シャニマス5周年振り返りPVに想いを寄せる
先日行われた『シャニマス』5thライブ“If I_wings.”
そのDay2で流れたシャニマス5周年振り返りPVに、5年間の重みが押し寄せて涙した者も少なくないだろう。
そしてライブ翌日、そのPVがアイマスチャンネルにアップロードされた。配信アーカイブで見納めだと思っていた自分はとても歓喜し、ここで筆を執るに至った次第である。
この素晴らしいPVが多くの人の目に触れることへの感謝を込めて。
はじめに
5thライブには、その一カ月ほど前に開催されたアイマス合同ライブから興味を持って見に来てくれた新規もいたかもしれない。そんな方々は、ライブの端々の演出や朗読劇、そしてこのPVに至るまで、シャニマスがシナリオの文脈をいかに大事にしているかが伝わっただろう。
シャニマスのシナリオは素晴らしい。
しかし膨大な文量のそれは、複雑に絡み合ってその世界を構成している。運営が伝えたい283プロのテーマを、多角的に丁寧に描くために。
半年前の時点で、既に文庫本40巻分。このPV内では、そんな数多くのシャニマスのゲーム内コミュから、粒選りのセリフが流れていく。
5thライブやこのPVでシャニマスに興味を持ってくれた人には、さらにその中のコミュ(シナリオ)への興味を持っていただけたら。
シャニマスは追っているけど知らないセリフがいくつもあった人には、次に読むコミュへの導線になれたら。
そして私と同じくこのPVで頬を濡らした同志には、5年の歩みを共に振り返り想いを馳せてもらえたら、ありがたい。
(※触れられたコミュ内容の核心までネタバレする意図はないですが、それらを踏むことも憚られる方は、ここで引き返していただけると幸いです)
あの日 出会った空の色
冒頭から連続で空の映像が流れるが、すべてpSSR演出の一部である。シャニマスはこれまで様々な空の色を描いてきた。どれも単品で見ても非常に美しい。そしてその空をバックに紡がれるのは、いずれもシャイノグラフィの歌詞を意識した詩句である。
ねぇ 最初の色 憶えている?
それぞれのユニットの最初のイベントコミュ。それらのセリフが、報酬サポートカードのイラストと共に流れていく。また、全員の初恒常pSSRのイラストも間に挟まるが、引用の抜粋はここでは割愛する。
♪ ヒカリのdestination
2018年、シャニマスのリリースの2日後から開催された初のイベントコミュ。メインコンテンツであるW.I.N.G.の舞台裏と、初対面からユニット結成時の空気感が丁寧に描かれている。不器用な灯織が、口下手ながらも想いを伝えようと成長していく姿がこの話の主軸にあり、だからこのセリフは最初の一歩と言えるかもしれない。
シャニマス2つ目のイベコミュは、アンティーカの結成コミュであった。デビューに向けて集められた5人が個性の意味を考え、対話の末にゴシックという題材に至るまでの道程を描く。彼女たちは自らの選択でそのコンセプトを手に入れ、そしてシャニPによりユニット名が与えられた。
3つ目に据えられた放クラのイベコミュは趣向を変え、結成からやや時間を経た先での疑似合宿ロケ話。紹介記事を作りたいシャニPの思惑でカメラ係を任命された果穂により、彼女の目に映るメンバーの魅力が描かれる。そしてなぜ果穂が最年少ながらもこのユニットのセンターなのか、その答えがこのコミュには詰まっていた。
初期ユニット最後のイベコミュは、アルストロメリアのもとに舞い込んだタウン誌のロケ取材。彼女たちは譲り合いの連鎖の中で、何が自分達をアルストロメリアたらしめているのか、その答えを見つけるに至った。この時に芽吹いた「3人でアルストロメリア」という意識が花を咲かせるのはもう少し先の話。
シャニマス一周年で追加されたユニット、ストレイライト。センター争いを軸に、価値観の違う3人が互いの意見をぶつけ合い葛藤しながら、最後はひとつのユニットとして志を重ねる姿が描かれる。今までの16人からはみ出た、“わかりやすくいい子”ではない彼女たちの行く末から目が離せない。
シャニマス二周年で追加されたノクチルのイベコミュは、今までと余りにも毛色の違うものだった。波乱の初仕事を経て描かれる、成りたい自分の無い透明な幼馴染4人が繰り広げる等身大の質感。まるでアイドル業へのアンチテーゼともとれるシナリオに、当時驚かされた者も多かっただろう。
