同い年の有名人
この前ある有名女優さんを接客した。20年以上第一線で活躍する彼女は、私にとっては「自分と同い年の有名人」という、少し特別な存在でもあって、気付いた時は「わあ、本物だー!」と素直にテンションが上がったけど、でもやっぱり、憧れとやっかみが入り交じった複雑な感情がわいた。
私はこの20年一体何をやってたんだろう?
同じ年数を生きてきた彼女は、有名ブランドの服をカジュアルに着こなして、かわいい子供を連れて、旦那様である、俳優さんの名字を名乗った。
彼女は何もかも全部持ってる。女の人がほしいと思うものは全部。それに比べて私ときたら!ブラック企業であり得ない低賃金で馬車馬みたいに働かされて、逃げだすことを考えつつ、来月の生活費の不安で、日々歯ぎしりしている。この前服を買ったのは、美容室に行ったのは、いつのことだったかな?すぐには思い出せない。
そんな私の前に、ぴかぴかできらきらな彼女はするりと現れた。この世界はなんて不公平なんだろう。とかなんとか、かなり卑屈な気持ちになったよ。
妬ましいなら欲しいと認めろよ。
結局はそういうことだ。彼女はきっと、十代半ばで決断して、ずっとずっと決断し続けて、いろんなものと戦い続けて今がある。私も私の決断の結果今がある。
あんな有名女優と自分を比べるなんて、おこがましいぞ!と人は笑うかもしれない。でも、同い年だと思うと、比べずにいられない。テレビ画面じゃなくて、生身の実体を持った彼女の、普通のプライベートな日常を垣間見てしまった。別に女優になりたい訳じゃないよ。でも、職業は違っても私もこんな風にぴかぴかになりたいし、なってもいいはずなんだ、と思った。
この世界にプリンという食べ物があると知らない人は、プリンを食べたいとか、プリンを食べられなくて悲しいとか、それすらも思わない。さしずめ今までの私は「プリンを知らない人」だった。でも、もう知ってしまったんだ。この世界にはプリンという、美味しくて素敵な食べ物があって、望めば自分も手に入れて食べる事もできるって。
わたしも、プリンが、食べたいんだーー!
そうだ。私も絶対プリンを買って食べよう。誰に妬まれてもかまわない。私はプリンを食べるんだ。