がくちょと彰さんのチームビルディングプログラム(TBP)がスゴかった
自分が変わっちゃった?!
1年半前から続いてきたムズムズ。
「自分って、どんな人?」
こんな基本的な問いに、自分で答えられない期間が1年半も続いたのです。
人事の仕事を30年もしていたら、自分自身や自分のリーダーシップ•スタイルを見直す機会は山ほどあり、それを人前で話すことも何度もあり、リーダーシップ•アセスメントの資格もとったりもしました。
1年半前の私にとって、自分のリーダーシップ•スタイルを言葉にすることは、簡単なことでした。
「ゴリゴリのドライブスタイル」
ぶつかろうと、嫌われようと、コワイと言われようと、人を傷つけようと、なりふり構わず自分にとっての正しいことを成し遂げることを信条していました。
嫌なやつ。
強みを強みとして発揮するついでに、それを刀のように振り回して、人様に迷惑をかけてきました。
ところが、1年半の間に、そのアイデンティティが、根底から揺らいでしまったのです。
きっかけは2021年2月。仲山進也さん(がくちょ)が京都岡崎蔦屋書店さんと組んだ企画「オンライン読書会開発部 ~みんなでつくる!おもしろ読書会~」。
恐る恐る、この集まりの「末席」に加わった私。
がくちょの見事なチームビルディングに完全に心を奪われ(?)ました。
斜に構えた発言で周りにピリピリした空気を蔓延させたり、自己開示して信頼を得る努力をすることもなく一直線で問題解決へ向かう姿勢を是としてきた自分のスタイルが、グラグラと揺さぶられました。
改めて「読書会開発部」スタート時にFacebookグループにあげた私の自己紹介を見てみました。
"たまたま新卒で配属された人事の仕事を、4社で25年以上続けています。組織開発が好きです。ほかにはD&I、HRテクノロジーが趣味で、あとはボランティアで、あるスタートアップの人事関係の支援をしています"
他の参加の皆さんがガッツリ自己紹介しているなか、よくぞ恥ずかしげもなくここまで雑で失礼な自己紹介で済ませたかと、その勇気を讃えたいくらいで、分量だけみても他の皆さんの20%にもならない薄さ。がくちょが折角だしてくれたお手本も完全無視。恥ずかしい。。
ところが、この「読書会開発部」が、これまでの自分って、なんかおかしいっ?!
ということを気づかせてくれたのでした。(その時の感想がコチラ)
それから、がくちょや、その相棒(?)らしい長尾彰さんのが書いたものを片っ端から読みまくり、過去分も含めて動画を見まくっているうちに、自分の思考回路が自然に変化していきました。
高速道路を降りて、田園風景の中をレンタサイクルで走るくらいの違い。
「ゴリゴリのドライブスタイル」でメンバーに有無を言わさず指示をしていた自分が、いつの頃からか、チームのメンバーからの質問に対して質問ではぐらかす。「ちゃんと役割をアサインしてください」「もっと明確なガイドをください」と突き上げられてもニタニタするだけで動かない。隙間仕事や面倒な調整をせっせとやっていると「サーバントリーダーシップスタイルですか?」と聞かれる始末。私を一言で表してくださいと言えば「穏やか」「チャーミング」「優しそう」「変な人」。「変な人」以外は、かつての自分と真逆の他者評価。
アイデンティティ・クライシス!
ムズムズが続くこと1年余り。
その間、転職もして、完全オンライン環境に。「他者評価の変化は、オンライン環境の仕業だろう」「オンラインだと自分の顔が観察できるので、本来の自分を出すことを遠慮してしまっているだろう」と、自分を納得させてきたのですが、コロナがだいぶ明けて対面環境になっても、私のイメージは元に戻る気配なし。
やばい、どうしよう?!
私はだれ?!
51歳、人生最大の困惑でした。
「チームビルディングプログラム@オンライン(TBP)」って、なんだ?
「読書会開発部」を終えてから、引っかかっていたことが2つほどあったのです。
一つ目は、「読書会開発部」の3回のセッション後の、有志が参加する懇親会で小耳に挟んだ話。「末席」にいた私は、この懇親会にこっそりと「耳だけ参加」していたのですが、そこである参加者が、がくちょにした質問が頭に残ったのです。
"TBPってありますよね?参加していいですか?"
