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第4章:投げることへの挑戦〜僕がスローイングラボを始めた理由〜

▪️きっかけが転機

学生時代、僕はナンバーエイトとして長年プレーしていた。フォワードの最後尾からボールを持ち出し、前へ前へと進むポジション。思い切り走り、相手にぶつかり、仲間とともに攻め込むのが楽しかった。


明治vs早稲田


しかし、社会人2年目、大きなケガを負った。

忘れもしない、練習中にシャトルランでラインを切り返した際、鈍い変な「ゴキっ」という音がして、足首を脱臼したかと思った。

トレーナーから一言
ひろアキレス腱がない、断裂だ
頭が真っ白になった。

なぜならトップイーストで入団した僕は2年かかってトップリーグに昇格し、「トップリーグで暴れてやる!」と意気込み身体の調子も非常に良かったから。

何も考えられなかった。

手術を終えた瞬間、自分のキャリアが変わるとは思いもしなかった。復帰後のことを考えた時にナンバーエイトとして以前のようにプレーできるのか? チームに貢献できるのか? もう引退しようかな。まで考えた。しかし、「僕がここまでこれたのはみんなのおかげ!こんなことで諦めてたまるか!」そう思い、病室で考えに考えた結果、僕はフッカーに転向することを決断をした。

▪️はじめは全く投げれなかった

初めてのポジション、初めての役割。
そして、ラインアウトスローという新たな課題。

転向当時は無理やりプレーをしていて沢山怪我もした
(テーピングの数が物語)

▪️スロワーとしての葛藤

まっすぐ飛ばない、距離が出ない、思った場所に届かない。試合ではミスを繰り返し、チームに迷惑をかけることが増えた。「あのスローイングが通ってればなー」と言われたことも多々ある。スロワーならわかるがこれ結構”グサっ”とくる。悔しくて、情けなくて、どうにかしなければと思うほど、投げることが怖くなりイップスにもなった。

誰かに手伝ってもらいながら、一人でも、ひたすらボールを投げた。どこに力を入れればいいのか、どうすれば狙ったところに投げられるのか。思考と実践を繰り返す日々。

フッカーとして出れる状況ではなかった。メンバー外だった僕は、メンバーが15対15の練習をしている横で、練習も見ずにスローイングを投げている時もあった。これ絶対にやってはいけないことで、チーム・組織を裏切るような行動。本当に良くないとわかっていたが、心から試合に出たかったので、自分が足らないことにがむしゃらに時間を使った。←絶対に良くないこと!

そして、家に帰っても頭の中はスローイングのことでいっぱい。動画を見てフォームを研究し、部屋でシャドースローを繰り返す。こうやったらもっと良くなるんじゃないか? そんなことを考えていると、うずうずしてきて、次の日もまたクラブハウスへ向かう時もあった。

その繰り返しの中で、
少しずつ、ボールの軌道が変わり始めた。

気づけば、”投げること”そのものが楽しくなっていた。


▪️スローイングラボのはじまり

僕はただ才能があったわけじゃない。
試行錯誤して、投げ方を変えていった。その経験があるからこそ「投げられない」と悩む選手の気持ちが痛いほどわかる。

スローイングラボという名前ではなかったが、実は2021年からこの取り組みは粛々と活動しており、全国の学生から数件という単位ではなく、数十件のお問い合わせがあり、送られてきたスローイングを編集しては返してを繰り返し行っていた。これだけ全国に悩んでいるスロワーがいるなら!とスタートしたのが ”スローイングラボ”です。


スローイングラボでは、ただ投げ方を教えるのではなく、「なぜうまく投げられないのか」を一緒に考え、動画を使ってフォーム分析を行い、自分の体の使い方を知ることで、少しずつ変化が生まれるような事に取り組んでいます。

映像を用いて”なぜ”をしっかりと伝える

スローイングラボに来た選手たちは、最初はうまくいかないことに悩んでいますが、少しずつフォームが変わり、ボールが思い通りに飛ぶようになると、表情が変わっていき、自信がついて、プレーにも積極性が出てきています。

そんな瞬間を見るたび心から思う。
やってよかった!」と。


▪️スローアーチズという挑戦

スローイングラボを続けていると、ふと考えるようになった。

投げる楽しさを、もっとたくさんの人に知ってほしい

スポーツをしている人だけでなく、もっと小さな子どもたち、運動が苦手な人、いろんな人に投げることを楽しんでほしい。そうして生まれたのが スローアーチズ 。

スローアーチズでは、ラグビーボールだけでなく、重いボール、軽いボール、楕円のボール……さまざまな形のボールを投げる。投げることで体を動かし、成功体験を積み重ね、自分の可能性を広げていく。

「投げるのが苦手でもいい」
「最初はうまくいかなくてもいい」

ただ、少しずつ投げられるようになっていく過程が大切で、その経験が自信につながる。投げることを通じて、「やればできる」という感覚を持ってほしい。それが、スポーツに限らず、勉強でも、仕事でも、人生のあらゆる場面で役に立つはずだから。

このお話はまた別の章にでもしたいと思います。長々となりましたが、第4章は以上です。

▶︎第5章は「これからのスローイングラボとスローアーチズ」について綴ります。

未来のことを語るのは、少し気恥ずかしいですが、やりたいことはあるので楽しみにしていてください。

thank you.

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