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「HINOMARU」騒動を巡り、こみ上げるこの気持ちはなに

ライブ中に放った「日本が好きで何が悪い!」というセリフがセンセーショナルなだけに、それを見出しに賛否両論の記事が書かれている。話題が話題を呼ぶRADWIMPSの新曲「HINOMARU」。

リリース後、楽曲に抗議するデモまで企画され、ボーカルの野田洋次郎さんは「傷ついた人がいたならごめんなさい」と謝罪コメントを出した。その後のライブでは渦中の曲が披露され、会場は熱気に包まれたようだ。一部始終はtogetterにまとめられている。

事が大きくなるにつれて違和感ばかりが募る。野田さんは謝罪コメントの冒頭で言った、「戦争が嫌いです。暴力が嫌いです」と。争いを嫌う人(多くの人がそうだ)が、自分たちの価値観を脅かす見えない相手に対抗しようと、一つのスローガンの元に熱を帯びる。これは今回の野田さんに限らず、往々にして生じる事であり、僕たちは同じような光景をいろんな所で目にしている。「日本が好きで何が悪い!」と叫んでしまえば、日本が好きだと言うだけでケチをつけるのはけしからんと言っているように取られてしまう。私たち(日本が好き)とそうではない人たち(日本が好きではない)という二項対立を自ら作り出してしまった一言だと思う。もし「HINOMARU」が描き出す日本がそのような価値観を前提に書かれたものならば、それは排外的ニュアンスを含みはしないだろうか。日々言葉を紡いできたはずの野田さんにしては乱雑な発言だった。

それに「どんな国のどんな人種の人たちとも手を取り合いたい」「時代に逆行するのではなく前進したい」というコメント冒頭にあった言葉。彼のようにコスモポリタンな平和主義を掲げる人が、極めてナショナルな表現を多用することで「国」を表現したのはなぜか。それは時代の前進を目指しているのだろうか。コメントの内容と曲の内容、そしてライブで放った一言。それぞれが放つメッセージがちぐはぐで、余計ややこしいことになってしまっているように思う。この国で「この国」を描くことはなぜこうも難しいのか。そこを丁寧に考えなければならない。

#radwimps #hinomaru #音楽 #野田洋次郎 #ナショナリズム #思想

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