吾輩は100万回生きた猫である #19
バスティは、アクティウムの海戦が迫る中、クレオパトラの身を案じていた。クレオパトラが戦いに向かった後も、彼は彼女の安全を祈るばかりだった。猫として特別な直感を持っているバスティは、何となく悪い予感がすることを感じ取っていた。
エジプトの王宮では、クレオパトラの留守を預かり、国政を取り仕切っていた者たちが、戦況の報告を待ちわびていた。バスティもまた、彼らの会議に出席し、戦況に関する情報を耳にしていた。猫である彼は言葉を話すことはできないが、人々の様子や表情から、緊張が高まっていることを察知していた。
ある日、バスティは、クレオパトラが大切にしていた部屋で、彼女の香りに包まれながらじっと考えていた。その時、彼の心に浮かんだのは、クレオパトラと共に過ごした幸せな日々の思い出であった。彼女の優しい笑顔や、時に厳しくも公正な態度が、国民たちの心をつかんでいたことを、バスティは誇りに思っていた。
しかし、そのような日常が戻ってくるかどうかについて、バスティは不安を抱えていた。彼は、王宮の広い窓から空を見上げ、星に願いをかけていた。「どうか、クレオパトラ様が無事に帰ってこられますように」という切なる願いを、彼は静かに繰り返していた。
やがて、アクティウムの海戦の結果が伝えられる日が訪れる。国民たちも、王宮の者たちも、クレオパトラとアントニウスの無事な帰還を祈りながら、その報せを待ち構えていた。その中で、バスティは、彼の予感が的中することを心の底から恐れていた。しかし彼は、どんな結果が待ち受けていようとも、クレオパトラの忠実な友であり続けることを心に決めていた。