7つ目の色として最後に追加されたユニットであるシーズ。アイドルに求められるものとは何なのか、何が彼女たちにとっての幸福なのか、それらがユニット内のディスコミュニケーションを下地に、痛々しくも誠実に描かれる。そしてそれは、283プロダクションの周辺人物も巻き込んだ物語へと波及していく。
283プロダクションで過ごす鮮やかな毎日
♪ Color Days
曲が変わり、明るい雰囲気から相応の思い出が連打される。またここでは283プロダクションへの客観評たる美琴のセリフを皮切りに、ユニットの枠を超えた事務所内交流(いわゆる越境)も多く抜粋されている。
他所の事務所から移籍した美琴にとって、283プロダクションはさぞ異質に感じたに違いない。このセリフこそ朝コミュのものだが、美琴はこの趣旨の言葉を【PiCNiC BASKET!】や【ROUNDLY】でも漏らしている。【アイムベリーベリーソーリー】ではその輪郭を“流儀“と表現していたが、いずれにせよ居心地は悪くなさそうである。
#283をひろげよう――それはまさに『Spread the Wings!!』。これ以前のシャニマスは彼女らを取り巻く人々からどう見られているかに焦点が合っていたが、ここから先はさらに外の人々にどうやって自分たちを届かせるかが描かれていく。これはその橋渡しとなるようなエピソードとなった。
ボランティアの読み聞かせ会に向け、絵本を作る霧子を軸に紡がれるアンティーカのイベコミュ。絵本の登場人物の姿に重ねる形で、ユニットメンバーの魅力が描かれてゆく。アイドル業とは関係のない仕事に、それでも彼女たちは誠心誠意打ち込むのであった。
4年目から追加が始まった、越境サポートカードのうちの一枚。体育会系の放クラ、その中でもその性質が顕著な夏葉。文化系のアルストロメリア、その中でも特にインドア派な甜花の交流が描かれる。アイマスシリーズの中でも越境表現に慎重なシャニマスでは、貴重な絡みなのかもしれない。
実は映し出されているイラストのコミュとセリフのコミュが著しく離れている例。しかし凛世の言わんとしている事はどこでだって通用する。イラストの方は、ユニットの枠から外れたメンバーで動く越境コミュである【サマー・ミーツ・ワンダーランド】のもので、みんな他ユニットに触れることによって自分のユニットの色を再認識することとなっただろう。
映し出されるイラストは【きよしこの夜、プレゼン・フォー・ユー!】から始まるが、セリフは両方【[MAKING]スノー・マジック!】のもの。この2つの越境コミュには連続性があり、物語の中核にいる即席ユニット、チームまりあ(あさひ/凛世/摩美々)のやり取りが抜粋されている。ひとつ前のセリフが凛世なのも意図的な並びだろう。彼女ら3人は、即席ユニットの中で最も合わない組み合わせであるように思われたが、その独特の距離感が丁寧に描かれ、また越境する意義そのものにも深みが増す内容であった。
【PiCNiC BASKET!】のレクリエーションで息を合わせ楽しそうにする同じユニットの2人は、如何にしてその仲を深めたのか。そんな疑問に答えてくれるカードが【茜色セレンディピティ】である。
ここに来て突然の限定カードその①。しかしその内容は単純明快で、このキャッチーな文句すらカードに書かれており、しかもコミュ中にこのセリフを言う際はテキストウィンドウを出さずそのままイラストのテロップに頼る始末。だからこそこのカードを持っていない人にも、良さを共有しやすいと考え抜粋されたのだろう。
Color Daysパートの最後を締めくくるのは、一年目の冬にして初めての本格越境コミュ。来る1stライブを祝うクリスマスパーティにおいて、真乃は事務所の代表として乾杯の音頭を任される。彼女の頬を伝う冷や汗。それが持つ本当の意味はこの時点では未だ明かされないが、この頃からシャニマスのコミュは少しずつそのメッセージ性を強めていく。
ここではセリフの【Catch the shiny tail】に焦点を当てるが、これは前述の【オペレーション・サンタ!】や1stライブにおいて、真乃が“真ん中”を任命されたことによる重圧と向き合う物語であり、そしてシャニマスの世界がアイドルをどう捉えているのか、その軸が示される大切なコミュである。
そして真乃の問いはそのままに、PVは次のパートへと進んでいく――
時には想いが複雑にこんがらがって
♪149,600,000km(アレンジ?)
