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【インタビュー】松居大悟監督に聞くー監督人生のお話ー

今年の東京国際映画祭のコンペティション部門の作品『ちょっと思い出しただけ』が11/2に世界初上映されました👏

今回から2回に渡って、この作品の監督である松居大悟監督へのインタビューをお届けします🍓
まず第1回は松居大悟監督自身について。映画を好きになったきっかけや他の芸術との関わりについて聞いてみました。

ーーまず映画を好きになったきっかけとか、映画監督になろうと思ったきっかけについて教えてください。

松居大悟監督(以外、松居監督):僕は福岡出身なんですけど、中学〜高校生くらいのときに、母親と舞台やミニシアターによく行ってたんです。中学生くらいから兄貴があんまりそういうものに興味を感じなくなったので、母が僕にいつも「福岡のミニシアター(KBCシネマ)観に行こうよ」って言って、ヨーロッパの映画とか当時の山下敦弘さんの映画とかを観てました。

ミニシアターで観る映画はなんかテレビや大きい映画館でやる映画とはまた違う感覚があったんですよね。自分に近い感覚を感じて、そして「こんなこと映画で表現していいのか」っていうちょっと危険なこととかなんかそういうものを観たときの体験が凄く自分のなかに残っていて、それで大学に入って演劇とか自主映画とか、その世界にちょっと関わりたいと思ったのかもしれないです。

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ーー大学時代に演劇や自主映画の制作に携わっていたとおっしゃっていましたが、その経験はその後の進路になにか影響を与えましたか?

松居監督:普通に就活したんですよ。やっぱりエンターテイメントに関わる仕事がしたいって思ってテレビ局とか受けたんですけど、なんか「自己PRを1分間してください」って言われたときなんにも言えなかったんです。それまでやりたいことしてただけだから、自分のこと話すの苦手で、全然うまく喋れなくて、テレビ局全部落ちちゃいましたね。

そうなると劇団作るしかないと思って、演劇ずっとやってきてた経験もあるから実際に劇団を作りました。それに加えて、僕自身そういう視覚的な世界を作るのが好きだったんです。まあ舞台だとずっと定点で人が出入りしたりする画っていうのを作れるけど、自主映画で映像だったらよりアングルに入れるから、もっと僕的に世界を作れるじゃないですか。だからこっそり自主映画も撮ってましたね。それまで映画監督になりたいっていうのがなかったんですけど、そういう経験を通して芸術と関わりたいって思いながらやっていたら、映画に関わらしてもらえるようになりました。

ーー視覚的に表現したいというのがありましたが、2009年のNHK連続ドラマ『ふたつのスピカ』では最年少で連続ドラマの脚本を書いたり、演劇を学んで俳優として映画に出たりしてますよね。そういう意味でそれぞれの経験が自分の中で一体となって、芸術として昇華しているような印象を受けたのですが、その点はどのように考えていますか?

松居監督:役者で参加するときはその人の現場に参加したいっていう思いがあって、脚本はいわば0から1をつくる作業だから結構ストレスはかかるけど面白くて……。結局「いい映画を作りたい」、「いい演劇を作りたい」ってことよりもいろんな形で芸術に関わりたいんですよね。だからできるだけ境界線なく作りたいと思います。

やっぱり演劇やっている人は映画観ないし、逆に映画やっている人は演劇にそんなに興味ないって人多いじゃないですか。全部が等しくて美しくて、そして素晴らしい芸術だから自分はそこに参加しながら、総合芸術と言われているものを作れたらいいなと思っています。

ーー監督ご自身が35歳(取材当時。現在は36歳)で、かなりお若いなという印象を受けました。その若さを意識して作品作りをすることはありますか?

僕、デビューしてから来年で10年になるんですよ。まあ本数は同世代の人よりは撮っている気がするので、5,6年前はすっごい若手を意識して撮ってました。おじさんたちが撮る青春映画は青春じゃないって思いながら(笑)。撮る人がおじさんで作品を批評する人たちもおじさんだから「リアルだ」って言うけど、それはリアルじゃないんですよ、若い人からすると。

だから僕は本当に若者たちがリアルだと思う感覚を誠実にやろうと思ってました。例えば花火を観に行くことが目的じゃなくて、花火をSNSにあげていいねされることが目的だみたいな、なんかそういう嬉しさとか楽しいとか興奮するとかの感情の力点がなんかちょっと違うのが今の若い子の感覚だと思うので。

20代のときはすごく意識的に、本当の若者のための映画を作りたいって思っていたので10代が主人公の作品を撮ってました。少年少女たちの話はすごい好きで、でもその時に日本映画に存在してないものを作ることをすごく気にしていましたね。僕は比較的世代としては若い方だから、なかったことにされてる人間ドラマがいっぱいあるような気がして、そこを僕は撮りたいなっていうのはすごくあります。

ーー作品で描く年代が少年少女の10代から、20~30代になってきていると思うんですけど、年代が変わることで描き方とか撮り方とかも変わってきましたか?

松居監督:変わってきたと思います。特に『くれなずめ』より前の『アイスと雨音』は、基本的に主人公たちと一緒に動いて撮ってました。それこそ「じゃあ手持ちで動いて、行くとこまで行こうぜ」みたいな、気持ちがあったんです。逆に『ちょっと思い出しただけ』はできるだけカメラは動かさず定点観測のような形で、人物を主観的ではなく、客観的に観るだったり俯瞰して観るだったり、という点で、お客さんを信用して作りました。

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松居監督とタクミとトモカ

ーーー第2回に続くーーー

<プロフィール>
松居大悟さん(Daigo Matsui)
1985年生まれ、福岡県出身。慶応義塾大学に在学中、演劇サークルに所属し、2006年に演劇ユニット「ゴジゲン」を結成。2007年から自主映画を発表し、『ちょうどいい幸せ』(10)は沖縄映像祭2010でグランプリを受賞。2012年、のりつけ雅春の人気漫画を映画化した『アフロ田中』で商業映画監督デビュー。脚本家としても活動し、NHK連続テレビ小説『ふたつのスピカ』(2009)を手がけた。また俳優や舞台の演出など芸術の境界を超えて幅広く活動している。近年は監督として『くれなずめ』や『ちょっと思い出しただけ』など意欲的に作品を発表している。ジム・ジャームッシュ監督作品の中で、一番好きな作品は『パターソン』

(取材/執筆・トモカ、タクミ)

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