TBPってなんだろ?(モヤモヤ)
そして、もう一つ。
見事だった「読書会開発部」のクロージングでのがくちょの一言。
"関係性さえ構築できればなんとかなると思った"
その時はわかったふうでしたが、考えれば考えるほど全くわからない!
日本語としての字面はわかる。けど、これって、どういうこと?どうやるの?
追い討ちをかけたのは、たまたま聞いた彰さんのオンラインセミナー。がくちょの相棒の彰さんの話しをリアルタイムで聞くのは初めて。彰さんはこうはじめました。
"ファシリテーターとは「寅さん」である"
なんだなんだ?!
このセミナー内で彰さんがファシリテーションの定義をしてくれました。
ん?
これって、がくちょが「関係性さえ構築できればなんとかなると思った」と言ってたことと関係あるのかな?!
その直後の今年1月。FacebookのpostにたまたまあらわれたTBP第4期の募集案内を発見!
すかさず、がくちょに「私、TBPに参加させていただいてもいいでしょうか?(他のご参加のかたとのバランス?などどうかなと思いまして)」と意味不明のテキストを送信。
1分後には「大歓迎です!」の返信。
お、では申し込んでみようと、改めて彰さんのnoteにある募集案内をみて、気づいたことが、たしか3つほどあったのを記憶しています。
1つ目。どんなコンテンツなのか全くわかない!
実は「プログラム内容(主なキーワード)」という項目を設けて、コンテンツが相当のスペースを使って掲載されていました。でも、受講前にここを見た時は、暗号にしか見えなかったのです。プログラム内容がさっぱりわからない!
受講後になって、初めて、ここに並んでいた言葉の一つ一つが、魔法の呪文のようなパワーを持っていることを思い知るのです。実際、プログラムは確かにこの通り忠実に進むのです。実は、めちゃくちゃ誠実な案内だったのです。
2つ目。研修プログラムの宣伝に使われる「受講者の声」ほど信用できないものはないのに、TBPの案内には、これでもかというくらい、受講者の声が載せられている。
「終わったときのイメージ」にはこんな言葉が。
「かなり軽く、柔らかくなっている」
「メンバーにイライラすることがなくなっている」
「メンバーが何を考えているかわからないという不安がなくなっている」云々。
ほんとかよ?!
さらに「参加者のコメント」はこう始まっていました。
「起きているコトを観察する「型」、起きているコトに変化を起こす「技」を知識として習得し、その「型」と「技」を身に着けるための反復練習をTBPでは実践します。すると、いつのまにか、自分の周りの人々の衆知を集めるためのOSがバージョンアップしている。と、なんだかそんな感じ。これからこのOSを抱えた自分の人生と、自分の周りの人達がどう転がりながら関わっていくのか、変わっていくのか、流れていくのか、なんだかワクワクドキドキしている受講後の一週間であります。・・・」
「型」「技」「OS」•••?!
「サクラ?!」(笑)というのが、案内を見た時の感想でした。
三つ目。この受講料は安くない!(笑)
ところが、終わってみたらこれも、ずいぶん安い投資だったという感じです。オンラインで手軽に外部研修を受けられるようになって、私も色々な研修に参加しました。でも、いくら研修を受けてもせいぜい「わかる」のレベル止まりになりがち。だから、わかってはいても、実行には移せず結局は受けっぱなし。TBPでは、「わかる→できる→している」状態を要求される。というか、自然にそれを求めて行くようになるのです。知識ではない、本質的な考える力が育つように濃密に設計されていました。これを経験してしまうと、当面はお勉強の研修には出なくていい!となりました。
とはいえ、申し込み時は案内文をまともに読み込むことなく、ただ、がくちょを信じて申し込み完了。すると彰さんから「エントリー、ありがとうございます!」というリアクションがあり、テンションアップ。どんなメンバーが参加するのだろう?!とドキドキしていたのをよく覚えてます。
読書会開発部で心の壁が揺さぶられ、TBPで倒壊
TBPは半日×7回のオンラインのセッションと、セッションの間に取り組む「お題」を中心とした3ヶ月半のプログラムです。
タックマンモデルになぞらえたフォーミング→ストーミング→ノーミング→トランスフォーミングというチームの形成過程をそのまま体感できるのです。12人の仲間が、週を追うごとにチームになっていくのを、ジワジワと感じました。3ヶ月半のアクティビティを経て、最後はアジャーニング(解散)するという設計。
このプログラム、当然、人によって見どころは違うのでしょうし、最初から最後まで凄いのですが、私にとっての一生モノの収穫ベスト3は、こんな感じです。
ベスト1。チームビルディングの「ストーミング状態」を自覚的に体験できたこと。
これって、言葉にするのは簡単なのですが、スゴイことだと思うのです!
