め合った日。ときめきすぎて苦しかった。
なぜか今その感情を思い出す。
胸が苦しくなって、切なかった。
ずっと喉から手がでるほど深津先輩が欲しくて、リョーコさんに嫉妬してた。
私は今でも、あの感情を覚えてる。
でも、花火の日の記憶が「好きだよ。」って言った瞬間が、全てを完璧にする。
藤真さんがあまりにもいたたまれない顔をするから、
なんだか急に自分がバカみたいに思えてきて、笑いがでた。
「藤真さんは…理論的だから、私が言う事理解できないかも。」
恥ずかしくなって、自信がない口調でしか喋れない自分が情けなくなる。
「なんだよ。それ。俺、意外と学ばないタイプだぞ。」
少し困ったように笑った私を見て、藤真さんが優しく笑いかけてくれた。
「だって、俺も」
珍しく、藤真さんが言葉に詰まる。
一瞬口を真一文字に結んで、目をそらす。その後、真っすぐ私を見た。
「佐藤があいつを好きなの、知ってても…抑えられないんだ。」
藤真さんはいつも、真っすぐ見つめる瞳の奥が困っていて、その理由が初めてわかった。
「でもいいんだよ。これで。」
私の表情を見て、眉毛を下げた。
胸のところに拳をこすりつけてて、私はなぜかその動きに目をそらせない。
「俺は、このままでいいんだ。」
藤真さんが自分に言い聞かせるように言ったその言葉が優しくて、
胸が同じく締めつけられた。
辛い時、何にもないのに胸の真ん中が痛くなる。
その感情には身に覚えがあった。
「私も、これでいいと思ってます。」
真っすぐな気持ちに答えるべき言葉が、これ以外見つからない。
「あの人が好きだから。」
今も、昔も、会えなかった時間も、ずっと深津先輩が好きだった。
※
どうやって、アキちゃんを元気づけようかな。
昨日の夜、なんだか上手く話せなかったから寝る前に考えてた。
なんだか、アキちゃんは元気がなかった。
自分なりに考えてみたけど、自分ができることが限られてて
なんだか無力だな。と感じた。
一緒にいる時間が増えたら、元気がなくなる前に気づいてあげれるかも。
そう思って検索履歴にたまった一緒に住みたい家の間取りを見つめる。
冷蔵庫より先に、住んでみたい家の話しをするべきだった。
そう気づいて、やっぱり浮かれてる自分に気づいた。
アキちゃんが仕事ができるようにデスクを置ける広さがいいかな。
お洒落なデスクと椅子があったら喜ぶかな?
気づいたら冷蔵庫の次は家具を見ていて、リストにまとめてた。
想像だけがどんどん膨らんで、見せたら喜んでくれるといいな。そう思った。
「アキちゃん。部屋にいなかったぴょん…。」
電話をかけてみたけど、出なかった。
何か仕事をしてるのかも。とそう考えて、携帯をいじりながら部屋の近くを歩いていたら廊下の角の先からアキちゃんの声が聞こえた。
誰かと話してるみたいで顔をあげて耳をすます。
「確かに、辛いです。」
聞いた事がない暗く沈んだ声に、思わず足が止まった。
「なんだろう。本当に私で大丈夫かなって。考えちゃうくらい。」
聞いた事がない言葉が並んで、少し置いてけぼりになった気分になりながら
段々、胸が痛くなって息が止まりそうになる。
「…佐藤。」
「たまに、一人で考え込んで、寝る前に泣いちゃうくらい。」
一緒にいるのは、藤真か。
そう気づいた時、穴に落ちたような気分になって疎外感を感じた。
アキちゃんは自分には打ち明けてくれなかった。
その事実に心がずっしり重くなる。
聞いちゃいけない事を立ち聞きしてしまった気がして
気づいたら足が動いて、その場から立ち去った。
うきうきしていた気持ちが段々しぼんでいって、
自分は何をしてたんだろう。っていう気持ちになる。
開いてた携帯の画面をそっと閉じた。
一人で浮かれてバカみたいだ。
付き合ったら、誰よりも近くにいられると思ってた。
それは勘違いだったみたいだ。
「深津。お疲れ。」
馴染みのある声が後ろから聞こえて、ゆっくり振り向いた。
偶然廊下で居合わせた、切れ長の目を線にして笑いながら一之倉が
