見出し画像

我が家の電球が20年間点灯し続けた理由

常識を疑え、という話。我が家の玄関灯は、およそ20年前に家を建てた当時から点けっぱなしだった。光センサーと人感センサーがあり夜になると自動的に点灯するので、まったくの放置状態だ。その20年の間に室内の白熱電球や蛍光灯は何度も取り換え、今では全部LED電球になってしまっている。最近になり、とうとうその白熱電球も切れてしまったのだが、なぜ玄関灯の白熱電球だけが20年もの間点灯し続けたのか謎だった。

白熱電球は一般的に1000時間の寿命だが、実はこの寿命は1924年に結ばれた「ポイボス・カルテル」によって制限されたものなのだ。アメリカと欧州の複数の国の有力企業によってカルテルが結ばれ、その当時1500時間~2500時間あった平均寿命の白熱電球を、1000時間を超えないように規制を設けたのだ。このカルテルによって、メーカーは売上と利益を大きく伸ばしたのだ。
ところが、カルテルに入っていない日本の小さな企業が、カルテル企業の数分の1という価格で販売して世界的に大ヒット商品となったため、1940年にこのカルテルは廃止されてしまったという経緯がある。しかしなぜか、今でも白熱電球の「平均定格寿命」は1000時間のままとなっている。

実は、アメリカのカリフォルニア州消防局に、1901年の点灯から120年間光り続ける電球が存在している。この「100年電球」は、点灯期間の世界最長を記録し続けており、ギネス世界記録にも認定されているのだ。当初は60ワットの灯りだったようだが、今では4ワット程度の薄明りとなっている。この白熱電球の長寿の決定的理由は解明されていないのだが、100年間電源を切ったことがほとんどないそうだ。

現在主流となっているLED電球は、白熱電球より省エネで長寿命ということで、今では国内で白熱電球は製造されていない。白熱電球は短命だというのが、社会常識になっている。しかし我が家のLED電球には、わずか1年で点灯しなくなったものもある。市販されているLED電球は、安物でも1万時間の寿命だとパッケージに書いてある。しかし24時間365日の間、点灯し続けても8760時間だ。このすぐ切れたLED電球は、廊下に付けていたので、点灯時間はせいぜい300時間程度だろう。つまり、寿命のわずか0.03%で切れたことになる。いくら中国製の安物とはいえ、ひどいもんだ。

アメリカ合衆国エネルギー省(DOE)の調査によると、LED電球の故障原因がLEDチップにあったのは全体の10%に過ぎず、59%はLEDドライバの故障だということが判明している。このLEDドライバのような半導体や電解コンデンサは熱に弱く、発熱するLEDチップと同じ基盤に実装されていると、製品寿命が短いのだ。つまり、これらを考慮したLED電球なら、2万5千時間の寿命になるそうだ。1日12時間点灯させたとすると、およそ5.7年程度。これでも我が家の玄関灯の寿命の半分だ。では、なぜ白熱電球を使っている玄関灯の方が、寿命が長かったのだろうか。

私が考える長寿の原因は2つある。一つは電源オンオフの回数が非常に少なかったこと、もう一つは電源オンオフのときの電流が制御されていたことだ。消防署の「100年電球」は、電球が点灯されてから電源をほとんどオフにしていない。白熱電球は、LED電球と異なり、中身は炭素のフィラメントだけというシンプルな構造だ。安定した一定の電流が流れていると問題ないが、電流が間欠的流れたり止まったりすると、その突入電流がフィラメントにインパクトを与えるのだろう。しかも我が家の玄関灯は点灯するとき、パッと点かずにジワジワと数秒かけて明るくなっていく。つまり電流を制御して、突入電流の影響を緩和させているのだ。これが我が家の白熱電球が、9万時間近くも切れなかった理由だと考えている。これが常識を疑え、という話である。


いいなと思ったら応援しよう!