地獄の沙汰も金次第

「お金が鬼神も思い通りに動かす」

韓国のことわざに「お金があれば鬼神も思い通りに動かす（地獄の沙汰も金次第）」という言葉がある。それだけお金が持つ威力が大きいということである。実際、「見金如石」、つまり、黄金を石のように見なさいという言葉もあるが、ほとんどの人はお金がものすごく好きである。好きな程度を超えて、お金を愛してキスして、神酒の壺を祭るように崇めて生きている人もいる。それで中国には銭可通神という故事成語もある。

過去、唐の時代、張延賞という人がいたが、ある時、上層部が関与したある不正事件の調査を任されたという。調査を任された張延賞は「王の祿を食べる者は王の心配事を担うべきであり、民の俸を食べる者は民の心を慰めるべきである」と言って、「高官や皇帝の親戚はみな私の手で厳しく治める」という勢いで、関係者をことごとく逮捕せよと厳命を下した。

ところが翌日、張延賞の机には、お金3万貫と共に、事件をしっかり揉み消してほしいというメモが置かれているではないか。これを見た張延賞は憤りを抑えられず、メモをたたきつけ、一層捜査に拍車をかけるよう命令した。すると、その翌日には5万貫が置かれており、張延賞はさらに怒った。ところが、またその翌日には、お金10万貫が置かれていた。

そのお金を見た張延賞の顔色がぱっと変わり、「10万貫というお金は鬼神と通じることができる金額である。これを断ったら、私に災いが及ぶかと思って恐ろしい」と言って、その事件を揉み消したという。

これに由来した「銭可通神」は、お金の威力を譬える故事成語として広く使われている。つまり、お金があれば鬼神とも通じて、できないこともないという言葉である。

この言葉は、黄金万能主義を皮肉る言葉としても広く使われており、これと似た言葉としては「お金さえあれば犬も犬様だ」、「お金があれば処女の金玉も買える」、「お金があれば私は鳥も落とすことができる」、「閻魔大王もお金の前では片目をつぶる」という言葉がある。

英語の表現では、”Money talks. Money makes the mare go. A golden key opens every door.” という表現もある。

また、日本には「地獄の沙汰も金次第」という言葉もあるし、中国には「お金なら死んでもお棺の中で手を差し出す」ということわざもある。それほどお金の効果、お金の威力がすごいということである。

ここまで来れば、「お金が鬼神も思い通りに動かす」という言葉が決して誇張された言葉ではないように思われる。しかし、お金で鬼神を思い通りに動かそうとして、むしろ自分自身が鬼神になることもある。

物質万能主義にとらわれている現代人の姿

ある日、サタンが10個の瓶を持って一人の青年を訪ねてきて言った。

「この９つの瓶には蜂蜜が入っていて、1つの瓶には毒薬が入っているが、蜂蜜が入っている瓶を見つけて飲んだら、巨額のお金を与えよう。」

この提案に青年は、お金がいくら好きだといっても、命とは換えられないと拒絶する。しかし、続けて誘惑するサタンの懇請に、結局、青年は「10個の瓶のうち、たった１瓶だから...」といって震える手で瓶一つを選んで飲んだ。幸いなことに死なずに助かった青年は、お金をもらって、二度と自分を訪ねて来ないようサタンに命じた。

しかし、サタンは「今回は、9つのうちの1つを飲めば、お金を2倍与えよう」と提案する。結局、サタンの誘惑に乗った青年は、簡単に稼いだお金で放蕩に明け暮れるようになる。結局、アルコール依存症、薬物中毒など青年の人生はどんどん崩れていき、そのような生活の中で、青年は続けてサタンを呼び立てた。今や恐怖さえ消えてしまった。

そして最後に残った2つの瓶を前にして「金儲けか、死か」と最後の人生の勝負をかけることになった。すでに年を取って老年に達した彼は、最後の瓶を冷や汗を流しながらぐっと飲み込んだ。

「ああ！私は勝った。最後まで生きのびたぞ！さあ、早く金を出せ。」
勝利に陶酔してどうしていいか分からない老人に、サタンは最後の瓶を自ら飲みながら言った。

「フッフッ、最初から毒薬が入った瓶などなかった。しかし、お前は既に金という毒薬のために死にかけていただろう！お前は青春を金に縛られて生きて、永遠なものを失ってしまった。これまで受け取った金の代価を今から俺がいる場所に来て、苦痛と共に支払わなければならない。」

お金によって世の中に令しようとしていた青年、しかし結局、お金のしもべになって人生を台無しにして、サタンの世界に行くしかない境遇になってしまった青年、彼はお金によって鬼神を思い通りに動かそうとするうちに、お金に振り回されて、しまいには鬼神にまでなる人生になってしまった。今日、物質万能主義にとらわれている現代人の姿のようである。