サトシのくすぐり小説

静かな森の中、サトシとピカチュウはのんびりと歩いていた。草むらの揺れる音に反応して、ピカチュウが耳をピンと立てる。

「どうした、ピカチュウ?」サトシが気づくと同時に、草むらから突然声が響いた。

「やぁやぁ、待ってたよジャリボーイ」高笑いと共に現れたのは、いつものロケット団、ムサシ、コジロウ、そしてニャースだ。

「またお前らか!」サトシは構えを取るが、ロケット団はすでに奇妙な機械を用意している様子だった。

「今日は特別な作戦でピカチュウを手に入れてやるわ!かかれ!」ムサシの号令で、機械がサトシたちの前に突進してきた。

ピカチュウが攻撃しようとするが、ロケット団は機械から謎のガスを放出し、サトシとピカチュウを別々の方向に吹き飛ばした。

「ピカチュウー!」サトシが叫ぶが、視界はかすみ、体がどんどん動かなくなっていく。

ふと気づくと、彼はいつの間にかロケット団の手中に収まり、縄でしっかりと縛られてしまっていた。

「さあ、今日は特別な罰を受けてもらうわよ!」ムサシが不敵に微笑む。サトシは体をもがくが、全く動かない。

「いったい、何をするつもりなんだ!?」

「フフフ、それは“くすぐりの刑”だニャース」ニャースがケタケタと笑いながら、サトシの脇腹に鋭い爪を当てる。

「や、やめろ!ぎゃっはっはー」
サトシは必死に抵抗しようとするが、くすぐりはますます強まり、笑いが止まらなくなってくる。

「どうだ、ジャリボーイ、今日はどんなに泣き叫んでも、誰も助けに来ないぜ!」コジロウも加わり、サトシの足をくすぐり始める。

「ぎゃっはっはっーや、、、やめてくれー」

「おっほっほっ、やっぱり普段イキがっててもまだジャリンコね。肌が敏感だからやっぱりくすぐりには弱いのね」

「せいぜい苦しむニャース」

「ぎゃっはーやめてくれー、な、、、な、、、何が目的なんだよー」


その時、ムサシがわざとらしくため息をつきながら、冷たい口調で言った。「私たちが欲しいのはピカチュウだけじゃないのよ」

「な、なんだって?」サトシは息を整えながら、ムサシの言葉を待った。

「…そう、実は私たちの“真の目的”は…」

ムサシが冷ややかに微笑みながら、サトシの目をじっと見つめる。サトシは息を整え、彼女の言葉の続きを待った。

「本当はね、私たちが追っているのは、サトシくん…君が隠している“ある情報”なのよ」

サトシは驚いた。「俺が隠してる情報?…そんなもの持ってるわけないだろ!」

「とぼけても無駄よ。私たちは知ってるんだから。あんたが“伝説のポケモン”と関わりがあることをね!」ムサシはニヤリと笑う。

「伝説のポケモン?」サトシはますます混乱した。確かに、今までの旅の中で幾度となく伝説のポケモンと出会ってきたが、それはただの偶然だと思っていた。

コジロウがうなずきながら説明を続ける。「そう、どうやらお前には伝説のポケモンを“呼び寄せる何か”があるらしい。そこで、我々はその秘密を聞き出そうと思ってね」

「待てよ!そんなもの俺は知らないし、持ってない!」サトシは必死に否定するが、ロケット団の三人は信じていない様子だった。

「ふふ、知らないと言うなら、私たちは手を変え品を変えて聞き出すまでよ!」ムサシはサトシにさらに近づき、またくすぐり始めた。

「ははは!や、やめろってば!」サトシは笑いが止まらず、抵抗できずに体をよじらせる。しかし、くすぐりの中で冷静になろうと努め、心の中で必死に考えを巡らせる。「ロケット団は俺が何か特別な力を持っていると思い込んでいる…だけど、そんなのは勘違いだ。逆に、この状況を利用できるかもしれない…」

