シンガポール バードウォッチングのすゝめ
COVID-19のパンデミックで世界中が大変なことになっている今日この頃、シンガポールは4月初旬からCircuit Breakerという外出禁止・行動制限の措置が取られ、6/22よりそのPost Circuit Breaker Phase2に移行し、ようやくレクリエーション目的の外出・店内飲食・少人数での会合が可能になりました。Circuit Breakerって何?ロックダウンと違うの?というご質問にお答えすると、極めてnearly equalです。募集じゃなくて募ってるーくらいの実質的な違いだと思いますが、為政者の言葉の響き・ニュアンスの人々に与える心証が大事、ということと理解しております。
そんな中、日本では非接触型屋外アクティビティとしてキャンプが脚光を浴びてたりするのですが、シンガポールに住む自分がオススメしたいのはバードウォッチングです。シンガポールは摩天楼がそびえ立つコンクリートジャングルのイメージをお持ちかもしれませんが、Garden Cityを自ら標榜(現在はA City in a Gardenに進化)する通り、植樹と緑化に大変積極的に取り組んでいるのと、都市計画に沿って商工住のエリアが整備されていることから狭い国土ながら緑豊かな公園と手付かず(風)の自然があふれており、鳥の生息地としては絶好の環境を有しています。
それゆえにシンガポールではバードウォッチングがポピュラーな趣味として愛好されているようで、公園などでも迫撃砲のような巨大な望遠レンズと一/三脚を担いだ人々を見かけることも多く、Instagramでも一定規模のクラスタを形成しています。Circuit Breaker中のバードウォッチャーインスタグラマー達は外出禁止で新しく鳥を撮影できないので、過去に撮った写真を蔵出ししてアップしており、ドラマの再放送や特別編を流すテレビ局みたいだなと思って見てました。
自分はどちらかというと自然を歩き回る方をメインのアクティビティとしていて、鳥の撮影はついでということもあり、カメラは一眼レフではなくNikonのB700を鳥の撮影に使ってます。画質はその道の人からすればおもちゃみたいなものですが、光学60倍ズーム(35mm換算24-1440mm相当)のレンズで570gという機動力なのでvalue for moneyは高いと感じました。また併せてPeakDesign キャプチャープロカメラクリップをバックパックのストラップに装着しています。自分は一定の場所にとどまり鳥を待つスタイルではなく、山野を歩きながら見つけた鳥を撮影するので、鳥を視認してからカメラを構えるまでのスピードが生命線である一方、ストラップで首から下げて歩くとカメラが胸に当たって跳ねたり、樹木・岩石にぶつける惧れもあるので、このアダプターはハイキングと撮影の両立を快適にアシストしてくれます。
自分は元々鳥の名前に詳しかったわけでは無いので、撮影した鳥の同定には一苦労でした。以下のサイトではシンガポールで見かける鳥のかなりの部分をカバーしているので重宝しています。ここに載ってない鳥を見つけたならそれは相当珍しいか、逃げたペットかもしれません。
ここからは自分が訪問したことのあるシンガポール島内のオススメの観鳥スポットを自分が撮影した写真とともに(従ってクオリティはそれなりに)紹介したいと思います。
1. Bishan-Ang Mo Kio Park
シンガポール島内ほぼ中央に位置する東西に細長い公園です。公園の中を小川が貫いていることから水鳥の類もよく見られ、樹齢の高い巨大な木も多いことからフクロウの目撃情報もあります。Purple Heronは高確率で出逢え、道沿いの木の枝にCollared Kingfisher, 池のほとりの柳にStork-billed Kingfisherなどカワセミの類も出会いやすいです。アクセスが良いので自分が頻繁に訪れる公園の1つです。
2. Garden by the Bay - Bay East Garden
"East"というのが最大のミソです。MBSの足下で、フラワードームやスーパーツリーなどフォトジェニックなスポットのある方ではなく、川を挟んで対岸にあるひっそりとした公園です。最寄りのバス停やMRT駅がなく、Grabで直接寄せるかMRT Promenade駅から長距離歩くしかないこともあって、近隣住民の利用が中心のため、人口密度が低く、自然豊かな公園ではないものの鳥との遭遇率はとても高いです。カワウソの目撃情報も多いです。川沿いにはサイクリングロードも整備されているので自転車をお持ちの方にもおすすめです。自分のアイコンのナンヨウショウビンはここで撮りました。
3. Pasir Ris Park
シンガポール島の北の端、ジョホール海峡に面した広い公園です。MRT East West Lineのチャンギ空港ではないもう一つの終点、Pasir Ris駅から徒歩圏内とアクセスは良好です。駅裏手すぐのPasir Ris Town Parkと間違えやすいので注意です。公園敷地内にはマングローブ林もあれば芝生の広場もあり、巨大なHeritage Treeも点在しています。割とありふれた鳥が多いですがここでは運良くマレーモリフクロウ(Spotted Wood Owl)にも出会えてカメラに収めることが出来ました。公園内にキャンプサイトや近隣にリゾートホテルもあり、一般客の国内ホテル宿泊解禁の暁には小旅行にも良い場所です。
