見出し画像

小説 高校生戦隊ヒーローズ 13. 目覚まし大作戦

翌朝。
僕は6時過ぎに目を覚ました。就寝時刻の10時より早めに寝てしまったから、たっぷり8時間以上の睡眠をとったことになる。うん、気分爽快。

僕は隣で寝ている良介を揺り起こす。

「良介ー、朝だよー、列車の時間があるから、起きなよー。」

良介は目を覚まし、起き上がって「はよ~」と言ったが、枕を抱いて座ったままだ。昨日もそうだったし、朝が弱いのはほぼ確実だろう。とりあえず良介を引っ張って洗面所に行く。洗顔と歯磨きを済ませていくぶんしゃきっとした良介と部屋に戻ると、山中と近藤はまだ寝ている。朝食は7時で、列車の時刻は8時だ。時間的に、朝食を終えたらすぐ宿舎を出た方がいいだろう。朝食前に出発準備を済ませておいた方がいい。

「ほら、山中も近藤も起きなよ、あんまり寝てると朝ごはん食べてる時間なくなるよ?」

良介と同じように揺り起こすと近藤はすぐ目を覚ましたが、山中は起きなかった。

「・・・起きないんだけどこの人。」

僕が言うと近藤が遠い目をする。

「そいつ、起こすのめちゃくちゃたいへんだぞ・・・」

とはいえこのままにもしておけない。僕は揺り動かしたり、耳元で「朝だぞー!」と大声で言ってみたり、はては掛け布団を引っぺがそうとしてみたりしたが、掛け布団を頭までかぶって起きようとしなかった。

「ほんとは起きてるんじゃない?布団から出るのがイヤなだけで。」

僕がそう疑問を呈すと近藤は首を振る。

「いや、どうだろうな。俺の予想だとまだ寝てるな。布団でガードしているのはたぶん無意識だ。」

「めんどくさいな・・・」

僕がつい本音を漏らすと近藤は大きく頷いて「だろ?」と言う。

「近藤は昨日どうやって山中を起こしたの?」

参考までに聞いてみたが、近藤は肩をすくめる。

「起こせなかった。何をやっても。そうでなければ、俺が徹夜する必要ないだろ!」

あ、怒った。こういうのを八つ当たりという。
良介が言う。

「行人、敷布団取っ払ってみよう。」

そこで僕と良介はせーので敷布団を思いきり引っ張り、その勢いで山中を畳の上に転がした。が、山中は掛布団にぐるぐるくるまってしまった。

「ミノムシだね・・・。」

「これでもダメか・・・よし、行人、山中の上に飛び乗ってみろ。」

「え、そんなことしてだいじょうぶ?潰れちゃうんじゃない?」

「布団被ってるし、だいじょうぶだろう。それにもうあんまり時間ないぞ。」

確かに。僕は勢いをつけて山中にの胸のあたりに飛び乗った。

「ぐえっ。」

さすがにこれは効いたようだ。寝ぼけ眼の山中が掛布団から顔を出す。

「おー、やっと起きた、山中、朝だよ、ほら支度して、朝ごはん食べる時間なくなるよ。」

僕は義理は果たしたとばかり、さっさと自分の荷物をまとめ始める。良介しかり、近藤しかり。山中はまだぼーっとしている。結局、山中が動き出すまでにはだいぶ時間がかかり、彼はかろうじて荷物をまとめ終えたもののほとんど寝起きの状態のまま大広間に向かうことになった。


畳が敷かれた大広間にはお膳が人数分置かれていた。お膳の上には炊きたての玄米、わかめの味噌汁、出汁巻き卵が3つ、椎茸とインゲンと人参が添えられた高野豆腐に、八方切りの八朔が2切れ。僕の好みのメニューだ。いそいそと昨日の夕食の時と同じ位置に座る。間もなく教官が前に出た。

「おはようございます、全員、そろいましたね?列車は8時に出発します。朝食後、あまり時間はありませんので、遅れないように。ではいただきましょう。」

時間の都合もあるせいか、教官の挨拶も短かった。全員がいただきますと唱和して朝食を食べ始める。

「俺、高野豆腐あんまり好きじゃないんだよな。行人、食うか?」

良介がそういうので僕は頷く。

「うん!いただく。」

そう言うと良介は高野豆腐を皿ごと僕のお膳に移動させた。

「野菜ももらっちゃっていいの?椎茸の煮たのとか、美味しいよ?」

僕が尋ねると良介は苦笑い。

「あー、俺椎茸も苦手なんだよな、だから全部食べていいぞ。」

「そっか、それじゃあかわりに、出汁巻き卵1個あげる。」

「おっ、やった!」

そんな会話をしている僕らに正面に座った近藤が呆れたように言う。

「おまえら、仲良すぎ。」

それに対して僕と良介は言い返す。

「おまえらはもう少し仲良くしろ!」

きれいにハモった。僕と良介は顔を見合わせてあははと笑う。周囲のクラスメイトたちもいっしょに笑っていた。不機嫌そうな顔をしているのは山中と近藤だけだ。その時僕はこつんと頭を叩かれた。

「いてっ。」

良介が声を上げたので、彼も叩かれたのだと分かった。振り返るとそこには担任の中村先生。

「きみたち、食事中は静かにしなさい。」

原因を作ったのは近藤であって僕たちではない。理不尽だ、と思ったものの、ここでわいわい言うほどのことでもない。

「はーい。」

気持ちのこもっていない適当な返事をする僕に、周りのクラスメイトたちはくすくす笑っていた。


ごちそうさまの挨拶が済むと、僕たちは部屋に戻って荷物を取り、すぐに宿舎を出て駅に向かった。駅に到着するとすでに発車はプラットフォームに停車していた。僕たち士官候補生が乗るのは先頭の車両だ。列車に乗り込み、席に座ったのは、発車の5分ほど前だった。向かい合う4人掛けの席に僕と良介、山中、近藤の4人。僕の隣は良介だ。

「あとは帝都に戻るだけ。演習、無事に終わったかな。」

僕がそう言うと良介は「そうだな。」と頷き、近藤は「終わって良かった。演習自体は、ちっとも良くはなかったがな。」と言い、山中は仏頂面で僕を見て言う。

「無事?冗談じゃない、最悪の目覚めだった。」

「え~、だって山中起きないんだもん。」

そういう僕に、うんうん頷く良介と近藤。

「それとも、起こさない方が良かったか?今頃、誰も残っていない宿舎に一人取り残されていた方が良かったか?」

挑発的な近藤の物言いに、かちんと来たらしい山中が言い返す。

「誰もそんなこと言ってないだろう。あんな乱暴な起こし方はないと言っているんだ。」

「はん、何やっても起きなかったくせに、じゃどうやったら起きたって言うんだ。」

昨夜に続き、またもや口論を始めてしまった。
僕と良介は顔を見合わせる。

「なんか、無事には終わらなそうだな・・・。」

「オレよけいなこと言ったかも・・・。」

「行人が気に病むことないさ。」

そう言って肩をぽんと叩いてくれる良介。ああ、目の前でわあわあ言ってる2人に良介の爪の垢を煎じて飲ませたい。

結局山中と近藤の口論は、教官のげんこつで終わりを告げた。
僕と良介が朝食時にもらった「こつん」ではなく「ごつん」だ。かなり痛そう。
でもしかたない、もう口論が派手過ぎて、みんなの注目を集めていたんだから。




#小説
#一次創作
#創作小説
#連載小説
#男子高校生
#士官候補生
#戦隊ヒーロー
#スーパー戦隊
#ヒーロー
#変身ヒーロー
#少年ヒーロー


いいなと思ったら応援しよう!