多くの日本の組織では、ストーミング状態を経験できる機会は非常に限定的です。フォーミング体質が強く、そのうえ人の入れ替えがおおい。飲み会もあって、長年苦楽を共にする仲良しグループの集まりにはなるけど、心理的安全性を醸成して、仕事の価値基準をすり合わせるようなストーミング状態を経験している人は極端に少ない。だから、多くのメンバーは他人事。斜に構えている。仮に運良くストーミング状態を経験し、大金星をあげるようなチームをつくったとしても、それは偶然の流れでできるのであって、意識的に経験することはほぼない。ストーミングがどういう環境においてどういうメカニズムで起きるのかについて、言語化できない。だから、その状態を意識的につくりだすこともできない。
TBPでは、ストーミングを経てチームになる法則を、頭だけでなく、五感で感じる機会を得ます。
ストーミングの体験って、すごく静かに進むんだって後になってわかりました。いつのまにかノームができているのですが、そのきっかけはちょっとしたことでした。
ベスト2。このプログラムの肝は、決して答えを教えてくれないということ。そのかわりに、もっと大切なことを学びます。
プログラムの初日のエピソード。
ある考え方(公式)に衝撃を受けた私は、がくちょと彰さんに、無邪気に質問しました。
「これ、自分のチームメンバーにコレ伝えたいのですが、いきな言い出すのも変ですよね?どんなふうに伝えるのがいいですかね?」
忘れられない、2人のリアクション。
(しばしの沈黙)
がくちょ「私たちは、このプログラムの進め方がよいとおもっていますが・・」
彰さん「まあ、おいおい考えていけばいいのでは?」
Q&A終了!
TBPでは決して答えを教えてくれません。そのかわり、自分なりの答えを考えるための視点と価値基準が血肉になります。火傷しないよう、最低限のルールだけは示してくれます。
チームビルディングって、ワンタイムのイベントでも、誰かにやってもらうものでもなくて、メンバー一人ひとり、全員が全員で考えてようやくできるものです。だから、チームビルディングと考える力の2つが合わさらないと組み立てられない。新鮮な気づきでした。
ベスト3。本当の仲間ができること。3.5ヶ月間、共に学び、あり方を揺さぶられ、全員完走!というゴールに向かうなかで、チームが形成されます。それぞれの思いをもって参加した仲間•友達ができます。
まだ「仮免」。前に進むためには、仲間が必要です。
仲間は同期だけではないです。
TBPを受講してから、募集案内の先輩卒業生のコメントを読んでみると、コメントの一言一言が重い!
言葉の意味を噛み締めて、わかる!わかる!の連続。
そもそも、案内に載っていたかつての受講生に対する認知が、「前に受講したサクラ?!」から「同じ飯を食った先輩卒業生」に変わっていました。会ってもいないのに、先輩卒業生の皆様に、敬愛と愛しさすら生まれていました。同じ入力情報なのに、半年前と現在とで、判断が違う!
