見出し画像

M-1グランプリ2019の感想

昨日、M-1グランプリ2019が閉幕し栄えある第15代チャンピオンが決定した。
M-1グランプリは例年お笑い番組とは思えない盛り上がりを見せているが、今年は特に印象的な大会になった。
GYAO!で配信されたM-1の3回戦、準々決勝のネタ動画すべてに目を通し準決勝のライブビューイングにも足を運び、当日の敗者復活戦、決勝をテレビでリアルタイムで視聴し、M-1グランプリをたっぷり楽しんでいたお笑い好きの僕はM-1グランプリが終わってしまって少し寂しい気持ちでいる。

そんな僕がnoteでは以下の記事振りに今回のM-1グランプリを個人的に振り返ってみようと思う。


今年の敗者復活は3年連続準優勝の和牛、2年連続決勝進出のミキ、人気と実力を兼ね備えたアインシュタイン、四千頭身、カミナリ、ラストイヤーの囲碁将棋、天竺鼠などが戦い放送前の予想通り大混戦だった。

ここでは敢えて敗者復活戦が始まるまで知名度がほとんどなかった男女コンビ「ラランド」について触れたい。
特筆すべき点は彼らは芸能事務所に属さない所謂「アマチュア」なのだ。

3回戦のネタがGYAO!で配信されてから「面白いアマチュアがいる」とTwitterでプチバズを起こしていた。
僕もGYAO!の配信で初めてラランドを知ったが、ルミネtheよしもとの舞台でのびのびと自分らのネタを披露し爆笑をかっさらって帰る彼らを見た時は感動すら覚えた。

M-1の3回戦となると勝ち残っているのはほとんどプロの芸人である。
そんな中プロの芸人に勝って準決勝まで駒を進めるなんて並大抵の事ではない。

僕は自分が芸人ではないからかM-1やキングオブコントなどの賞レースで活躍するアマチュアに妙に惹かれてしまう。
「アマチュア」という言葉に勝手に親近感を覚えているだけだが、アマチュアでもプロと同等に戦えている人がいるんだと感心する気持ちと同時に何か勇気のようなものをもらっている気がする。

ラランドは敗者復活戦でもボケの演技が上手いさーやにニシダが歯切れのいいツッコミを入れ、いい意味でアマチュアらしくない堂々したネタ運びでお客さんを笑わせ、本当にかっこよかった。
アマチュアなんて呼んでいるが、彼らの実力は間違いなくプロレベルである。
残念ながら決勝進出とはならなかったが、来年の元日の「おもしろ荘」の出演が決まっているらしい。ラランドの一ファンとして今後の活躍には注目していきたい。


ここからは個人的に印象に残ったコンビについて振り返っていこうと思う。

①ニューヨーク
彼らのネタの醍醐味は屋敷の毒のあるツッコミと偏見だ。
彼らが世の中のツッコミ所のある事やダサいなと思う事をイジり笑いを誘う。
好き嫌いが分かれるコンビだが、僕は屋敷が吐くツッコミに毎回共感できて大好きなコンビである。
今大会で特に応援していた分トップバッターを引いた時には思わず声を上げてしまったが、彼らはトップバッターの重圧を跳ね返し会場を沸かせた。
ただ、ニューヨーク好きの僕からしたらもう少し毒や偏見を入れてほしかったとは思う。
「女子はラインが既読にならないとかに大喜びするから」
という屋敷のツッコミがあったが、準決勝では
「女子はラインが既読にならないとかによだれ垂らして大喜びするから」とツッコんでいた。
決勝用に毒があまり強くないようにという考えだったのかもしれないが、僕は後者のようなもっと毒のあるツッコミを期待してしまった。
また、松本人志の屋敷が楽しそうにツッコみすぎという指摘に、屋敷はいつも通りだと話していた。確かに笑いながらツッコむ事もあったように思うが、僕自身もあれほど楽しそうにツッコむ屋敷は初めて見たかもしれないと感じた。
屋敷は決勝進出が決まった瞬間号泣していた。やっとの思いで賞レースの決勝に進出したのだから当たり前だ。
ここからは勝手な憶測だが、僕の目には屋敷がヘラヘラしてるというより楽しそうに漫才しているように映った。たどり着いたM-1の決勝の舞台でネタをやるのが本当に楽しかったのではないかと思った。
ニューヨークはまだまだ面白いネタは持ってるしこれからも作ってくれるだろう。また賞レースの決勝の舞台でニューヨークのネタを見るのが楽しみである。

