【ジョニー】 白髭のおじいちゃん 完結編
前回のおさらい!!!
見つかるネジ。深まる絆。外れたカバー。そしておじいちゃんの突然の裏切り。やっぱり分かり合えないのか我々は。ただの一お客様と一店員としての関係で終わってしまうのだろうか。そして…物語は終焉へと向かう…。
最終章 〜直った自転車〜
早く終わらないかなぁ。
そんな気持ちを僕の中で埋め尽くされている。
チェーンは直り、カバーもはめた。ここらでそろそろ終わるはずだ。
なぁなぁな気持ちのまま僕はお客さまに尋ねた。
「これで直りましたかね」
するとおじいちゃんはペダルを腕で回し始め、何かの確認をしていた。
…カション……カション……カション……カション…
「なんか引っかかってるな。なんかカシャカシャ音鳴ってるよ」
「ほんとですね」
おそらくカバーがうまくはまっておらず、ギアの部分に干渉してしまっているのだと思う。
あれ
なんか知らぬ間に自転車に関して詳しくなっちゃってるな僕。
なんの知識も無かったくせに
一丁前に "干渉" なんて言葉も使って。
その状況におじいちゃんはまた、溜息をつきながらカバーを外し始めた。
まだ続くのかな
そんな考えが頭をよぎる。気づけば時刻は22:00を過ぎ10分ほど経っていた。22:00から一緒に入っている相方が別の仕事をしなければならないのだが、いかんせん僕はこのおじいちゃんと自転車を直さなければならないので、僕はそちらにも申し訳ないと思いながらも自転車の行く末を見張っていた。
「なんでこんなことになっちゃったんだろうなぁ」
またおじいちゃんがボヤキを始めた。
「ほんと嫌になっちゃうよ。あなたにも申し訳ないね、何も関係ないのに手伝ってもらって」
「あぁ、いえ大丈夫ですよ。」
ん…?
ひょっとして今僕
おじいちゃんに認められた?(?)
「あなたにも申し訳ないね」
この言葉の意味するものは
和解!!!
友情!!!
絆ッッッ!!!
そうかそういうことだったのか。
おじいちゃんは
ツンデレだったんだ!!!
白髭のおじいちゃんに認めてもらえたこと、そして我々の間に、絆が芽生えたこと、それらがとても嬉しくなって、僕は今まで見張っていた硬直した身体を動かして、
「ちょっと僕やってみてもいいですか?」
と問いかける
「おう。ちょっと頼むよ。固くてダメだよ」
僕はみるみるうちにお手伝いマンとしての変貌を遂げていた!
見よ!この輝かしいほどの掌の返し様!
そして祝え!この瞬間芽生えた、栄光ある絆の生誕を!!!
…
「まだカラカラ言うけど、まぁいいや」
「本当ですか。すいませんお役に立てなくて」
結局完治は出来なかった。だが、おじいちゃんは妥協を選んでくれた。
気づけばおじいちゃんはシガーをふかしていた。
今もその光景は脳裏に焼き付いている。
だって、僕とおじいちゃんの
友情が芽生えた瞬間だったから。
「帰れるかな。まぁいいか。」
そのままおじいちゃんは、夜の商店街へと消えていった。
またのご利用お待ちしております。
僕は頭をぺこりと下げ、おじいちゃんを見送った。そしてまた、いつものレジに戻っていった。
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