「ストーリー」へ辿り着くのに疲れたアナタに。『エリオスライジングヒーローズ』
『エリオスライジングヒーローズ』との出会い。
一つ白状することがある。最近、『Fate/Grand Order』(以下FGO)をロクに遊べていないのだ。
それもこれもストーリー攻略が大変なせいなのだ。いや、遊んだことがある人なら分かると思うが、あれ、辛くないか?
ストーリーそのものの面白さについて議論するつもりはない。私自身奈須きのこの作品はどれも大好きだし、FGOのストーリーについても満足している。いるのだが、そこに辿り着くまでの道のりが本当に厳しいのだ。
FGOは、ストーリーにおける戦闘の難易度がかなり高い。課金して手に入れたサーヴァントを駆使してもリソースを割かずにクリアするのはかなり骨が折れるし、正直そっちに神経を割かれすぎてストーリーをまともに楽しむ余裕が持てない。最近はストーリーのクリアを前提条件としたシナリオも増えてきたし、どうしても「ストーリーをクリアしないといけない」という強迫観念が強くなってしまう。こうなるともう安心して楽しめないし、一時期はアンインストールしてしまうこともあった。そんなこんなで、私はスマホゲー全般から一時的に足を洗ってしまっていた。どのみち他のスマホゲーも似たような難しさをストーリー攻略に用意していると考えると、どうしてもやる気が出なかったのである。
そんなある日、知り合いからとあるスマホゲームをオススメされた。『エリオスライジングヒーローズ』(以下エリオスR)だ。
スマホゲームとしてのジャンルはヒーロー育成コマンドバトルRPG。プレイヤーは、「ニューミリオン」という街をヒーローによって守る組織「HELIOS」の司令として、ヒーローと共に街を守っていく。ゲームの中身はというと、ガチャ等で手に入れたヒーローを強化し、ターン制のバトルを戦っていく……要するにシステムそのものはFGOと然程大きな違いの無いゲームと言える。
それを理解した上で私がこのゲームを遊ぶことにした理由は幾つかあるのだが、まず一つは「オートバトルシステム」があるということである。ついでにバーストスキル……FGOで言うところの宝具の演出スキップまで実装されている。人にオススメされて遊ぶ上では割と見逃せないポイントだと言える。だってFGOは両方ないんだもん……。ついでに「ストーリーが読みやすい」という話まで聞いては断る理由もない。私自身、「ヒーロー考」という文章をジャンル不定カルチャー誌『アレVol.1』『アレVol.2』に投稿している(そうですね、宣伝です)。ヒーローという話を聞いては、興味をそそられてしまう部分もある。
というか……何より……公式HPのサイトにあるキャラクターがそのまますぎるのだ。所謂主人公的な造形の鳳アキラは、真っ赤な服を着ていて直情的な性格の持ち主、ヒーロー能力名がスピットファイア。ゴーグルがトレードマークのビリー・ワイズは陽気な性格の情報屋で、ヒーロー能力は電子の糸を操るサイバーストリングス。なんというか、想像しやすいテンプレートをしっかりなぞる形で外側のスペックが構成されている。まぁ、実際のストーリーでは多少ずらしたことをやってくるという想像ぐらいは付くが……それもかえって何か気になる。
そんなこんなでとうとうインストールしてしまったエリオスR。早速プレイをしてみることになったのだった。
エリオスRを遊ぼう!!
遊んでみて最初に実感したことですが……オートバトルシステムって……本当にいいですね……。
もういいからストーリーを気軽に読ませてくれよ……とポッキリ心の折れていた私を救うかのようなシステム! ちょちょいと強そうな味方でチームを編成して後はシステムに任せるだけ! なんならそのチーム編成すら自動でやってくれるシステムまで付いているので、その気になれば最早何も考える必要がない。アァ……気が楽だ……。
そんなんでストーリークエストってクリアできるの? と疑問に思う人もいるかもしれないが、何とこのゲーム、ストーリーモードまで難易度選択が設定可能。つまりは全部一番簡単なノーマルモードにしてしまえば、弱い味方でチームを組んでいても攻略が可能なのだ。こんなに楽でいいんですか!?
そんなにストーリーを簡単にクリアできてしまうようでは、ストーリーとゲーム体験があまり一致しないのでは……? と思う人もいるだろう。これに関して、エリオスRは一長一短ある仕様となっている。クエスト部分とストーリー部分が、ごくごく一部を除いて殆ど連動していないのだ。ストーリーはフルボイスの会話劇で、必要なクエスト分を全てクリアしてしまえば最初から最後までシームレスに視聴することができる。FGOではクエストとストーリーの連動性が寧ろキモだったが、そこを敢えてオミットしたことで、エリオスRはストーリーをクエストに縛られることなく自由に描くことが可能になっている(もっとも、ここに関してはまだまだFGOの方が演出・シナリオの自由度共に質が高いのも事実ではある)。
この仕様は期間限定イベントのストーリーに関しても同様で、必要なポイントさえ稼げば(ちなみにどのクエストも全話視聴分の必要ポイント量は結構低い)ストーリーを容易く全話視聴できる。その上、なんと「ストーリーキー」まで実装済み。これは特定のイベントか月ごとの課金(月内の購入限度あり)で入手でき、なんと期間限定イベントのストーリーを一話ずつ解放できてしまうのだ。既に終わってしまったイベントでも見ることができるシステム! 本当にいい!