②かまいたち
かまいたちのすごいところはキングオブコントを優勝してM-1優勝も射程圏内に入れている所だが、さらに注目すべき点は彼らの漫才がしゃべくり漫才である点だ。
漫才は例えばお客さんと店員に分かれてコンビニのコントを入れたりできるが、彼らは言葉のラリーをメインに笑いを取る。キングオブコント王者なら漫才中にコントをしたくなるところだが、それをせず言わば完全に別のジャンルで戦って決勝まで勝ち進んでいるのだ。
今回のネタは「UFJ」と「USJ」を言い間違えた山内が言い間違えたのはお前だと濱家に無理やりなすりつけるネタだ。
どう考えても言い間違えを見られてる山内は言い逃れできないのに絶対に濱家になすりつけようとして、段々とサイコさが増していくのが本当に面白い。
そして本来ツッコミが言う「濁すな」「クスリやってんのか」というセリフをボケの山内が言って、まるでボケが自分でツッコんでるような感じがして新鮮だった。

③和牛(敗者復活組)
準決勝で1度落ちても敗者復活で生き返り5回連続決勝進出を果たす和牛は流石としか言いようがなかった。
和牛のネタと言えば前半散りばめた伏線を後半で一気に回収し、ピークを終盤に持ってくるほれぼれするような作りこまれた構成の漫才だ。今回のネタも和牛らしさがたっぷりと出ていたように思う。最後川西がボケまじりのツッコミで笑いを取り和牛の新たな進化も感じさせた。また、敗者復活戦で同じネタを披露していたが、決勝では2、3個ボケが足されていた。元々あったボケだとは思うがこの辺りは流石経験十分の和牛である。
惜しくも最終ステージには残れず、直後のGYAO!での配信であとM-1卒業をほのめかしていた。彼らは結成13年目で、あと2回M-1に挑戦できるが本当に来年は出場しないのかもしれない。
しかし優勝には届かず準優勝を3回連続で取っている彼らの苦悩は彼らにしか分からないのである。3回連続準優勝なんてもはや1回優勝するよりも難しい事ではないかと思う。
そんな事をやってのける彼らだからこそ我々お笑いファンはまだまだM-1で面白いネタが見たいし、優勝するところを見たい思いもある。
しかし仮に来年出場しなかったとしても周りがそれについて悪く言う権利など絶対にない。
もし来年彼らの意思で出場する事になったら次こそは優勝できるように心から応援したいと思う。

④すゑひろがりず
狂言や能の伝統文化の要素を現代の文化と掛け合わせる彼らのネタは何年か前から知っていたが、ネタの形は大きく変わっていないように思う。
M-1で同じ形で敗退するとどこかで形を変えるべきなのか悩んだりするように思うが、敗退しても自分たちのやりたいネタを貫きM-1の決勝の舞台まで駒を進めた彼らはそこから称賛されるべきコンビだろう。
伝統芸能という縛りの中であれだけ完成度の高いネタをできるのは単純にすごいなと感心した。

⑤からし蓮根
僕が優勝予想に挙げていたのがからし蓮根だ。強めのボケにキレの良い熊本弁のツッコミが決まる様が本当に心地いい。
今回のネタは準決勝で見る前から知っていたが、これを決勝でやったら間違いなくハネるだろうなと予想していた。
前半大爆発していた分ハネにくい部分もあったのかもしれない。
僕がこのネタを初めて見た時、ボケの伊織が右折する所を過ぎて自分だけ右折する部分と「やむおえない運転」の部分で腹を抱えて笑ったのだが、その部分で思ったほど会場が沸かなかったので残念だ。
また、ネタ終了後にオール巨人に褒められた後に杉本が涙を堪えているように見えてこっちまで胸が熱くなった。
からし蓮根はまた近いうちに優勝候補となって決勝に戻ってくるだろう。

⑥見取り図
今回の見取り図のネタはお互いに良いところを褒め合ってくうちに喧嘩になりお互いの悪口を言っていくといった流れだ。
お互いの悪口を言うラリーが結構続き少し短調かなと思う部分もあったが、相方をディスる例えが本当に絶妙で笑えた。
また盛山が噛んでしまった直後に「すみません、昼に爆竹食べました」とすかさず入れたのが流石だと思った。
普段よしもとの舞台で場数を踏んでいるからこそあの舞台でも立て直す事ができたんだろう。

⑦ミルクボーイ
今大会の最大の盛り上がりポイント、いやM-1の新しい伝説を創ったコンビと言っていいだろう。
「コーンフレーク」を初めて見たのがGYAO!の3回戦の配信だった。その時は呼吸ができなくなるくらい笑い、この1本で優勝しても文句ないと思った。
しかし準決勝でこのネタを見た時もっと驚いた。コーンフレークに対するツッコミやあるあるが更に足されてより面白くなっていた。
それにより4分間の最初から最後まで爆笑のピークが続きM-1史上最高得点が叩き出された。
1つのお題に対してあるあるとディスりを繰り返すといった形の漫才であるが、とにかく1つ1つのあるあるやディスりのセンスが抜群なのである。
みんなが共感できる「あるある」というものは笑いの原点という気がするが、そのセンスだけで爆笑を取るのは非常に難しい。
今まで誰も言った事がなく、なおかつ誰もが共感できるというピンポイントを突かなければならないからだ。
それらを1つ1つ全て外す事なく爆笑を取ったミルクボーイの「コーンフレーク」に文句の付けようがない。

