【小説】あらすじと感想 まとめ 24/11/18更新
読んだ本のあらすじと感想をそれぞれ1ツイートぐらいにまとめました。
忘れないように、あと暇なとき読み返したい本を探せるように。
随時追加していきます。
小説以外の本、映画版はこちら。
朝井リョウ / 正欲
文庫のあらすじ読んでほしい。あの文章じゃなかったら、私はこれを読んでいなかった。そして確かに、読む前の自分には戻れない。自分にとっての多様性は、せいぜい自分の想像できる範囲にしか適用できないのだ。頭では分かっていることだけれども、その具体的な事例を体感させられた。
伊坂幸太郎 / フィッシュストーリー
映画「ポテチ」だけ観た状態で読んだ。どれも終わり方が好き。それと、短編集だと思って油断してはいけない。作品間でリンクしている。この作品内で完結しているものもあればそうでないものもあるらしい。『この人別の作品に出てそうだな……』と思う部分があった。
収録作品「フィッシュストーリー」は、バタフライエフェクト(最近覚えた)を想起させるもので、読んでいて自分の存在を肯定されているような気分になった。適当書いているこの記事も、読んだ誰かが実際に本や映画に触れてくれたらとても嬉しい。
梶井基次郎 / 檸檬
10ページもない、短い作品。こういう日って現代人にもあると思う。本当に何でもないことなんだけど、それが自分の心の核に触れた気がして一応スマホにメモしたりツイートしたりすることが時々ある。試しに今までメモしたものを読み返してみた。すっかり忘れていたけど、私は結構面白い日々を送っていたらしい。
坂木司 / 先生と僕
小説やミステリへの入門としてピッタリな一作。そもそも坂木司さんの小説は非常に読みやすい。口語的な表現が多く、登場人物の心情描写も直接的なものが中心となっている。そしてこの作品では、生徒側の瀬川隼人が二葉に実在するミステリ小説を勧める場面がいくつかある。ここで引用される小説はあとがきでリスト化されている上、それぞれ本作と共通した要素を持つ。引用された小説を読むことでこの作品を二度楽しめるし、ミステリに触れるいい機会になるだろう。
背筋 / 口に関するアンケート
背筋さんは2023年「近畿地方のある場所について」でデビュー。これが二作目となる。 有隣堂で『文芸部門1位』とPOPがついていて、カバンにも余裕で入りそうだったので購入した。
短時間で質のいいホラーが楽しめる。この長さで結構ゾクッとしたから、デビュー作はちょっと恐ろしくて読めない。それとこれ、小説の記事に入れていいものか少し迷った。
新美南吉 / ごんぎつね でんでんむしのかなしみ 新美南吉 傑作選
タイトルにもあった「でんでんむしのかなしみ」は私を含め色んな人に刺さる詩だと思う。でも、かなしみを誰もが持っているということは主人公のでんでんむしが友達に相談しなければ分からなかったことだ。一人で絶望するもんじゃないな、と身に沁みた。
傑作選というだけあってどれも面白い。人によってお気に入りの作品もばらけるだろう。私がほかに印象深かったのは「おじいさんのランプ」「花を埋める」あたり。17作品で200ページくらいなのでさらりと読める。
道尾秀介 / 向日葵の咲かない夏
好きなタイプのサイコミステリ?サスペンス?だった。誰か、何かが狂っている。ありふれた日常のようでどこかがおかしい。そして真相を知った状態でもう一度読みたい、そう感じさせる作品だった。若干ホラーも含まれているが、耐性が無くても読めると思う。
湊かなえ / カケラ
とても湊かなえらしいミステリだった。
小説の大部分は、橘久乃が聞いた言葉で占められている。こういうインタビュー形式で進む物語って、本当に主観の食い違いが分かりやすい。たくさんの人が語る真実で事実がどんどん見えなくなっていく。大好き。
橘久乃は、ある意味わたしたちと同じ一人の読者だと言える。イヤミスに分類されるであろうこの何とも言えない読後感は、この思い込みからきているのではないだろうか。そして私たちに、この物語の感想を強要する。
湊かなえ / リバース
みたいな感じで始まるミステリ。三人称だけど、ずっと主人公(深瀬)の視点で物語が進む。これが結構新鮮だった(湊かなえらしさって、複数人の視点から一つの事実を見ていくような構成だと思っていたので)。 めちゃ面白かった~、伏線の張り方が本当に巧妙で、何とか勘づいたとしてもそれを裏切ってくる。
本岡類 / ごんぎつねの夢
(これ書いたあと文庫本のあらすじ読んだら全然違って笑っちゃった。私のあらすじは「あらすじ」じゃなくて「冒頭を要約したもの」だ)
予想以上に新美南吉要素が強かった。新美南吉の知識が無くても問題はない、でもある程度知っていればより楽しめる。ミステリとしても完成度は高いが、新美南吉(特に「ごんぎつね」)が登場人物にどう影響を与えていくのか、というところもこの作品の面白いところ。
J.D.Salinger (野崎孝 訳) /
ナイン・ストーリーズ
とても読むのに苦労したけど、理解したくてなぜか何度も読み返してしまう作品。読みにくいと感じる原因の一つは、ほぼ完全な三人称視点の小説であることだろう。つまり、登場人物の心の声がほとんど書かれていないのだ。なぜその行動に至ったのか、全然分からない。全く意識していなかったが、今まで読んできた小説には少なからず人物の心の声が記されていた(三人称一元視点が多かった)。私は読書をするとき、小説に頼りすぎていたのかもしれない。
これが長編ならまだ読み終わっていなかったかもしれないが、短編なのでそこまでハードルは高くないのではないだろうか。おすすめ。
Stuart Turton (三角和代 訳) / イヴリン嬢は七回殺される
タイムループ系の長編SFホラーミステリ。
かなり複雑で読みごたえがある。ミステリとしても傑作だが、私が一番印象に残っているのはホラー要素。小説でジャンプスケアってできるんだ。読んでいて身体が実際にびくっと動いてしまったのは後にも先にもこの一冊だけではないかと思う。
……というのが初読(数年前)を思い出しながら書いた感想。数週間かけて再読を終えた訳だが、私はこの物語を全然覚えていなかった。真実を忘れ、張り巡らされた伏線に若干の違和感を覚えながらも素通りし、数年前と同じ衝撃を受けた。読者としての自分もループしている気分だった。記憶力がアレなことは置いといて、初読時にも感じた没入感はやはり私の読書経験の中で群を抜いている。何度でも読める。