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小説 高校生戦隊ヒーローズ 7. 最初の1週間を終えて

4月8日、土曜日。6時限目の授業、武術教練が終わって教室に戻った。今日の予定は、あとは10分のHR(ホームルーム)を残すのみだ。

「1週間終わったあ~!1週間って、こんなに長かったっけえ~?」

僕が自分の席で机にぐてっとだらしなく伸びていると、頭をこつんと叩かれる。「あ痛っ。」

「こらっ、まだHRが残ってるよ、しゃきっとしなさい、しゃきっと。」

いつの間にか教室に入ってきていた担任で数学担当の中村先生が目の前に立っていた。

「ふぁ~い。」

気の抜けた返事を返しながらゆっくり身体を起こす僕に苦笑しながら中村先生は教壇に移動する。

「さて・・・最初の1週間、お疲れさま。滝川も言っていたけど、きみたちにとって長い1週間だったと思います。中学校までは週休2日だったでしょうし、1日の授業も5~6時限までだったでしょう。他の高校と比べてもハードなスケジュールなのは確かです。一般的な普通科高校3年間で学ぶ内容を、実質2年で終えるくらいのペースで授業が進みますからね。」

先生が言葉を切って教室を見回すと、「ホント、わかってたつもりだけどすっげえしんどかったあ~」「これが毎週続くの?俺過労死するんじゃない?」「とりあえず今すぐ寝たい・・・」などあちこちから声が上がる。
それらの声に頷いて先生は続ける。

「中学から高等学校に進学、寮生活開始という環境が大きく変わったところに、時間的にも内容的にも中学校よりずっとハードなスケジュールですから、大変だと思います。でも1カ月もすれば慣れてきます。先輩たちも同じように乗り越えていますからね、きみたちにだってできます。でも今日、明日はゆっくり身体を休めることをお勧めします。帝都に来たばかりで遊びに行きたい人もいるかもしれませんが、きみたちはこれから4年間ここで過ごします。まだ時間はたっぷりありますから。来週に備えて、今はゆっくり休みましょう。」

特に不満の声は出なかった。それだけ皆、疲れ切っているのだろう。

「さて、それじゃあHRを終わりにしましょうか。滝川、号令を。」

クラス委員長を任された僕に、先生が指示を出す。

「はい。全員、起立。・・・礼。」

僕たち1年生全員にとって、おそらくこれまでの人生でいちばん長かった1週間が終了した。


「滝川、今夜ヒマ?」

後ろの席の田代が尋ねてくる。

「うん、特に予定はないよ。」

「夕飯の後にさ、軽くサッカーしねえ?オレらの寮の1年の希望者でやるんだけどさ、2人足りねえんだわ。」

「うん、いいよ。もう1人のアテはある?」

「いや、まだない。」

「じゃさ、今から2組行こう。2組の黒田が同じ寮なんだけどさ、中学でサッカー部だったって。」

「ホント?よっしゃ、行こ行こ。」

田代と連れ立って2組の教室に行く。海斗はまだ席にいて帰る準備をしていた。

「海斗ー。」

僕が声をかけると海斗が顔を上げる。

「おっ、行人か。どうした?」

「まず紹介しとくね。こちら、オレと同じクラスの田代。白虎寮所属。」

「よろしくー。」

挨拶し合う2人。僕は続ける。

「今夜、夕食の後に白虎寮の1年生でサッカーするんだって。メンバー2人足りないって言うから、海斗もいっしょにどうかなって思って誘いに来た。」

「おお、いいね、やるやる。あー久しぶりだからなー、ちゃんとできるかなー。」

「よっしゃ、メンバー確保!」

ガッツポーズをする田代。
それから集合場所と集合時間を決めて、僕らはいったん解散した。


夕食後、学校のグラウンドを借りてサッカーの試合をした。僕と同じチームになった天川が同郷ということが分かり、地元の話題で話が弾んだ。また今度ゆっくり話そうと約束して、9時少し前に朱雀寮に戻った。

入寮してから2週間、入学してから1週間。
海斗、田代、七瀬、天川。友達が、4人できた。



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