不穏なゲーム内BGMと共に、雨音が降り注ぐ。283プロの歩んできた道のりは決して輝かしいものばかりではなかった。またこのパート以降はイラストとセリフ内容の場面が揃っていない例が頻発するため、セリフ内容にだけフォーカスしていく。
5年に渡り紡がれてきたシャニマスのコミュを通してみても、名作と名高いシナリオ【薄桃色にこんがらがって】で甘奈が零したセリフ。舞い込んだとある仕事に3人の想いがもつれあい、やがて彼女たちは立ち止まりかけてしまう。「3人でアルストロメリア」――その本当の意味を彼女たちは知ろうとしていた。
【many screens】は、放クラに落語『死神』の朗読企画の依頼が来るイベコミュである。死神役を楽しんで演じていた果穂の下に一通のファンレターが届いたことから、その想いが揺らいでしまう。果穂にとってのヒーローとは、役を演じることの責任とは。放クラは知恵と想いを寄せ合い、演目の中にその答えを込める。
再びシーズ最初のイベコミュ【OO-ct. ──ノー・カラット】のセリフ。ユニットとしての対話が足りていない2人が、少しずつだが言葉を交わす。美琴の端的なその言葉に込められた想いはきっと今でも変っていないが、しかし2人が想いを重ねるのにはまだまだ時間が要るのかもしれない。
アンティーカのファン感謝祭もまた、ユニット内の対話にフォーカスされたプロデュースコミュ。些細な心のすれ違いも、言葉で伝えなければ相手には届かない。それは距離が近い筈のユニット内メンバーとて例外ではないのだ。シャニマスはいつだって、言葉で伝えることの尊さを描いている。
再びストレイライト最初のイベコミュ【Straylight.run()】のセリフ。シャニPの前以外では”ふゆ”でいることを完璧に通そうとしてきた冬優子。彼女がどういう過程を経てユニットの2人にも”冬優子”の自分を曝け出そうと想えたのか、何に怒り何に涙を流すのかが描かれている。
限定カードその②、【ギンコ・ビローバ】True Endのセリフ。その衝撃的なラストは余りにも有名なため抜粋されたのだろう。歪な動機で283プロに入った彼女が、アイドルという生業とどう向き合うのか。このセリフが誰に向けられたものなのかも含めて是非読んで欲しいコミュである。
ここで再び【Catch the shiny tail】、その選択肢セリフともなったシャニPの言葉。これはシャニマスがアイドルをプロデュースする上で最も大切にしていることであり、いつだって忘れてはならない想いが込められている。
♪ トライアングル(off vocal)
それらのセリフは、【Catch the shiny tail】内でめぐると灯織が、悩み事を打ち明けた真乃に対して贈った言葉であった。そしてここを”真ん中”に、283プロはその翼を大きく広げて羽ばたいていく。たくさんの心が隣り合う場所で、一人でも多くの誰かに寄り添えるように。
それでも彼女たちは羽ばたき続ける
♪ シャイノグラフィ
このパートから一転攻勢、悩みを乗り越えて宣誓するようなアイドルたちのセリフがハイテンポに連なっていく。時系列的に以前より一段進んだものも採用され、彼女たちの精神的な成長を感じられる。
アイドルたちがユニットから離れ自身を見つめなおすG.R.A.D.シナリオ、その中で智代子は自身のファンに対し公約を掲げる。自分の個性や求められるものに向き合い、どういった想いでアイドルを続けるのか。彼女はその精神性に根差した力強い言葉で教えてくれた。
ユニット名をそのまま冠するイベコミュ【The Straylight】。ストレイライトイベでは3作目に位置するこのシナリオで、多くの壁を乗り越え彼女たちは迷いを振り払う。お馴染みの掛け声も内容こそ変わらないが、口にする度にその意味が力強く成長していく。非常にカタルシスの得られる物語になっており、映し出されたpSSRが並ぶ演出は同コミュ内でも見ることができる。
プロデュースシナリオであるファン感謝祭はユニット内で共通のシナリオとなっているが、始めと終わりにアイドル個別のコミュがある。共通コミュの中で、海を背にアンティーカはひとつの壁を乗り越え、ステージ上で不思議な掛け合いをした。このセリフは恋鐘固有の終わりのコミュからの引用であり、恋鐘はそんな仲間たちに想いを馳せる。
再びノクチル最初のイベコミュ【天塵】のセリフ。幼馴染4人の関係性が丁寧に描かれた当コミュの中で、小糸の抱えるコンプレックスとそれでも強がってみんなを追いかける姿も描かれた。彼女たちの背中を押す原動力は、彼女たちにしかわからない。
【YOUR/MY Love letter】は一年前に開催されたアルストロメリアのイベントコミュであり、そのシナリオ構成に数多くの人が度肝を抜かれた。描きたいテーマを届けるためなら、シャニマスはどんな手段も用いるであろうことを思い知らされた。また、あの世界を包む祈りの美しさを感じさせられる、懐の深いコミュであった。
