黄金の都市『エルドラド』が教えてくれる理想世界

人類が望む理想世界はあるのか?

暖かい春風が吹く度に、風にのって聞こえてくる声がある。詩人キム・ドンファンの「山の向こうの南村には誰がいるのだろう。日ごとに春風が南から吹くのだなぁ」という詩のように、果たして山の向こうには本当に人類が望み、願っていた理想の世界があるのだろうか?

私達が人生を生きていきながら、踏んだり蹴ったりされる度に、社会的な難題に縛られる度に、望みも希望も楽しみもなく虚しさを感じる度に、誰もが理想世界を望むようになる。だから人々は、理想世界をこっちで探しあっちで探し、様々な世界で探してみる。そのように人々は、誰でも心の底でエデンのような世界を望んでいる。

それで、科学者達は科学を通して天国を成そうとし、宗教人達は聖書に隠された秘密を通して天国を成そうとする。そして人類は、そのような世界が、黄金でつくられた理想世界ではないかと想像しながら、実際にその世界を見つけようと船に乗って宝探しに出かけたりもした。

黄金の都市『エルドラド』は?

代表的なものとして、黄金の都市『エルドラド(El Dorado)』を挙げることができるが、エルドラドは、16世紀にスペインの人々がアマゾン川の岸辺にあったと想像した黄金の国だ。しかし、知ってみると、エルドラドは15~16世紀の大航海時代の当時、ポルトガルとスペインの新大陸発見から始まった黄金の略奪の歴史が生んだ産物であるだけだ。

実は、エルドラドは国ではなく、コロンビアの高山地帯に住んでいたチブチャ(Chibcha)部族の族長を指す言葉で、『金粉をまとった人』という意味だ。この部族の族長は、1年に1度、金粉を頭からかぶり、湖で体を洗って神に金を捧げる儀式を行なった。

しかし、スペイン人達がインカ部族を征服し、数多くの金を略奪した後も、自分達がいる場所が伝説の王国だということを受け入れることができず、また他の黄金を探して山岳と密林の中を掻き回して横行するうちに、黄金の都市エルドラドがインカのどこかにあると誤って伝わってしまったのだ。

しかも、当時『フアン・バルベルデ』という1人の若い兵士が、原住民の娘と恋に落ちて逃げた後に、物凄い宝を見つけてスペインに戻ってくる事件も発生したことで、エルドラドに対するスペイン人達の考えは続くしかなかった。

理想世界、今起こっている

聖書にも、イザヤ書11章に、イエス様がいらっしゃれば「おおかみは小羊と共にやどり、ひょうは子やぎと共に伏し、子牛、若じし、肥えたる家畜は共にいて、小さいわらべに導かれ、雌牛と熊とは食い物を共にし、牛の子と熊の子と共に伏し、ししは牛のようにわらを食い、乳のみ子は毒蛇のほらに戯れ、乳離れの子は手をまむしの穴に入れる。」と表現し、メシアの登場と共に理想世界を預言しておいている。

しかし、実際にイエス様がいらっしゃった時、文字通りのこのような世界は起こらなかった。だから今日、キリスト教の人達は、たとえ初臨の時にはこのようなことは起こらなかったとしても、再臨主がいらっしゃればこのような世界が起こるだろうと信じている。

だが、鄭明析牧師はこれに対して明快に話した。ししが牛のようにわらを食うといったが、どうやって肉食動物であるライオンが牛のように草を食べることができるだろうか?草をむしることもできない歯なのに、草をむしろうとしたら果たして噛めるだろうか?ライオンは飢えて死ぬしかない。これはヤコブの12人の息子を個性通りに動物で表したように、一種の比喩だったのだ。

理想世界を成すのは人間であり、万物ではない。イエス様がいらっしゃった時、当時異邦人、ユダヤ人、パリサイ人、書記官達がイエス様の御言葉を聞いた時に、その御言葉を信じて従った人達は、イエス様の主管圏の中で理想世界を成した。実際にイエス様が生きていた時代は、弱肉強食のような階級構造があり、主人と奴隷がいる時代だったが、イエス様の御言葉によってサマリヤ人とユダヤ人がひとつになった。

『オネシモ』は『ピレモン』の奴隷だったが、使徒パウロが監獄にいる間、使徒パウロに『オネシモ』が伝道されてから、使徒パウロは『ピレモン』に送る手紙を通して『オネシモ』を兄弟として接してあげなさいといった。いきなり僕の立場から兄弟の立場になってしまったのだ。この全てのことが、羊とししがひとつになる出来事だった。

それなのに、未だに『山の向こうの南村には誰がいるのだろう?』といいながら眺める人々を見ると、果たして認識観の転換というものがどれほど貴重なのかを悟るようになる。山の向こうの黄金の都市エルドラドを探し回った人類や、旧約の預言が再臨の時に成されるだろうと信じている現信仰人達は、結局同じように認識観の転換をすることができず、新しい天と新しい地を見ることができない世界に留まっているだけだろう。

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