掌編小説「タオル」
首を吊った。
クローゼットに、タオルをかけて結んだだけの、丈夫とも言えない、すぐに取れそうなもので。
それでも自分の身体は、ぶら下がろうとした。
首に食い込ませる勇気はさすがになくて、顎を乗せるようにしてぶら下がった。
けれど、顎がタオルに食い込むだけでもかなり気持ちが悪い。
目玉が飛び出そうだ。
「僕が死んだら、誰が見に来るのかな」
等と考えていたけれど、クソ上司が見に来ることしか考えられなくて、考えるのが面倒になった。
しばらく、うんうん言っていたけれど、結局死ねなくて、やめたい職場へ出勤した。
上司にいつもより激しめに怒られながら、「ああ、あそこで死んどけばよかったな…」と考える。
でも、今度は苦しくなくて、一瞬で死ねる方法で、と思った。