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うれしくって抱き合うよ_210131

・わたしは彼女に、暴言を吐かれたことがない。冷たくされたこともない。八つ当たりはちょっとある。でも、ほとんどの場合、わたしに向けられていたのは笑顔だった。

・彼女に初めて会った日のことを覚えている。あなたのメインの担当はわたしだと名乗ったときの、すこしだけ警戒した視線。不必要なほど礼儀の正しい子だった、事前情報がうそみたいに。

・いろんなよくない話を聞いていた。けれど、わたしがみている彼女を正面にして関わろうと思った。目の前にいるのは、大人や環境に傷つけられたひとりの少女だ。

・「1ヶ月だけだったのに、どうしてそんなに大事にしてくれるの?」今日そう聞かれた。彼女を担当したのはきっかり1ヶ月で、わたしは年度を超えて担当を外れたので。

・どの担当児童から問われても同じことを答えるけれど、わたしは自分が持った子は最初から最後まで、担当を離れてもわたしが生きている限りずっと特別。どの立場でも、あなたのしあわせを祈ってる。あなたが、わたしが、どこにいっても。どんなあなたでも。

・「脱兎さんのこと、わたしもよく覚えてるよ。」

・1ヶ月手をかけたし目をかけたつもり。部屋にも何度もいった。空気の読める子だから、読みすぎて苦しんでないか、人間関係に息切れしていないか。そして、いいところがたくさんあるのだから、尖っている部分がすこしでも丸くなるように。それが彼女がこの世で呼吸しやすくなるために、必要なことだと疑わなかった。

・届いてると思わせてくれたこと、お世辞でもうそでも勘違いでもうれしかった。元気でどうかしあわせで、できればあなたの賢さで無作為にひとを傷つけないで。

・やさしく、やわらかくあってほしいです。それだけなの。

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