飄々とした表情で近づいてきた。
多分自分は、何かを訴えてる目をしてたんだと思う。
一之倉が立ち止まって、何かを察したように立ち去ろうとするから
「帰るぴょん?」
そう聞きながら通せんぼした。
目を逸らしてまた帰ろうとするから、
答えを待たずして何も言わずに、腕をつかんで自分の部屋に連れ込む。
「なに。圧すご。」そう言いながら何も言わずについてきてくれた。
一之倉はいつも優しい。
多分、自分の説明はかなり回りくどかったと思うし、ダラダラ話してしまったと思う。
「話せばいいじゃん」
なのに、まるで何かをはりかえすように、携帯を触りながら言われた。
しかも疲れた顔で、はやく終わんないかな。という顔をしてる。
たどたどしく一生懸命打ち明けたつもりだったのに、呆気にとられた。
は?っていう顔をして目を見開いた自分に向かって
「傷つけたなら、謝らないとな。」
いつか聞いた事がある言葉が並んだ。
何故かむしゃくしゃして、無表情で自分のホテルの部屋にあるベッドをがしがし蹴っ飛ばした。
「深津。行儀悪い。」
「一之倉。冷たいぴょん。絶対タピオカに会いにいくからだぴょん。」
「俺たちそんな会わないよ。」
クスリと笑いながら一之倉は言葉を続ける。
「俺、あんまり過去とか気にしないしな~。」
なんだかすぐ否定したくなる。そういう事じゃない。
そう言って話を辞めてしまいたくもなる。
俺は傷つけてるかもしれない。っていうアキちゃんの気持ちを気にしながら話したつもりだった。
でも、一之倉はその話の根っこにある、俺のどうしようもない幼稚な部分を見透かしてる。
「…気にしてる訳じゃないぴょん。」
「妬くけど。それだけかな。そこまで昔の事とかに気持ちを組んでやる必要もないし。」
俺が絶対に口が裂けても言いたくない単語を
さらっと言いながら、まだ携帯をいじっていた。
敵愾心や嫉妬が混ざって忙しい。
自己犠牲の心は持ち合わせているのに結局それも自分を守るためで、心の中にある独占欲に気づいてる。
正直、腹が立つんだ。
自分の物を他の男が、知った様にしていることに。
でも、わかってる。
俺が勝手なことは。
自分のタイミングで求めて、アキちゃんの優しさにいつも甘える。
「だってさ昔の男は、俺とどうやって付き合ったとか知らない訳でしょ。知りようもないしさ。一緒じゃん。」
そう言って笑う一之倉は、笑ってはいたけど冷たい言い方をした。
決して意識してないって訳じゃなくて、一番でいたい。って気持ちは
俺と一緒なんだな。と思う。
多分、一之倉も俺と似た部分を持ってる。
「‥‥昔の男って言うのやめるぴょん。」
膝の上にたてた腕で頬杖をついて、無表情で見つめる。
「藤真と何かは、あったんじゃないの?」
そう目を見て言われるから、すこぶる不快になった。
俺の反応を見て「いや」一之倉は眉間にしわを寄せながら目を見て、口を開く。
「今の相手がいなかった間、誰ともなにもなく、自分のことだけ思ってた。って
思う方がおこがましい考えだと思うぞ。」
「何かあった。って考えてた方が健全だろ。」
正直、想像しただけで耐え難かった。
アキちゃんが俺が知らない間に、他の男と何かあったなんて。
一瞬、沢北が頭に浮かぶ。沢北も、こんな気持ちだったのか。と気づく。
全部アキちゃんを知っているつもりでいたら、急に現れた自分に邪魔された。
…本当に、自分は身勝手なやつだ。と呆れる。
「一之倉でいったら…ミサキみたいに?」
ただ、一之倉の言った事が正しすぎて、何か言い返したくなったんだ。
そう思っただけで、思ったより返答が遅かった事が少し気になった。
「そうだな。」そう言った一之倉の表情から、浮かび出るすべての意味を読もうとした。
だけど多分、自分には一之倉の気持ちを想像するには経験が足りない気がして、
あまり考えないようにすることにする。
俺は、アキちゃんにしか、耐え難いこの気持ちを感じた事がないから。
※
「牧さん。」