総じて、エリオスRはストーリーが読めるようになるまでの敷居を大分低くしてある。これは後述する内容にも関わってくるが、本作は、プレイヤーにとってガチャを回す理由であるヒーローの総人数が16人と非常に少ない。数多くのキャラを生み出すのではなく、16人の様々な側面を別キャラとしてカウントさせることで、新規ガチャの目玉としている。それは同時に、彼ら16人の基本的な魅力を素早くプレイヤーに体験させなければ、ガチャによる売り上げには直結しないことを意味する。だからこそエリオスRはストーリーの敷居を可能な限り低くしたのだろう。割り切り方としてはかなり面白い。
シナリオ、面白いよ?
さて、システムとストーリーの関係に関する説明はこれで十分だろう。最大の問題は、そこまでして敷居を低くしてあるストーリーが面白いのか? ということだ。
個人的には……良いと思います。まず、とにかくストレスフリーに読めるというのが本当に良い。先程ストーリーはフルボイスといいましたが、これも各章の第一話から最終話までオート再生が可能。ボイスも事前に一括ダウンロード可能で、シームレスに楽しむことができる。なんなら今こうして原稿を書いているときも作業用BGMにできてしまうくらいには手軽に再生できます。何よりこのストーリーが読めるようになるまでの道のりが楽だからね……それだけでストーリーにバフがかかってるよね……。
ストーリーの内容は、ヒーロー達と彼らに敵対する組織「イクリプス」との戦いを中心として描かれる。ヒーローについては、後輩の指導にあたる先達である「メンター」と、新人としてメジャーヒーローを目指す「ルーキー」に大きく二分することができる。彼らはその個性が比較的ハッキリと分かれており、そして外見や表面的スペックの癖が少なく、恐らくは万人受けしやすいキャラ付けをされている。少ないキャラ人数で最大の効果を狙ったものであろうが、そのおかげで外見によって違和感を覚えることが少ない。要するに全員イケメンなのだ。それも癖の少なめなイケメンに見える(中身はともかく)。そのおかげで事前の違和感があまりない状態で、素直にストーリーに入っていけるのは割と大きな利点と言える。
ストーリー内では敵との戦闘も描かれはするが、演出面に力を入れたシナリオというわけではないため、ヒーロー同士の掛け合いが最大のウリということになる。ゲームシステムにおいてもヒーローの組み合わせ次第で性能が上がる「リンク」システムが存在する辺り、こうした面白さは開発側も狙ったものだろう。ほら、熱血キャラとクールキャラの共闘とか、先輩ヒーロー達の夢のタッグとか、そういうの、好きでしょ? そういったヒーロー同士で繰り広げられるあれやこれやを存分に楽しめるのが本作の一番面白いところだ。
各ヒーローは「セクター」と呼ばれる「ニューミリオン」の防衛担当箇所によってチーム分け(まずはここからカップリングを探せということらしい)をされているが、その枠を超えた共闘や連携も当然可能で、好みの組み合わせを見つけ出すのはそこまで難しくない。ここでも先述した癖の無さが良い方向に働いている。とにかく見た目からの嫌悪感が少なく済むため、色々な組み合わせややり取りを楽しみやすいのだ。
よし、ここまで書いたんだからそろそろ私の好きなキャラ……というか推しの話をしてもいいわけですよね?
ビリー・ワイズとグレイ・リヴァース。グリーンイーストというセクターのルーキーヒーローコンビである。明るく陽気なビリーと暗く内気なグレイ。二人は出会った当初から好相性で……というか、コイツらだけ恐らくゲームのジャンルが違う。なんだろうね、キャラの好感度というかね、矢印が初っぱなから全力でお互いに向きすぎなんだよ。この二人の会話が始まると、そこから30~50%くらいの確率で「アハハ……」とか「フフフ……」とかそんな感じのはにかんだ会話が始まる。互いにプレゼントを贈るとか、家族の紹介をするとか、一つひとつのシーンに何かおかしな文脈が走っている。まぁ絶対に意図的だろうけど、他のキャラの組み合わせをどう掘り下げてもこんな甘々にならないんすよ……。個人的にはこのゲームの最大火力CPなので、まぁ、興味があったらこの二人に触れてみるのをオススメします。二人が主役を張るストーリーは第一部の3章と8章なので、そこまで進めましょう。私は頑張った。君たちも頑張れ。
終わりに。
というわけで、『エリオスライジングヒーローズ』の紹介記事でした。キャラクターの魅力へとプレイヤーをいち早く辿り着かせるための工夫が良く行き届いた作品で、気軽にスマートフォンゲームのシナリオに浸ってみたい人に結構オススメできます。ちなみにこのゲーム、ドラマCDやグッズ、イベントなんかも結構開催されています。音泉でラジオ番組まで配信されており、作品に興味が生まれたらそうした方々のアレコレにも手を出しても良いかもしれません。私は凄く便利な折りたたみ収納ボックスを買いました。グッズ感はない……けど凄く良い品……。
今年で2周年を迎えた本作、12月には大型アップデートを控えているようで、まだまだ先の楽しみなタイトルです。良かったら是非一度、遊んでみてください。知名度的にはまだまだ不安なところも多いので、もしこの記事を読んでゲームに触れた方は、同じように感想を書くときっと喜ばれます。書いてね。
ではでは。