LayerZero:マルチチェーンインターオペレータビリティの革命的PJを詳しく見てみる記
お久しぶりです、てとりす@etrisです。今回は、以前ちょっとだけ紹介したLayerZeroをも少し詳しく見ていこうという試みです。
本題に移る前に、LayerZeroが取り組む「ブロックチェーン業界の課題」について見てみましょう。それは流動性のサイロ化です。この課題は前回バブルの2018年以前から指摘されていました。
■ブロックチェーン業界に横たわる課題:流動性のサイロ化
"サイロ化"と表現すると小難しい印象を受けますが、AチェーンのシステムがBチェーンで使えないということです。例を挙げると、ETH⇔SOLの移動を面倒に感じたり、ETHだけでなくAVAXやSOLのDeFiも使えるともっと効率的なマネーレゴが組めるのに…と考えたことがあると思います。
今後のトレンドとして有望視されてるL2も、全体のTVLが低い上に、さらにOptimismとArbitrumでプールが分離されているため大口のDeFierにとって流動性不足で参入しにくい状態になっています。今後、本格稼働をするとまたTVLは増えていくと思いますが、それでも各L2チェーンのサイロ化は課題として残りそうです。
この流動性のサイロ化を深いレベル(まさにレイヤーゼロ層)で解消することに取り組むプロジェクトこそLayerZeroなのです。
■LayerZeroの概要:L0として各チェーンにプールされたコインを単一に扱える革新性
LayerZeroの最も革新的な点はL0として各チェーンのプールを単一に扱えることです。LayerZeroをざっと把握したいなら、この一文だけで充分だと思います。
次の図はCEX(一般的な取引所)とDEX(分散型取引所)、LayerZero上に構築された取引所の比較です。
LayerZeroが理想通りに完成するとインパクトは非常に大きいです。
レンディングやDEXが、サイロ化されたチェーン内プールの量を気にすることなく使えるので、大口もDeFiに積極参加しやすくなり、各dAppsを組み合わせてAPYを増やすマネーレゴも滑らかになります。これが実現すると現状のDeFiが一段進化すると見ています。
そして、このL0を実現するLayerZeroの実体は"ULNを実行するオンチェーンエンドポイント"であり、オラクルとリレイヤーで低コスト&高セキリュティを確保します。
「ULN」「オラクル」「リレイヤー」初見だと何のことか分からないはずです。これらのコアとなる用語を抑えつつ、次に技術面を見ていきましょう。
■技術:各チェーンのアプリにLayerZeroのULNを実行するエンドポイントを設置することでL0を実現
まずはLayerZeroのコアとなる技術を見ていきましょう。それが先ほども挙げた「ULN」「オラクル」「リレイヤー」です。
・ULN(ウルトラライトノード):オンチェーン上でマルチチェーン間メッセージの検証を行います。ETH上のライトノードが高コストである点に対し、ULNはオラクルとリレイヤーを使うことでセキリュティを確保しつつコストを抑える事ができます。
・オラクル:あるチェーンからブロックヘッダを読み取り、別のチェーンに送信するメカニズムを提供するサードパーティのサービスです。代表的なものはChainLinkでLayerZeroでもChainLinkを採用しています。
・リレイヤー:オラクルに似た機能を持つオフチェーンサービスですが、ブロックヘッダを取得する代わりに、指定されたトランザクションの証明を取得します。
さて、これでLayerZeroを理解するための道具は揃いました。それではLayerZeroのホワイトペーパーに記載されちているアーキテクチャを見てみましょう。細かく書いてある文字は一旦無視してください。上の用語だけ大体理解できます。
頭が痛くなりそうなアーキテクチャ(図)ですが、実は書いていることは単純で、各チェーンのアプリ内に差し込んだレイヤーゼロエンドポイント(=ULN)同士でコインを通信するというだけです。
ところで、LayerZeroがわざわざ似たようなオラクルとリレイヤーの2つの役割をアーキテクチャに採用していることには、実はセキリュティ上の大きな理由があります。
このことを表しているのがmediumに掲載されていたLayerZeroとミドルチェーンのセキリュティモデルの比較です。
まず、「独立した」オラクルとリレイヤーを設置することで、オラクル単体の一枚岩のセキリュティよりも層を厚くしています。「独立」という点もポイントで、オラクル・リレイヤー間の共謀を防ぐ仕組みにしています。
さらに、悪意者がChainLinkのDON(分散型オラクルネットワーク)を突破しリレイヤーもクラッキングした場合でも、影響を受けるのはシステムの一部にとどまります。
まとめると、LayerZero技術は、アプリ内のULN同士で通信することでレイヤーゼロを実現(各チェーンのプールに存在するコインを単一プールとして扱う)し、さらにオラクルとリレイヤーを活用することで低コストかつ高セキリュティを実現しています。
■Stargate:LayerZero上に構築されたネイティブアセットブリッジ
LayerZero Labチームから発表されたStargateはLayerZero上に構築されたDeFiです。
テスト版の公開がもうすぐで詳しい機能は不明ですが、ウェブサイトを見たところ「Stake」「Transfer」「farming」「pool」のタブがありました。
LayerZeroの構想が理想論ではなく、現時点ですでに実用化段階まで落とし込めている点はかなり期待が持てます。
■まとめ:LayerZeroが理想通りに動いたときはDeFiユーザー・開発者双方ともに衝撃が走るはず
LayerZeroは、低コスト&高セキリュティで各チェーン間のプールを単一に扱うことが出来る点が革新的です。
理想通りに実現した際には、DeFiユーザーが単一化プールの恩恵を受けることは想像に難くないですが、開発者視点で見ても、マルチチェーンのエンドポイントが1つになるため開発が効率化されるはずです。
LayerZeroの開発は実用化段階まで進んでおり、Stargateのテスト版も近日公開される予定なので、積極的に触ってみようと思います。今から非常に楽しみです。