休憩室でしばらく一緒に過ごしてから、2人っきりになった途端に何故か無性にスッキリしたくなった。
シリアスにはしたくなくて、でも真っ正直でもいたくて。
綺麗ごとは抜きにして、伝えておいた方がフェアな気がした。
牧さんはこっちを見据えて、何か大事な事を伝えられる空気感を読んでいた。
「俺、水原さんと付き合ってます。」
両足を投げ出して、壁に寄りかかっていた牧さんが姿勢を正した。
「そうか。」
まるで、わかってたように言われた。でも、そう言われた後に段々信じられない。っていう顔をして自分を見据えた。
「…仙道。」
もっと罵倒された方が、スッキリするようなもんなんだけど。
「あの人寒がりだから、すぐ風邪ひくし。夏でもホット飲むくらい。」
なんだか聞きたくないようで、でも牧さんの顔が優しすぎて目が逸らせない。
「強がりで大人ぶるし。」
そう言ってため息をつく。
「急に、自分で決めたいい加減な事言ったりするけど、面倒見てやってよ。」
「……はい。」
なんだか、親に挨拶したような気分になる。
牧さんの言葉を聞いたら、嫉妬心が落ち着いてくる。
多分、この人は本当に水原さんを想ってたんだと思う。
「確かに、お前ならいいのかもな。」
「へ?」
目を伏せて、手のひらを見つめた後少し笑ってこっちを見た。
「全然知らないヤツよりいいかな。」
腰を落とす足が地につく。
予想に反して、そう切り返してくるから何て言ったらいいかわからない。
「お前にはなんかしてあげたくなるのかもな。確かにな。」
「…。」
「俺には、何かしてあげようっては思わないだろうよ。」
ぽつりぽつり続く言葉が、どこか自分と話してるようで
何を言っても嫌味になる気がした。
「俺、牧さんに今日ずっとやきもち妬いてました。」
「は?」
そう言った後、何故か牧さんが声を出して笑った。
しばらく落ち着くのを待って、言った後に恥ずかしくなる。
「普通、それ本人に言うかよ。」
「今、言った後後悔しました。でも一人で考えてたら本当に嫌になりそうなんで。」
「あーでも、お前のその顔、最高だわ。」
2人で見つめ合った後、また笑った。思わず自分もつられて笑った。
「スッキリしたよ。」
そう言って俺を見た後、牧さんは立ち上がって後ろ手に手を振った。
優しい人だな。そう思った。
でも、きっと傷つけた。そう思って、座ったまま頭上を見上げた。
「2人だけの事なのに、2人だけじゃないんだよな~。」
別に共感する必要なんてない。だけど性格的に、相手の気持ちが手に取るようにわかる。
罪悪感と、幸福感。
あの時、水原さんが先に牧さんと再会していたら、わからなかった。とさえ思う。
付き合えた事に、運命に感謝した。そう思う事が、一番正しい気がして、きっと運命なんて寸での差で自分が牧さんより魅力的だなんて思い込むのは、勘違いも甚だしくておこがましいんだ。
そう思いにふけっていると休憩室の外を、深津が通り過ぎていくのを見つけた。
窓の外を見て、立ち止まるのが見える。
自分も窓の外を見て、何も見なかったふりをした。
※
東京の夏は、暑い。暑くて夕方も日が落ちなくて、
日当たりの悪い自分のマンションとは違う
ひらけた大きな窓から夜になる瞬間を目に収める。
完全に黒くなった空を見つめて、窓越しに反射した自分の顔を見つめながら
段々ピントが合っていって
窓の向かい側の、コの字に曲がった反対側の建物に目を移した。
その途端、しばらく固まる。
ばちっと建物越しに目が合う。
…いつから私の事、見てたんだろう。
深津先輩が私を窓ごしに見ていた。
声をかけるには遠すぎる。
この距離で見つめ合った事がなくて、本当に同じ建物にいるんだな。と実感するのと同時に、ずっと食い入るように見つめた。
優しい顔をしてたけど、どこか元気がなかった。
私もきっとどこか不安気で、ふにゃっと笑いながら手をふった。
深津先輩が手を振り返して、そのまま窓ガラスに手をそえた。
高校生の時、窓ガラス越しに目が合った日とデジャブする。