4. Singapore Botanic Garden
閑話休題的に定番どころにも言及します。多種多様な植生と生物も手伝って幅広い種類の鳥に出会えますーが、ひとくちにボタニックガーデンと言っても広大な敷地の中で観鳥に向いている地形とそうでないところがあります。止まっている鳥を狙うのであればKeppel Discovery WetlandsかSymphony Lakeが良いと思います。その他の場所は木が密集していて目視が困難だったり、低い木でそもそも鳥が止まらなかったりするので、あまり安定的に鳥を見つけられないと個人的に感じています。(訪問回数の割には良い写真をあまり撮れていません…)
5. Sungei Buloh Wetland Reserve
言うまでもない定番スポットですが、やはり12〜2月の北半球の冬でシンガポールの雨季の干潮時に訪れるのが醍醐味です。潮の満ち引きは日によって時間帯が異なるので訪問予定日の潮見表は確認しておきましょう。水鳥は白いサギか茶色いシギの類ばかりで見飽きてしまうのですが、水辺なのでカワセミ類と〜ゴイと呼ばれるずんぐりしたサギ科の鳥との出会いも楽しめます。入り口から遊歩道へ続く橋の上は定点撮影してるカメラマンが多くたむろしてます。またワニも頻繁に目撃され、木を登るカニMangrove Crabや干潟を跳ね回る大型のムツゴロウのようなMudskipper、同じく干潟で蠢くカブトガニなどにも会えるので、鳥が目当てでない方にも、本格的なマングローブ林を手軽に体験するにはとても良い場所です。ちなみにSungei Bulohを「スンゲイ」と発音すると聞き取ってもらえないことが多いので、「スンガイ」と発音するのがポイントのようです。
6. West Coast Park
MRT Haw Par Villaから公園東端の入り口まで徒歩13分程度、NUSや日本人学校クレメンティ校の真南にあり、バスでのアプローチの方がベターです。東西に細長い公園で南北は狭く、北はWest Coast Highway、南はコンテナヤードが視界に入り、一見騒がしそうですが、比較的人気が少ないので鳥は堂々と木に止まってます。直線的な公園なのでサイクリストにも人気のようです。西の端にはちょっとしたマングローブ林があり、水鳥がいることもあります。
7. Lorong Halus Wetland
ややマニア度が高まって参りました。厳密に言うとこの場所そのものというより、Cony Island East Entranceから川沿いのLorong Halus Wetlandに向かう道が鳥の楽園になっています。なお周辺は人気が非常に少ないのでシンガポールといえど北部ということもあり、日が暮れたら近づかない方が無難です。アクセスはPunggol LRTのRivieraが最寄りですが、お近くにお住まいでなければタクシー/Grabなどで行くのが時間の節約になるかと思います。近くのWhisk & Paddleというカフェはテラスからの眺望が素晴らしく、すごく雰囲気が良いのでここにきた時はほぼ必ず寄ってます。見られる鳥もややレア度が高く、付近に葦が生えていることから葦の葉を材料に唾型の巣を作るBaya Weaver, Village Weaver, Golden Backed Weaverといった鳥が見られるのが特色です。また歩いている途中、突然カワウソが川から上がってきて道を横切ったりと自然を感じられます。
8. Kranji Marshes
上記に挙げた中では最も訪問難易度が高いです。MRT North East LineのKranji駅から循環シャトルバスで向かうことができますが、湿地自体が平常時は立ち入り禁止となっておりガイドツアーでなければCore Conservation Areaに入ることができません。ガイドツアーの予約はNParksのウェブサイトをご参照。ゲートを開けて保護区内に入ると見渡す限りの湿地が広がり、水鳥のほか、カワセミの類も見られます。そしてバードウォッチャーたちのお目当ては鷹などの猛禽類です。自分が参加した時も発見したのですが、小さすぎて種類を判別するのが困難でした…写真が全体的に遠目かつ曇り空で魅力を伝えきれてない気がしますが、とても静謐で神秘的な場所です。Kranji Marshesが保護区に指定されたのは90年代と比較的新しく、人工的な構造物が無人の自然の中に打ち棄てられているのが廃墟のような雰囲気を醸しています。
その他オススメする観鳥スポット
Bukit Batok Nature Park
Bukit Timah Nature Reserveの西側、旧フォード工場跡地の近くにあるひっそりとした公園です。敷地は小さめですが山に抱かれ、採石場跡の池もあり自然を感じられる良い雰囲気です。カメラを買ってからあまり訪問してないのですが、撮影に向いた開けた場所もあり、White-crested Laughingthrush(ハクオウチョウ)には高確率で出会えます。また鳥では無いですか、Colugoという珍しい大型のムササビのような動物の生息地としても知られます(写真2枚目)