昨日から告知が始まった第5期の、まだ見ぬメンバーすらも、すでに仲間にみえています。
TBPを卒業すると、大切な仲間•友達ができます。
がくちょも彰さんも、指南車に乗っている仙人のように、いつでも一定の方向を指し示してくれる気がします。
この3.5ヶ月、キャリアというテーマについてもいっぱい考える機会を得ました。副産物としては、自分のキャリアに軸が通った感覚があります。
これからのこと
「読書会開発部」と「TBP」の体験。
私が30年間も人事屋、そしてリーダーとして蓄積してきたものの多くが、いかに表面的で、頭でっかちなものだったと痛感しました。
2001-4年にミュンヘンのシーメンスで勤務している間に、当時日本にはなかった「組織開発」という考え方に感銘を受けました。その頃から、毎日欠かさず組織開発について考え、実践してきました。でも、実は私自身も、組織開発の定義すら言葉にできない。わかった風にしていただけでした。
日本でも、2000年代半ば以降、コーチングとか、ワークショップとか、D&Iとかいった形で、組織開発は広まっていったのですが、残念ながら、日本の企業も組織も、実態はほとんど変わりませんでした。
組織開発が流行り言葉になっても、チームビルディングが真面目にとりあげられることはありませんでした。人事にかかわる学術の世界をみても、チームビルディングを扱った研究は日本では極めて少ないことは驚きです。人事実務の世界でも、チームビルディングは単発のアクティビティ(一時的なアイスブレイクのようなもの)としてしか捉えられてきませんでした。(立派に思いをもってやっている人事の方も、もちろんいらっしゃるとおもいますが)
そもそも、リーダーやマネジャーが、チームのパフォーマンスを最大化する役割を担っているとしたら、チームの形成過程の法則を再現性をもって言語化できないのは、ゆゆしき問題なのに、日本の人事部は、そこに踏み込むことをしてきませんでした。
これが、日本の組織のワーク・エンゲージメントが他国に比べ著しく低いことの、1番の要因なのではないかと、いまは思うのです。日本人って、腹を割って話すのが苦手ですよね。そういうふうに教育されていない。だから、忖度したり、裏で陰口をたたいたりして、人間関係をこじらせる。
でも、腹を割って話すための「型」があると、案外その「型」に従って、本音を話せるようになると思うのです。本音のコミュニケーション量を増やしていけば、おのずと関係性ができてフォーミングが進み、ストーミングがうまれ、モチベーションがあがる。その「型」が判断=価値基準x入力情報の公式です。だからこの公式一つだけでもチームのみんなが意識して、1.1な感じでコミュニケーションをとっていくだけでも、日本の組織のエンゲージメントは爆上がりだとおもうのです。
そして、人事部こそが、経営者と一緒になって、上手なファシリテーターとして、必死になって、どうやったら自社によいチームができるかを考える必要があると思えて仕方ないのです。
海外のあるチームビルディングに関する本によれば、人事マネジャーがチームビルディングに着手しない理由は、次の5つだったと言います。
1.何から手をつけてよいかわからない(頭では大切だとわかっていてもも、実践的なノウハウがない)
2.ベネフィットよりネガティブな側面の方が多いのではないかという心配(メンバー同士が仲良くはなるかも知れないが、パフォーマンスに結びつかない。あるいはコンフリクトばかり増えてメンバーが疲弊する)
3.会社から評価されない(人間関係がいくら良くても評価されない)
4.部下が時間の無駄だと思うのではないかという心配(部下も本当のチームを経験したことがないので、基準がない。現状OKと考えがち)
5.チームビルディングに時間を使うことについて上司からのサポートがえられない(効果が見えない、「上」がサポートしない、会社のゴール達成とは無関係、実行には外部コンサルタントが必要)
確かに、私もこんな言い訳をしてきました。
いま私が「自分って、どんな人?」と聞かれたら、こう答えます。
"みんなが優しくなる組織を作る仕事をしています。そのために、社内の組織変革ファシリテーターとふるまいを、諦めずにする人です"
TBPの7日目の最後に、がくちょが、私たちが聞き逃すくらいのトーンで言われたことがありました。
「彰と僕が目指しているのは世界の平和です」。
魔法の杖ではないけれど、これから生きていくための羅針盤を手に入れて、人生のリスタートのボタンを押した感覚です。このプログラムはすごいです!
がくちょ、彰さん、大切な同期のみなさん、ありがとうございました!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?