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ヒワとエワ2

エワは白詰草を摘んでいた。
「はい、お姉ちゃん」
「ありがとう」
エワは白詰草の冠をかぶった姉・ヒワを誇らしげに見つめた。
彼らは地上に降りる前の魂だった。
二人のそばには2本の蝋燭が置かれている。
蝋燭は二人が地上に降りるまでの時間を表していた_
今は、どちらも短くなっているが、エワよりヒワのものの方が長かった。
このことがエワには気がかりだった。
ヒワは何かを隠しているんじゃないだろうか?
実際ヒワはいつも何か思い詰めた顔をしているのだった。
「ねぇ、お姉ちゃ…」尋ねようとしたエワの言葉は続かなかった。
ヒワが倒れた。

「ヒワさんは、かなり重い病気を持って生まれてくる宿命を持っています。二人とも明後日は地上に行きますからヒワさんの魂も準備を始めたのでしょう」
「嘘でしょ!」姉が何かを隠していることは薄々気がついていたが、そんなに大変な事だったなんて…
「助ける方法は?」
「ありません」
「クッ……」
エワは一人で野原へ戻った。
「だれも、ヒワお姉ちゃんの事助けてくれないのね。
私、地上にいったらお姉ちゃんの代わりに病気になったっていいわ」
エワの呟きは南風に乗って遠くへ流れていった……

暖かな南風から話を聞いたエヴィ神はため息をついた。
「私にどうしろというのだ?天地の神に逆らうなどできやしない」
パシバが答える。
「ええ。できるのは彼らを入れ替えるぐらいですからね」
「入れ替える?」
「妹は言っていました。姉の代わりに病気になってもいいと」
パシバの言葉にエヴィ神は笑顔になった。
(これで、あの姉妹を助けることができる。)
神々は蝋燭を長持ちさせたり、短くさせたりと操ることができるのだ。
「本当か」頷いた使い鴉にエヴィ神は命令を下した。
「彼らの蝋燭を持ってくるのだ。〈魂の番人〉には内緒でな」
パシバはエヴィ神につられてニヤリとした。
この主は悪戯好きだ。

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