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リング【Part.7】

みんなの力は無限大

翌朝、私はまたしてもゾクッとする声で目を覚ました。
『おはようございます。いきなりですが、正直言って、私はあまり面白くありません。ですが、ニュースはお伝えします。フィーラン3000体撃破おめでとうございます。フィールドに参加券が出現しました。
そして、イベントボスの体力が50000になりました』
今回のニュースはぷつりと切れてしまった。
私は呆然としてニュースを聞いていた。1日で3000体?
一体、どれだけの人が協力してくれたんだろう。
その時、突然私のリングが音を立てて震え始めた。
「ええっ?なになに?」
それは、たくさんのメールだった。
プレイヤーの人が代表者の私に応援メールを送ってくれたんだ!
一瞬、攻略部メンバーの名前も見えた。うれしいな。
早速、みんなにもありがとうって言わなくちゃ!

「「達成しましたね!」」
私は同時に霧崎さんと部室に駆け込み……大声で笑った。
重なっちゃった!
こういうとき、『ハッピーアイスクリーム』といったほうが勝ちらしい……
って、そんなことはどうでもよくて!
「すごく早かったですね!」
「そうなんっす。みんな頑張ってくれたっすよ」
「おっさんも、ランキング1位としてちゃーんと頑張ってたしね」
「よかったです!
ところで、今回のイベント参加券はどこに出現したんですか?」
「枕御殿だ。夜一が好きそうだな」
「むっ!なんっすか!僕はそこまでねぼすけじゃないっす」
「ねぼすけだろ」
零さんのツッコミにドッと笑いが起きる。
「じゃ、精鋭のやつは集まれ。枕御殿に行くぞ」
「「「はい!」」」

枕御殿

枕御殿はその名の通り、枕がたくさんあった。
「あはは。夜一寝ないでよ」
「みんなそろってなんっすか⁉️それに、アバターじゃねれないっす」
「現実で寝るだろ。ま、とにかく先に進むぞ」

しばらく進むと、敵が現れた。もふもふコロンだ!
私が最初に通常戦で倒した敵で、零さんが仕留めてくれた敵。
初めての敵だから思い入れがある……なんてなことはなく、
私たちはなんなく倒すと、先へ進んだ。
「あの、なんだか呆気なさすぎると思いませんか?」
私の言葉にみんなは顔を見合わせた。
「確かに……前なんて、堕天使とのバトルだったのに」
「いきなり難易度が下がりすぎる気がするっすね」
「じゃあ、この先に罠があるって考えるのが妥当だな」
「気をつけていきましょう!」
そう言って、警戒しながらすすんだものの……あまりにもあっけなく、私たちはイベント参加券が入っているであろう宝箱の前に辿り着いた。
なんだか、何も起こらなくて逆に怖い。
「……取るぞ」
零さんが取っても、特に何も起こらなかった。
「帰るっすか?」
「「「……」」」
『おや?せっかくサービスでトラップなしにして差し上げたのに、怖い顔ですね』
「「「「帝⁉️」」」」
『大丈夫です。裏などありませんよ。ただ、今回のイベントは難しいので……
もちろん、前回よりも。クフフっ』
毎回、帝の笑いにはゾクっとさせられる。
この人は悪夢を楽しんでいる……まるで人間じゃないみたいだった。
『あと、もう前に進まない方がいいですよ、大切な人を失うので…
今回のイベントを終えた後は…いえ、これはお楽しみで。ふふっ』
「腹が立つね」
「マジそれ」
いつの間にか、茜君と雷射がいた。
「大切な人を失うとかふざけてるよ。僕らは失わないために戦ってるのに」
「ま、管理者側も子供とかを失わないように頑張ってるのかもな。
うちの社長は子育てのやり方をどっかで間違えたみたいだけど」
零さんの言葉にみんなは一斉に吹き出した。
今では零さんと社長の親子仲の悪さはもう笑い話。
だんだん、攻略部のみんなも打ち解けてきたのを感じる。
最初の頃は霧崎さんと零さんの中はすごく険悪だったもん。
「とにかく、イベント参加券【赤】は手に入れた。来週の土曜決行な」
「「「「「はい!」」」」」
「で、何人参加っすか?」
「6人……なんか、書いてるぞ」
「6人でのパーティをお楽しみください?」
なんだか、嫌な予感がする。でも、それを私は言葉にできなかった。
「6人だったら、ちょうどだね」
「そうだね。じゃあ、このメンバーで行こう!」