あの日は、先に私が深津先輩を見てた。
私の視線に気づいて欲しくてずっと見つめた。
なのに、今は深津先輩が私を見てる。
なんだか、不思議な気分になる。
それだけの事なのに嬉しくて、口をきゅっと結んだ。
遠くで深津先輩が口パクで何か呟く。
当然、何て言ってるかわからなくて首をかしげた。
そのまま熱がこもった目で私を見て、深津先輩が走り出す。
少しびっくりしたまま、目で後を追う。
全力疾走で駆け出していくから、足音がしてくる廊下の先を見つめる。
少しだけ肩で息をして、大好きな人が近づいてくる。
私を真っすぐ見つめたまま、熱を帯びた視線で私を見つめる。
心臓がドキドキして視線が奪われる。
近づいてきて肩を掴まれて、キスされた。
深津先輩って、たまに凄く大胆になる。
呼吸ができなくて吐息が漏れて
頭がボーッとしてくる。
誰かに見られたらとか、恥ずかしいとかも
考えられなくなる位、深津先輩でいっぱいにされる。
唇を離したあと、
「…元気ぴょん?」
昔と同じく声をかけてくる深津先輩が、愛しい。
「…ん。元気だよ…?」ドキドキしながらやっと答える。
眉毛を下げて、私の顔を横目に覗く。
深津先輩の表情が、なんだかどう接していいかわからないって感じで。
目を合わせながら微妙な空気を感じる。
なんでなのかはわからなくて、私は少し緊張する。
緊張する理由なんてないのに、胸がドキドキして好きって気持ちでいっぱいになる。
なんとなくだけど、深津先輩怒ってるのかな。とも思えた。
「かず君は…元気ない?」
絞り出すように聞く。
「うーん。」
深津先輩が急にうなる
「アキちゃんが元気なら...俺は大丈夫ぴょん。」
ためらいながら、なんだかしょぼんとしてて
急にキスしてくる人には見えない。
「ねえ。」
そう、声をかけられていつもの目で見つめられる。
これから凄く悪い事を言うみたいに、言葉をためる。
「これからは、俺が出来る精一杯のことしたいぴょん。」
急に言われた言葉の意味を考えて、なんだか嬉しくなる。
「…うん。」
私が答えた事に満足したみたいに、息を吐いた。
「俺の部屋、きて?」
凄い悪い事を言うみたいに、深津先輩が手を差し出して私が手を握った。
そのまま手を引いて、部屋に連れていかれる。
ドアを開けた途端に強く抱きしめられて、大きな腕に包まれた。
「アキちゃん。」
ただ、名前を呼ばれた。
多分、心臓の音がうるさい。
「誰にも渡したくないぴょん。」
「え…。」
ぎゅっと抱きしめなおされて身動きがとれない。
その言葉だけで、胸がいっぱいになった。
「オフシーズンになったら…一緒に住もう。」
「…うん。」
抱きしめられたまま、そう言われて頷く。
いつも、深津先輩は自分のしたい事を言う時、悪い事を言っているみたいに言う。
「嬉しい。」
そう呟くと、腕をゆるめて私の顔を覗き込む。
そのまま両手で顔を掴むと甘ったるいキスをした。
我慢できないみたいに、唇を吸われてドキドキが止まらない。
「なるべく、一緒にいれるようにするぴょん…。」
何かあったみたいにしゅんとしてるから、少し心配になる。
「…一緒にいられる時間が増えるの、嬉しい。けど…。」
私がキスしながら口ごもって深津先輩がキスするのを辞める。
「一緒に住んで…全部見られて…かず君に嫌われないようにする。」
そう、ガチガチに緊張していうと、ふふっと笑われた。
「いいぴょん。全部、俺に見せろよ。」
いつもの意地悪な顔をしながら優しく笑うから、見惚れた。
そう言った後キスされて、もう何も言えなくなった。
「見たいし、知りたいぴょん。」悲しげに言うから、首を傾げた。
両手で顔を掴んで食べられるように舌をいれられて、声が漏れる。
「アキちゃんは俺のものだぴょん。」
舌をだされて、私がいつものように絡める。
「私は、かず君のものだよ。」
そう言って両手を首に絡めると
「そうだったら、いいんだけど。」
珍しく自信がないから、心配なんだけど愛しくなる。
優しく顔を撫でた。
