カバ部の彼氏
パンダ部の先輩は
いばってる
パンダ部にいる人は
出世が早いという噂
コアラ部の部長は
いつも深刻な顔してるけど
その割に
取り越し苦労が多い
ゾウ部の女性社員は
いつも大量の書類を
シュレッダーにかけてる
朝から晩まで
それはヤギ部に回されて
処理される
わたしの彼はカバ部
わたしと同じカバ部
カバが好きなんだって
カバはたくさん食べるし
大きいし
やさしいし
すごく臭い
そんなところが好きなんだって
わたしは彼が大好き
わたしは彼によくなついてる
わたしは半年に一度くらい発情して
彼の上に乗る
彼はわたしを撫でる方法をよく知ってる
わたしはもう
彼じゃないとダメなの
でも普段は
まいにち挨拶を交わすだけ
そしてカバ部の仕事を一緒にするの
カバのプールを掃除していると
彼が見にくるの
「よし」と言われないと
わたしは帰れない
わたしはカバのうんこを
すみずみまでこすり取り
プールを清潔に保つ
彼に頼まれたことなら
わたしはなんでもできる
彼がキリン部のバイトの女の子と
いけないホテルに行ったときも
こっそり伝票を切ってあげたし
接待で「コグマソープ」や
「イメクラタヌキツネ」に
行ったときだって
ちゃんと
経費で
おとしてあげた
大好きよ
ほんとに好きなの
だから、
わたしはいつでも彼を許せるの
年に一度の
カバ部の忘年会の日
彼は別の女の子の肩を抱き
夜の闇に紛れていった
その後ろ姿を見て
わたしはさすがに
ちょっとさみしくなった
でも次の日の晩
彼から電話がかかってきて
「俺はお前が好きなんだ
カバの次にお前が好きだ」
と、言ってくれたから
また許しちゃった
友達にはバカだって言われるけど
わたしは彼が大好き
カバに情熱を傾けてる彼が好きなの
だから
これからもずっと
助けてあげるね
助けてあげるね
初出 現代詩フォーラム 20040619
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