真面目系クズの朝は遅い

ただのクズでなく真面目系クズである。そんな私の朝は8時に起床するところから始まる。この遅さで真面目系とつけるのはそれなりに理由がある。真面目系クズは真面目なフリを装っているので始業から逆算して家を借りるのだ。9時始業なら真面目系を装うために8時45分には到着していたい。私は女性であるため真面目系を名乗るにはそれなりにビジネスメイクも怠らない。そうして算出したのが職場から20分の今の賃貸アパートである。

45分で間に合うのか、疑問だろう。真面目系クズとクズの違いはおそらく下準備では無いか。真面目系クズの私は朝1分1秒でも長く眠り、かつ体裁を保つことに余念が無い。前日に録り溜めたドラマやバラエティを見ながら(時には必要最低限の仕事に必要な勉強もしてみたりはする、真面目系クズなので)机の上にメイク道具を準備し、洋服を椅子の上に投げ出しておく。メイクは15分、着替えに5分、その他諸々でピッタリになるようにしている。

さて、真面目系クズにとってメイクとは厄介なものであるが、話が長くなるのでまた別の機会に書くことにする。薬剤師の仕事は基本真面目にこなさなくてはならない。病院薬剤師といえば一般的に「アンサングシンデレラ」を思い浮かべるだろう。石原さとみが可愛いあのドラマである。業務時間内は調剤、監査、服薬指導で患者の迷惑にならない範囲で文字通り駆け回る。真面目系クズ?クズの部分なくないか?そう思った方も多いだろう。その通りだ。

さて、話は変わるが私は新卒で入社した病院を2年で辞めている。なぜか、どう足掻いてもブラックだったからだ。消える先輩、止まない外来の処方、1年に2回は原因不明で落ちる電カルシステム。クズになる暇はなかった。先輩から「ここからここまでの処方(山積み)どのくらいで終わる?1時間?そんな時間あるとおもう?」と圧をかけられるがミスは許されない。「そうだ、辞めよう」と辞めることにした。この手の職場は辞める際に「辞めざるを得ない理由がある」というアピールも忘れてはいけない。なんだかんだと結局辞めさせて貰えないからだ。遠くへの転居、身体を壊した。理由になるのはせいぜいそんな所だ。

かくして少し緩い職場での勤務。ここで私は真面目系クズに戻れるわけだ。「服薬指導行ってきマース。30分くらいでもどりますねー!」と戻る時間を告げることでその時間は干渉されない。そして、30分というのがミソである。カルテを確認し、服薬指導をして帰ってくる。私の受け持ちの人数からすれば少しだけ長いようにも思えるが、患者さんに捕まっていればそんなものだ。すなわち、患者さんに長く捕まらなければ5分程度の猶予が生まれる。5分、非常階段でストレッチや携帯をいじるには十分な時間だ。

そして実はこうして気分を切り替えれば、その後の仕事の効率も上がる。毎日夢の定時退社という訳だ。

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