ちゅっと音をたててキスされて、子供みたいに口を尖らせている。
何か言ってほしそうで、口角を上げた。
「好きだよ。」
そう言うと、眉を下げたまま、またキスしてくる。
激しく舌を絡ませると、履いていたスカートの中をまさぐられて
下着を下までおろされて、足首にかかった。
そのまま指をいれられて、私も我慢ができなくなってくる。
同時に手を伸ばして、深津先輩のトレーニングウェアに手をいれた。
無表情なのに、ぴくっと眉が動く。その反応を見て興奮した。
手を上下に動かす。私で興奮してくれてるのがわかると嬉しい。そう思って少し意地悪く、動かす。
「生意気。」
一言そう言われて、ゾクッとする。動かしていた手を止める。
軽く絡めていた舌を噛まれてそのあと首筋に歯をたてられた。
そのまま、ドンッと壁に体が押し付けられる。
少しいつもより噛む力が強くて、歯型がついちゃうんじゃないかと心配になる。
片手でぎゅっと胸を掴まれて、もう片方の手が私の太ももを持ち上げる。
「えっ。」
持ち上げられたまま、ぎゅっと深津先輩が入ってきて思いっきり一回突かれた。
首に手をまわしてぎゅっと体に絡みつきながら、いきなりいれられると思わなくて声が出た。
「痛い?」そう聞かれて顔の横で首をふる。
「噛まれただけで、濡れすぎ。」
そう言って腰を動かされて、私は喘ぐことしか出来ない。
壁が硬くて背中が冷やされる。真正面は熱くて下を向くと、もっと下半身が熱くなる。
深津先輩が繋がってる部分を見て、わざと音をたてた。
「抜く?」そうわざと聞いてくるから「いい。このまま、して。」望む通りおねだりする。
まわした手で頭を掴みながら、深津先輩が私の太ももを持ち直してまた深く腰を動かした。
「ねえ、かず君…。」眉を寄せて、少し怖い顔で私を見る。
素の深津先輩が見えて、その表情にもドキドキする。
「後ろからして...。」
無表情で私を見て、少し止まる。
「…可愛い。」頭をくしゃっと撫でた後、太ももにまわした手をほどいて降ろした後
肩を掴んで髪の毛を掴まれる。
手を前にまわされて、腰を上げられた。
この瞬間いつも、体格差を感じて緊張する。
後ろからまた思いっきり突き上げられた後、髪をもって後ろを向かせて舌が入ってきた。
激しく打ち付けられて、喘ぎながら深津先輩に応える。
気持ち良すぎて涙が出た。
いつもの泣き顔をじっと見て大きな手でお尻を叩いた後、深津先輩が息を吸う。
気持ちいいんだ。そう思ってさらに興奮して腰をこすりつけた。
腰を持たれて移動して、ベッドに繋がったまま倒れ込む。
足が伸びたまま、そのまま背後で動かれるから立っていた時より深く繋がって息が荒くなる。
髪の毛を掴んでた手が首にまわされて、肘の内側で首に引っ掛けられて絞められた。
腕の血管にドキドキしながら苦しさで声がでてるのか、気持ちがいいのかわからなくなる。
「すんごい締まってる。」耳元でそう言われたから、後者なんだとまわらない頭で気づいた。
私の呼吸を聞いて腕を緩める。
私と指を絡めた後、密着させていた体を離して優しく背中を愛撫した後に
腕を立てながらピストンした。
背後で深津先輩が息を深く吐くから、顔が見たくなる。
手を握られて、肩を掴まれて仰向けにされる。
「顔、みたい。」そう言って私の顔に両手を添えて唇を押し付ける甘ったるいキスをした。
あんなに苦しい事して気持ちいい事するくせに、深津先輩はいつも急に甘える。
だから可愛くて、なんでも許してしまう。
甘ったるいキスをしながら舌で絡めながら、私は足を深津先輩の腰あたりで絡めて腰を動かした。
「…アキちゃん。ずっとこうしたかった?」
「…うん。こうしたかった。」
そう言ってまた呼吸が乱れて、深津先輩が私を深く抱きしめる。
攻められてるのに、何かを確かめてるようで私は何も言わず抱きしめなおした。
2人で住む家は大きな窓がついてる家がいい。
家に1人でいる時は、帰ってくる深津先輩をはやく見つけられるように。