⑧オズワルド
僕がオズワルドを認識したのは去年の3回戦である。ローテンションで漫才に入っていき、徐々にツッコミの伊藤がギアを上げていく訛りなどない東京スタイルの漫才だ。去年初めて見た時から面白いと思っていたが、今年決勝まで一気に勝ち上がり少し驚いた。
今回のネタを見てやはり最初は静かに入り後半にピークを持ってくる右肩上がりの理想的なネタを作るのが上手だと感じた。
オズワルドのネタは3種類くらいしか知らないが、どのネタもムラがなく面白いのでまだまだ面白いネタを作り続けられると思う。

⑨インディアンス
彼らの強みは何と言ってもボケ数とテンポだ。決勝を見た時問題なくやれていたように思ったが、直後のGYAO!の配信でボケの田渕がネタを飛ばしていたと明かしていた。
冒頭から頭が真っ白になりボケを2つくらい飛ばしてしまったらしいが、よくあの舞台で真っ白になりなんとか4分やりきったなと思う。
しかしあれだけ場数を踏んでいる結成9年目のプロの芸人ですら、頭が真っ白になるほど緊張する舞台なのかと思うと少し怖くなった。

⑩ぺこぱ
ぺこぱはツッコミがボケを否定せず、肯定する今までにない漫才が特徴だ。
ロマンチストキャラが入ったツッコミの松陰寺がボケに全て乗っかりポジティブに解釈して誰も傷付けない。
また「誰かのせいにするのはやめにしよう」「できないことを求めるのはやめにしよう」という世間に対するメッセージ性溢れるセリフも個人的には好きだった。
正直ここまで高得点がでるとは思わなかったが、M-1は公開オーディション番組でもあり今までなかった新たなパターンで笑いを取ったぺこぱが高評価を受けるのは当然と言えばそうなのかもしれない。


最終ステージ
3組とも自分たちらしさを貫いた漫才だった。
ぺこぱのボケしゅうぺいはボケはおふざけに近い気もするが、それがツッコミの松陰寺を邪魔しないちょうどいいラインなのかなと感じた。
かまいたちの2本目は準決勝で披露したネタだった。ミルクボーイがここまでハネるとは思ってなかったので僕はかまいたちが1本目で爆発した時2本目このネタをやったら絶対優勝すると思っていた。
このネタこそかまいたちの漫才の真骨頂だ。
最初山内のただの暴論から始まり、次第に正しいはずの濱家が山内に振り回されていく。
山内のサイコっぽいキャラの演技もすばらしいが、僕は濱家のツッコミもすばらしいものがあると思う。声のトーン、ツッコむタイミング、表情これらを実力を考慮したら濱家も一流のツッコミ芸人と言える。
ミルクボーイの2本目は全く何をやるか分からなかったが、2本目も会場を沸かせた。爆発力などは1本目の「コーンフレーク」の方が上だと思うが、2本目の良かった点はあるあるとディスりだけでなく、空想の家系図のくだりを入れた点だ。あのくだりを入れたことで、大きな枠組みは1本目と同じだがその中での変化を見せられた。
最終的にミルクボーイには6人もの票が集まり見事15代チャンピオンに輝いた。

今年のM-1グランプリは9組中7組が初出場で去年や一昨年のようなインパクトのある大会になるとは正直思わなかったが、実際は高得点続出のとてつもなく印象深い大会となった。
かまいたちと和牛が序盤で爆発した時に珍しく前半にピークが来て後半が点数伸びにくくなる気がしたが、そんな事もなく後半も点数があまり落ち込む事がなかった。
今大会ほど全体的に点数が入った大会は過去ないだろう。

決勝のネタ時間は約4分だ。
このたった4分間の漫才にたどり着くまでに漫才師はどれだけの時間と労力を費やしてきたのだろうか。
エントリーした5040組のうち5039組は負ける。
勝負の世界は本当に残酷だ。人を笑わせる芸人が1番涙を流してる気がする。
エントリーした1人1人にドラマがあって、視聴者は彼らのドラマなんて知りたくても知れないけど、人生をかけた芸人たちに今日も元気をもらってる。

今年のキングオブコントで空気階段の水川が敗退時「お笑いのある世界に生まれてよかったです」という名言を残した。
僕は賞レースを見終わる度にお笑いが好きになっているけど、今回のM-1グランプリを見終わった時水川と同じことを考えた。
お笑いのある世界に生まれてよかった。
いやお笑いのある国に生まれてよかった。
他の国にこんな最高な文化があるもんか。






いいなと思ったら応援しよう!

ミソ吉
皆様の応援が励みになります。