イベント【赤】への参加

いよいよ、イベント参加の日。
私のレベルはというと、155まで上がったの
まだまだ、みんなには届かないんだけどね。
今回のイベントボスはフィーラン!
でも、倒し方をわかってるから怖くない、と思いたいけど、
リングのことだからなにか嫌がらせをしてくる気がする。
帝の言葉も気になるし……
でも、今はイベントをクリアすることだけを考えよう!

「じゃあ、イベント攻略組は席につけ。踊と霧崎、案内は任した」
「「は、はい!」」
ううっ。案内だなんて緊張しちゃう。
「今回は186億集めたから3回復活できるぞーい!」
イベントはいつもヒヤヒヤするからちょっと安心。
キィーッ
また、あの引っ掻くような音が聞こえてきた。気持ち悪い。
そして、私の意識は消えていった。

「踊さん、起きた?」
あ……
ここは、もうイベントの中か。
カラフルなチューブがたくさんあって、床で絡まっている。
「はい、大丈夫です。他のみんなは?」
「起きてるけど」
「うちも起きたとこ。起きたって表現なんかようわからんけど」
「……前と場所は違うのか?」
「はい。案内するのは無理かと……」
案内しないでいいのはちょっと安心。
「じゃあ、行くか」
『お集まりの皆さん、どうも。意外と早かったですね』
「「「「「帝!」」」」」
私以外のみんなはぴったり声を合わせた。
「どういう意味?このイベントは……」
『息抜きです。早かったですか?メンテナンスもありますし、ゆっくり休憩してくださいな。ふふっ。では、頑張ってください_雑魚狩りを』
嫌な感じ。雑魚狩りなんて。敵にも意思はちゃんとあるのに。
もっと帝って礼儀正しい人だと思っていたんだけど。
敵を簡単には信じちゃダメ、ってことだね。
「じゃ、行くか」
私たちは取り合えず、奥の部屋に行くことにした。
奥の部屋には、たくさんの白いチューブがあった。
さらに進むと、今度は赤いチューブ。次は、青のチューブ。
そして、黄色、紫、緑、水色、オレンジ、茶色のチューブがあった。
「これは、俺たちが参加するイベントの数かもね」
「茜君もそう思った?でも、こんなに多いなんて」
「ま、信じない方がいいよ。リングなんて残忍なやつ。とっとと行こう」
「……」
「八高さん、行くよ。多分、次で敵が来る。みんな武器を用意しといて」
「うん」
私は武器を召喚する……としようとしたんだけど、なぜか召喚できなかった?
周りを見ると、召喚できているのは、零さん、夜一さん、雷射だけ。
ええっ?どういうこと⁉️
「どうやら、ランキング上位の人だけ武器を召喚できるみたいだね」
茜君は突然歩き出すと、チューブに埋もれた何かをガンと蹴った。
「ふざけてないで、説明してよね。ボンクラ帝?」
『よくマイクに気が付きましたね……ボンクラ帝というのが気になりますが。今回はスキルチップと呼ばれるアイテムを手に入れなければいけません。ランキング上位の人だけ、武器召喚を解除したのは、単なる救済措置ですが、信じないでもいいんでね。ふふっ』
その言葉を聞いて零さんはすぐに装備を解除する。
「零さん?」
「最悪スキルチップが取れなかった困る。アクセサリー召喚だけでいい」
ちなみに、アクセサリーとは、HPやMP、攻撃力などを挙げるアイテム。
デザインもオシャレだし、プレイヤーに人気なんだよ!
って、夜一さんが教えてくれた。
とほほ。自分の知識ではないのがちょっと悔しいところだ。
「じゃ、先に進もうよ」
「そうだね。えーっと、夜一と雷射、前衛を頼める?」
「いいっすよ」
「うちは一応後ろにいとく。帝なんて信じれないし。罠あるかも」
私も頷く。
罠があった場合、全員一網打尽になっちゃうもん。

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