Jurong Lake Garden /Chinese Garden
自分で撮った鳥の写真が無いのでInstagramの引用のみです。Jurong Lake Gardenは水辺、木々、人気の適度な少なさなど総合的に観鳥向きの公園で、バードウォッチャー達もナイスショットを連発してる場所です。CBDからはやや離れていますがMRT Chinese Garden / Lakesideの二駅利用可能なのは好立地と言えます。完全に余談ですが、MRT Chinese Gardenの駅前南側は広大な原っぱになっていて、南アジア出身者達の草クリケットのメッカになってます。(Google Street Viewを見るとマウンド?やバッターボックス?のところの芝が剥げているのが分かります。)草クリケットの選手達が防具もグラブも装備せずにプレーしているのを見るにつけ、インド人のクリケットに対する情熱はさすがだなと常々思います…
Pulau Ubin (ウビン島)
カメラを持って歩き回ってないのですが、島内に池や湿地、マングローブ林がありその周辺は撮影に向いています。それらのポイントを除くとジャングルの中の道なのであまり歩きながら鳥に出会うことは少ないように思います。ウビン島といえば野生の猪で、本島で悪さをする輩とは異なり、すっかり観光客に餌付けされて人馴れしてます。あと野生のドリアンも生っていて、シーズン中には地面に落ちた実を拾い集める人が目立ちます(持ち帰りはOKなんでしょうか…)
Cony Island (Serangoon Island)
前述のLorong Halusと立地はほぼ同じですが、Punggol Pointを起点にできるのでアクセスは若干良いです。島内に入ると鳥の鳴き声が響き渡っていて相当数の個体がいるはずなのですが、島全体が森のようになってるので視界はあまり良くなく、以下の写真のような結果になりがちです…代わりといってはなんですがOriental Garden Rizardはそこら中にいます。むしろ島に入らずに島の南側の川沿いを歩いた方が止まっている鳥をはっきりと捉えやすいと思います。
St. John's Island
Marina South Pierからボートで渡る、ほど近い島で、一応シンガポール領です。島内はビーチとヨットハーバーがある他はこれといったアトラクションやランドマークもない代わりに緑が多く、のんびりした雰囲気です。視界が開けた場所が多いため鳥の撮影にはむいているのでカメラを持ってもう一度訪れたい場所の一つです。あとは野良猫が多数うろついていたり、浜辺には片方のハサミだけが大きいシオマネキも見られます。
バードウォッチングに向いていそうで向いてない(と個人的に思う)場所
鳥の撮影に向いているのは①高い木が生えている②見渡しが良い(森や林の中ではない)③池や川があるーの3点を満たしている場所なので逆にこれに当てはまらない場所は鳥を目視確認できる確率が下がると思います。ただしこれは鳥が生息していないという意味ではなく、根気よく張り込んでいれば見られないことはないです。
Garden by the Bay
観光客含め来園者が多すぎ。Satay by the Bayというホーカーセンター横のKingfisher Lakeは常にカワセミ目当てのカメラマンが貼り込んでますが、定点観測向きの場所なので、普通に歩いていて鳥に出逢える確率は高く無いと思います。あとあまりに人工的過ぎる公園なので個人的に自然散策という気分になれないことも足が遠ざかっている要因です。
MacRitchie Reservoir (Central Water Catchment)
自然豊かな場所ですが、歩道が池沿いの木道か林の中に限られており、止まっている鳥に出会いやすい地形ではないと思います。猿やリスには良く出くわしますがここを散策中に鳥を撮れたことがありませんでした。なおトレイルウォークorランをするには最高に気持ちいい環境なので、観鳥目的ではなくともよく訪れる場所です。
Bukit Timah Nature Reserve (Bukit Timah Hill)
ここも基本的に空が見えないような山道かつ狭い道に人通りが多いので鳥を見つけにくいと感じていますが、バードウォッチャーの投稿する写真を見てると市中の公園では見られないような種類の鳥が撮影されているので、意識的に探鳥すれば成果を上げやすいのかもしれません。なおここBukit Timah Hillはシンガポール最高峰でもあり、在星中の方はぜひ記念に一度訪れてみた方が良いと思います。標高164m、富士山の1/23の高さですが。
最後に
異様に長い投稿になってしまいましたが、これまで自分が訪れた場所を思い返して、改めて撮った写真を見るとシンガポールの自然の豊かさに感じ入ってしまいます。シンガポールは数年住むと飽きてしまうと言われがちですが、街を飛び出し、自然に飛び込めばまた違った一面を垣間見れますので、これを読んで行ってみたいと思われた場所が1つでもありましたら、幸せこの上ないです!それでは皆さまご安全に。Stay safe!
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