2023年7月の日記

・7月が終わろうとしているなんて、と書いたところで、こんな暑い季節早く過ぎ去っていただいてまったく差し支えないということに気づく。人間の生きていける気温ではない。この星は少しずつ、でも明らかに人間の住みよい環境であることをやめつつある。こないだ30℃くらいで「涼しいな」って思いましたからね。

・「鶴丸さんの分身」を寄稿した『代わりに読む人』の打ち上げに参加しました。ほぼ全員初対面で緊張したけど楽しかった。
 松尾模糊さんに褒めていただいて嬉しかった。オススメいただいたジェフリー・フォードは昔から気になってたので読もう。貝楼諸島に続いてご一緒してるので謎の親近感を覚えていたが、たぶん趣味というか好みのエリアも色々かぶっている予感がいたします。
 蛙坂須美さんとはずいぶん昔から相互フォローだったので、お会いできたのが人生の伏線回収のようだった。流れで我が生涯唯一の謎体験をお話しして、「実話怪談作家にネタを提供する」というゴールドトロフィーを実績解除しました。使える話だとよいのだけど。
 いい具合に酔っ払った数学者の松尾信一郎さんからは、「なんのために小説を書くんですか?」という火の玉ストレートの質問を投げられて、久しぶりにきちんと文芸について考えた。思考形式が全く違う人と真剣にキャッチボールするの楽しいですね。
 そのほかにもコバヤシタケシさんに誌面デザインの話をうかがったり、柳沼雄太さんに校正の話をうかがったり、伏見瞬さんにスピッツ論買ったけどまだ積んでることをお詫びしたり、はいたにあゆむさんと一言も話してないのに握手だけしたり、牧野楠葉さんとタバコを吸ったりしました。得難い夜でした。
 それにしても、このメンバーを集めて編集した友田さん、やっぱりすごいです。そろそろ全国の書店にも入荷しているのでぜひお買い求めくださいまし。

・その2日後、打ち上げの場でもいろいろお話しした深澤元さんが埼玉は霞ヶ関で営む「つまずく本屋ホォル」に伺う。なんと拙著『UFOを待っている』『エイプリルフールの国』『スーパーはもう氷河期』をお取り扱いいただけることになったのですよ。自家通販と文フリ以外では初、というかお店で売っていただくのが初にして唯一です。
 炎天下の歩道をしばらく歩くといい具合にひなびた屋根付きの商店街があらわれて、しばらく進むと不意に本棚が置かれている。


 入ると新刊、古本、ZINEのささった本棚がにょきにょき立ち、どうにかすれ違えるくらいのその木立の隙間にいくつかのテーブル、奥にはカウンターと上階への木造の階段が見え、何やら秘密基地のような、友達の家に来たような不思議な居心地の良さがある。この場所をスタートさせた吉田さんもいらしたのだけど、建築をやってらっしゃるそうで、この独特の雰囲気は彼の手によるものだろうか。
 そこで本を納品したら、サイン本を作ってほしいとのお申し出をいただいたので勢いで書く。書くためにめくったらよりによって2冊も乱丁本が見つかって若干凹みつつ、あらためて己の字の下手さをしみじみと思い知る。このせいでかえって売れなくなったら申し訳なさすぎるのだが、これを書いたのは手にとったあなたと同じく日々を生きる人間なのであります感は強まったのではないでしょうか。ぜひホォルさんでお買い求めください。
 買い逃していた新刊やら文フリで買い損ねた本やら気になる古本やらをわさっと買って帰る。本を売って本を買う。

・その日は所沢と「淵の森」にも行ってみた。とある理由で宮崎駿について考えねばならないのです。暑さで干からびそうになったけど色々収穫はあった。この辺の話はまたいずれ。


 ネタバレくらう前に見たかったので『君たちはどう生きるか』も初日に見てきた。ここしばらくの宮崎作品同様にいびつな作品ではあったけど、個人的にはスタンディングオベーション。宮崎駿の魂の庭を見た。

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