IBって何?:所感
インターナショナルスクールで提供されている教育カリキュラムには、大きく国際バカロレア(IB)、ケンブリッジ(IGCSE、Aレベル)、そのほか各国のカリキュラムがあると思います。
Australia、Germanyなどは、例えばシンガポールの日本人学校が文科省に認められた日本のカリキュラムを提供しているのと同じでその国のnational curriculumになります。
我が子が通うインド系の学校では、基本的に、IB、ケンブリッジ、CBSEと呼ばれるインド系のカリキュラムが提供されています。
それぞれのカリキュラムについては各オフィシャルホームページなどをご覧いただくのがベストですが、書いてある情報が詳細過ぎて結局何なのかわからずに迷子になってしまった自身の経験に基づき、ここでは、要点もそこそこに、所感を書いてみたいと思います。
国際バカロレア(IB)の目的
私はオーストラリアの高校を卒業しているのですが、英語圏の大学に進もうと思った際に、改めてその国の大学受験資格を取得することを大変に感じた記憶があります。その高校では、私の次の学年からIBが導入されたのでうらやましかったのを覚えています。
「国際的に通用する大学入学資格を与え、大学進学へのルートを確保することを目的として設置」されたということからも、世界的に汎用性の高い大学入学資格が得られるカリキュラムとなっています。そのため、生徒が卒業後に世界各国の大学へ進学する可能性のあるインターナショナルスクールで、広く取り入れられています。
当カリキュラムが目的としてあげているのは「多様な文化の理解と尊重の精神を通じて、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する、探究心、知識、思いやりに富んだ若者の育成」で、年齢に応じて、IB PYP(primary years programme=幼稚園)やIB DP(diploma programme=高等部)とステージ分けがされており名称が異なります。
IBプログラムでは、上記の目的を頂点に、アプローチする分野が定められており、各学校は一定の自由度を持って、日々の授業に落とし込みます。その内容がIBの指針にふさわしいものかどうかは、IBのボードメンバーによって5年ごとの監査が行われます。
IBの授業
さて、では実際どんな授業をしているのか?子どもたちの学校の例をご紹介します。
まず、教科書はありません。ノートはあります。
この学校では、授業中に生徒が好きに寝転がったり走り回ったりということはなく、基本的にはクラスの前方は定められていて、生徒は着席もしくは発表やグループ活動の際に起立して授業を受けます。学校によりかなり自由なところもあるようです。
宿題は、週末に出ることが多いです。宿題がでて、我々親もそこで初めて何をやっているのかを知るわけですが、いわゆる算数や国語といった分け方がすべてではないため、宿題を見ても、教科書ベース教育の頭では理解が難しいところがあります。
「すべてではない」といったのは、IBではUOI(unit of inquiry、探究の単元)という授業があることが特徴的ですが、そこに各科目の要素がちりばめられているからです。(UOIとは別に、算数や英語(国語)の授業はほぼ毎日あるので、体系的に学ぶことも重要視されてはいます。)
UOIではどういった授業が行われているかについてです。
例えば「通貨」という切り口で、まずは紙幣や硬貨を観察し、気づいたことをまとめます。次に実際の日々のお金の使い方で計算を体感します(算数。ほぼ同時に小数点の概念や、かけ算などを履修)。通貨の歴史を調べたり、各国の通貨の違いを比較したり、という宿題がでるのですが、そのたびにクラスで発表が行われます。人前で話すスキルや、自分の言いたいことをまとめて説明するスキルが培われます。また、他の子の発表も聞くわけですが、ある子は紙幣に描かれた人物について深く調べたり、ある子は仮想通貨へも言及したり、他のクラスメイトを通じて自分では気がつかなかった歴史、経済、芸術といった違った角度のものの見方を知り得ることができます。これは、子どもにとって良い刺激になるとともに、自分のものの見方や興味を客観的に知ることにもなり、自分の強みや興味の確認につながります。
別のテーマとして、「人体」がありましたが、こちらでは、解剖学的なことから、身体の機能がどう心の健康や精神とつながっているのか、それを理解した上で自分のコミュニティへどう貢献していけるのか、といった存在意義的なところまで話が広がる設計となっており、縦割りにしないからこそ可能な、実践的な展開を実感します。宿題を見た後は、脳が疲弊していますが・・・
インド人がIBを選ぶ理由
インドの方が自国のプログラムではなく、IBを選ぶ理由ですが、キャリアのために国をまたいで活躍することが前提のため、国が違っても同じカリキュラムを継続しやすい、ということを一番に聞きます。実際に、以前いたEUやアジアの学校でもIBプログラムを受けていた、インドでもIB認定校へ行っていた、というケースはよく耳にします。
また、CBSEの教科書は自分が学生だった時と変わっておらず、これだけ世界が発展しているのに時代遅れであるとおっしゃっているお母さんもいました。あとは、その子に合っているからという理由です。
・世界主要国で実施されているため
・次世代に必要な教育内容
・その子にあっているから
まとめ
IBでは、あなたはどう思うのか、それはなぜなのか、という問いが根底にある気がします。そういった問いに論理的に答えられるためには、知識や経験、語彙力が必要です。端的に言えば、知識でしっかり土台を築いてから発展させるか(教科書ベース)、そういった問いから知識を開拓していくか(探究ベース)というアプローチの違いが大きな点だと思います。
IBではプレゼン資料をまとめてクラスで発表することが日常的に行われますから、社会に出た際に、自分の考えを説明し、理解を得るというプロセスの練習が含まれる分、グローバルな活躍を見据えた際に、実践性の高いカリキュラムだと思います。