【Catch the shiny tail】を経たイルミネの3つ目のイベント、【Star n dew by me】。このコミュでは、学園祭にゲスト出演して企画をこなす3人の、真剣ながらもドタバタコメディーチックな姿を見ることができる。しかしそのエンディングで交わされた言葉は、それまでの雰囲気を一変させるものだった。
にちかの最初のpSSR【♡まっクろはムウサぎ♡】そのTureEndのセリフ。シャニPに心を許さないにちかの姿を丁寧に描写した上で、これはそのラストにあたる丘上のシーン。にちかの根っこにあるものが口から零れ落ちた時、先にそれを叫んだのはシャニPの方だった。
最初のプロデュースシナリオであり、彼女たちにとって最初のエピソードであるW.I.N.G.編。摩美々はリリース時から実装されていたアイドルだが、その始めと終わりで最も印象が変わったと名高いのが彼女だった。
凛世のpSSR【水色感情】のTrueEndのセリフ。シャニPから貰った言葉を反芻し、ひとりで大きな声を上げる彼女は今までにない一面。難解な彼女の内に秘めたる情熱が爆発した、そんなコミュであった。
再び【薄桃色にこんがらがって】のセリフ。それは決してハッピーエンドとは言えない終わりを迎えたが、アルストロメリアの一人ひとりにとってかけがえのない時間となった。
現時点では最大数の登場人物を描いているイベコミュ【明るい部屋】は、事務員のはづきを軸に回っていくシナリオ。群像劇チックに動く283のアイドルたちは気付かないが、物語はその部屋を空ける意味の真相に迫っていく。そしてはづきもまた283プロの一員で、あの世界で幸せの意味を考えている一人であるのだと思い知らされた。
PVにこのセリフが抜粋された意味についても、考えずにはいられない。
羽ばたこう これからも 私色の羽で
最後のセリフラッシュパート。連なるそれはどことなくひとつの文章にも感じられ、我々プロデューサーに贈るような言葉の構成になっている。
283プロ近隣の商店街を舞台としたイベコミュ【階段の先の君へ】において、寮生で町の人々との交流が深かった樹里を中心に物語が進んでいく。自分が駆け出しの頃から支えてくれたこの町、その恩返しの想いから彼女の成りたいアイドル像が定まってくのだった。
美琴は、自分がアイドルでいれる環境が当たり前でないことを知っている。そんな彼女はW.I.N.G.シナリオの最後に、それでも当たり前のように応援してくれるシャニPにお礼の言葉を伝えるのだった。
Landing Pointは4つ目のプロデュースコミュであり、各アイドルのかなり折り入った深い話が描かれる。AIに霧子の人格を吹き込もうとする企画の中で、周囲が自身のことを捉える姿の多様性に気付き、”自分”とは何なのかという哲学的な問いに迫っていく。
掴みどころのない、ミステリアスな雰囲気を持つアイドルの透。何も考えていないようにも、悩みなんてないようにも見えていた彼女。そんな透も実は等身大の少女であり、その内に秘めたものの熱さと儚さの一端を見せてくれるのが、このG.R.A.D.シナリオであった。
アルストロメリアでない甘奈、それがG.R.A.D.シナリオでは試される。多くの武器を持ってここまでアイドル業をそつなくこなしてきたと思われていた彼女の姿は、しかしとても弱々しく怯えていた。そんな彼女の背中を押すために、シャニPは丁寧に言葉を交わしていく。
W.I.N.G.の最後に冬優子がシャニPと交わした約束。それから時間の経った先のLanding Pointシナリオで、彼女はその驕りによって失敗を冒してしまう。苦難の先でシャニPと共に現在位置を再確認し、そして2人は初心を胸に誓いを立てるのだった。
最後を飾るのは、やはり【Catch the shiny tail】の真乃のセリフ。彼女の頑張りが、その小さな羽ばたきが少しずつ隣を巻き込んでいき、いつか大きな羽ばたきになるに違いない。
おわりに
シャニマスはこの5年間で膨大な量の物語を私たちに提供してきた。しかしそこにこそ運営が私たちに届けたい本懐が込められており、このコンテンツの魅力が詰まっていると、私は信じて疑わない。そしてこのPVはもちろんのこと、ライブそのものの構成だって、コミュに触れているほど楽しめることは既に多くの人が感じているだろう。
コミュは多く、読むのにはとても時間がかかる。
今読めるコミュを後回しにしてしまうことだって、私にもしばしばある。
だから私だって全てのコミュに目を通せている訳ではないが、それでもアイドルたちの物語を少しでも多く、大切にしていきたいと思っている。そしてそんな同志が増えてくれたら、私は嬉しい。
(格好付かない追記になりますが、コミュの紹介文に多少雑な説明があってもご容赦ください。流石にすべてのコミュを読み直す時間は無かったため)
もしコミュを読む順番や方法に戸惑っている新規の方はこちらもどうぞ。
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