サトシは一瞬の隙をついて、冷静な表情を作り、「わかった…教えるよ」と、つぶやいた。

ロケット団の三人は、思わず目を見開く。「本当ニャ!?」とニャースが興奮気味に詰め寄る。

「ただし、簡単には教えないよ。条件がある」とサトシは言いながら、目にちらりとした作戦の光を宿らせた。

ムサシが不審そうに問いかける。「条件?どんな条件かしら?」

サトシはゆっくりと笑みを浮かべ、「ピカチュウを連れてきてくれれば、教えてやるよ」と答えた。

ロケット団は顔を見合わせて、少し疑いの目を向けながらも、興味深そうにうなずく。「面白いわね…ピカチュウを連れてくれば本当に教えるのかしら?」

「もちろんさ。あいつもこの話を聞けば、俺が嘘をついてないってわかるはずだ」とサトシは、ロケット団を信じ込ませようとする。

「いいわ。あんたの言葉を信じてやろうじゃない!」ムサシはそう言って、ニャースとコジロウに指示を出し、ピカチュウを探しに行かせた。

サトシは内心の焦りを隠しながら、「ピカチュウ…頼むからうまくいってくれよ」と密かに祈っていた。

しばらくして、ニャースとコジロウがピカチュウを引きずりながら戻ってきた。ピカチュウは電気を封じられてしまっているようで、少し疲れた表情を浮かべているが、サトシを見るとすぐに瞳が力強く輝いた。

「さあ、サトシくん。これで条件は満たしたわよ」とムサシが満足げに言う。「さあ、早く伝説のポケモンの秘密を教えてもらおうかしら?」

サトシは縛られたままニヤリと笑い、「分かったよ、教えてやる。でも、ちゃんと近くに寄って聞くんだ」とロケット団の3人を引き寄せるように促す。

「ちょっと警戒した方がいいんじゃないか?」とコジロウが少し不安そうに言うが、ムサシは自信満々に「大丈夫よ。こっちは完全にジャリボーイおのを制圧しているんだから」と気にせずに近づいた。

サトシは3人が顔を近づけたところで小声で囁く。「実はな…伝説のポケモンを呼び寄せる“呪文”があるんだよ」

「呪文だニャース?」ニャースが目を輝かせる。

「そう。これを唱えれば、どこにいても伝説のポケモンが現れるんだ」とサトシは真剣な表情で言う。

「早くその呪文を教えなさい!」ムサシがサトシに詰め寄ると、サトシは静かにこう言った。

「その呪文はな…『ピカチュウ、今だ!』だ!」

その瞬間、ピカチュウが素早く動き出し、電気を封じていた装置に隠されていたボタンを押し、電気の封じを解除する。ピカチュウの体に再び電気が帯び始め、彼はサトシに目配せする。

「ピカチュウ!10万ボルトだ!」サトシが叫ぶと、ピカチュウは待ちかねたように、強烈な電撃をロケット団に放った。

「ぎゃああああ!」ロケット団は電撃に打たれ、宙を舞いながら叫び声をあげる。

「こんなはずじゃ…私たちの作戦が…!」ムサシが絶叫しながら、コジロウやニャースと共に空の彼方へと吹き飛ばされていく。

「やっぱりお前たちには、伝説のポケモンどころか、ピカチュウだって捕まえられないってことだな!」サトシは彼らを見送りながら、意気揚々と叫んだ。

「ありがとう、ピカチュウ。お前がいてくれて本当に助かったよ!」サトシはピカチュウを抱きしめ、しみじみと感謝を伝えた。

しかし、ピカチュウはじっとサトシの顔を見つめると、突然悪戯っぽい笑みを浮かべた。

「ん?なんだよ?どうしたんだよ?早く縄を解いてくれよ」

ピカチュウ は「ピカピカ~♪」とつぶやきながら、サトシへと近づく。

そして、小さな前足でサトシの脇腹をチョンチョンとつつき始めた。

「えっ!?や、やめてくれよ!ピカチュウ!」サトシは驚き、体をよじらせるが、ピカチュウはくすぐりを止める気配がない。今度は脇の下やお腹をもふもふとくすぐり始め、サトシはたまらず笑い声を上げた。

「や、やめろってば!はははっ!も、もうダメだ~!」サトシは笑い泣きしながら、何とかピカチュウから逃れようとするが、ピカチュウは楽しげにくすぐりの手をやめない。

「ピカチュウ 、どうしたんだよ?」

「ピカピカピカ~♪」ピカチュウは満足そうに笑い、サトシのそばでぴょんぴょん跳ねている。

サトシはへとへとになりながらも、ピカチュウを見て微笑んだ。「ほんとに油断ならない相棒だな、お前は…」

二人は笑顔のまま、森の小道を再び歩き始めた。ロケット団にくすぐられた恐怖も、ピカチュウの愛情たっぷりのくすぐりで、すっかり和らいでいった。

こうしてサトシとピカチュウは、笑い声を響かせながら、次の冒険の旅路に向かって元気よく歩き出したのだった。

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