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スキって言って


異変があったのは火曜日だった。
突然妙な手紙が届いたのだ。
手紙は真っ白で真ん中に小さく『ス』とだけ書いてた。

水曜日も手紙は届いた。
今度は真ん中に『スキ』と書いてあった。
ストーカーされているのだろうか…不安になった。
それとも、家族か、趣味の悪い悪戯か。
とりあえず、置いておくことにした。

木曜日も手紙が届いた。
またしても真ん中に文字は書いてあった。
『スキと』
ふと、この言葉が完成されたらどうなるのだろう、と思った。
怪談の類はあまり知らないが、
見知らぬ人から一字ずつ手紙が届くなんてありそうな話である。

見て見ぬふりをしていると、金曜日も手紙が届いた。
今度は、『スキと言』と書かれてある。
『スキと言って』と言っているのかな、とふと思いついて首を傾げた。
なぜ?だれが?
こんなことを話しても近所のおばさま方には煙たがられそうなので、
噂に出すのはやめておくことにする。
これでは、単なるラブレターではないか。
だが、好意を抱いてくれる人など、目星すらないのである。
一目惚れして、跡をつけてきたとしか考えられない。
その説もなんとも不気味ではあるが。

土曜日、手紙を見て凍りついてしまった。
予感は当たっていた。
『スキと言っ』
ここまできたら次は『て』だろう。
もう待っているしかなかった。
手紙が完成する恐怖を。

日曜日、手紙は完成した。
『スキと言って』
それが、あの世へ行く扉なのかさえ、わからない。
だが、不吉なものであることは確信していた。
スキという言葉がなにかを招くのか。
不安なまま、一日待ってみることにした。
とんだ怪異現象だ。
警察に言っても向き合ってくれるかどうか、さだかではない。

月曜日、一週間がたった。
手紙には、新たな一文が追加されていた。
『スキと言って。ご主人様』
手紙を見て、思わず「はぁぁ?」と言ってしまった。
ご主人様って誰のことだ?
見知らぬもののご主人様になった覚えはない!
だが、もしスキということでこの怪異が終わるのであれば、言ったほうがいいのだと思う。
そこで、手紙は2枚入っていることに気がついた。
もう1枚は散歩をしているおばあさんと犬の絵だった。
これは、もしかすると、犬の亡霊が出しているのではないだろうか。
覚悟を決めて、呼んだ。
「スキ」
特には、何も起こらなかった。


2回目の火曜日。
手紙は来なかった。
もう二度と手紙は来ないのだろう。
『スキ』が単なる『好き』だったのか、『犬の名前』だったのかはわからない。
だが、それは犬の名前だったのではないかと思う。
なぜなら、最近ふとしたところで犬の鳴き声を聞くのである。


あとがき


ここまで読んだらわかるかもしれないですが、
ショートショートのなかでも、怪談です。
というか、怪談みたいなものです。
みたさんは怖い話が苦手なのですが、これは昨日の夜ベッドで
『記事の、ネタが、ネタが〜』と唸って言いたら思いつきました。
自分がいいと思った記事でもなかなかスキがつかないことが、
最近の悩みなのです。
じゃあ、いっそのことそれを題に物語にすればいいじゃんか!
という発想で作りました。
いかがだったでしょうか?
ホラー(怪談)に挑戦するのは今回が初めてです。
でも、上手くできた、気が、しま、す。
最後まで読んでくれて、ありがとうございました!

それでは、おつがさ〜
次の記事もお楽しみに!

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みった/
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