
小説 高校生戦隊ヒーローズ 8. 日曜日の朝
4月9日、日曜日。先週同様、朝食前に春行先輩に稽古をつけてもらう。
前半は受け身の練習だ。
礼をした後先週やった受け身を先輩に見てもらい、アドバイスをもらう。続けて先週よりも高度な新しい受け身も習う。
後半は剣道だ。
中学校の授業で少しだけ経験があるとは言え、ほぼ素人同然の僕。これも改めて基本から先輩が教えてくれた。基本をおさらいした後は、剣の素振りだ。
「えっと、これは木刀ですか?わっ、意外と重い。」
竹刀を使うのかと思ったが、先輩が持ってきたのは2本の木刀だった。
「竹刀は筋力をつけるには軽すぎるんだ。」
「あ、確かにそうですね。まだ野球のバットの方が重そうです。」
先輩は頷き、木刀を一本取って、僕の隣に並ぶ。
「こうして並んで、同じペースで素振りをする。さっき教えた前進後退正面素振り、憶えているか?」
「はいっ!一歩前進しながら剣を正面に振り下ろす、次は一歩後退しながら剣を正面に振り下ろす。これの繰り返しです!」
「そうだ。まずは俺が声に出して10まで数える。次は行人が声に出して10まで数えろ。その次はまた俺。交互に10ずつ数えていく。まずは100回だ。いくぞ。」
「はいっ!」
先輩の掛け声に合わせ、先輩の動きを真似て素振りをする。次の10回は僕が声を出す。僕が数えている間、先輩は僕の動作の悪いところを指摘してくれる。
5分ほどかけて素振り100回を終えた。
「先輩の素振り、いい音がします。」
先輩の木刀が空気を切る音が僕の耳に残っている。残念ながら僕はその小気味よい音がまだ一度も出せていない。先輩は笑う。
「その感想は初めて聞いた。あまり音を意識したことはないが、正しい型と速度で素振りをすれば行人にも出せるはずだ。」
「はいっ!頑張って、いい音鳴らします!」
意気込む僕に先輩は笑ったが特に何も言わなかった。いい音を目指して練習しても、武術の鍛錬という目的は達成できると思ったのだろう。
「では終了時間まで素振りを続行だ。途中で休まないで続けるぞ。」
「はいっ!」
それから20分連続で素振りを行った。ライフルを持って1時限まるまる行進した授業の時にも思ったが、僕には上半身の筋力が足りない。今日の素振りも後半はもう意地と根性だけしか残っていなかった気がする。
朝稽古の後は先輩といっしょに食堂で朝食。
僕の好きな、なめこととうふの入った温かいお味噌汁にほっこりしていると、先輩が言う。
「行人、今日は予定あるか?」
「いえ、特にないです。今日は休養日にしました。」
「良かったらこの後、俺と外出しないか?おやつを買いに。」
ストイックな印象の先輩からおやつというワードが出てきたのは意外だった。僕の勝手な印象だが、先輩は3食規則正しく食べて、間食はしなさそうに思えるのだ。寮の部屋でも、間食しているのを見たことはない。
が、お出かけ。魅力的な響き。楽しそうだ。
「はいっ!行きます!」
僕が答えると先輩は微笑む。
「よし。それじゃあ、10時に出発しよう。店が開くのは10時だし、それほど遠くないから。」
「はいっ、分かりました!」
(日曜日のお出かけに続く)
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