初めてのアラック

パレスチナはイスラム教の国ではあるが、人口の７パーセントはクリスチャン。ベツレヘムやラマッラー、エルサレムのキリスト教地区などクリスチャンが経営する商店にはビールやワイン、そしてアラックがある。

アラック。Milk of Lion ライオンの乳と呼ばれる。水と反応して白濁するその飲み物は香りの甘さとは裏腹にアルコール度数が高い。

サラームアレイコム。こんにちは。

アレイコムサラーム。暑いだろう。ここ座って。ジュース飲む？

ねー、暑いね。お水を買いに来たのよ。

ベツレヘムの生誕教会から少し歩いたミルクグロットの近くの小さな商店だった。空の色は水色から茜色に変わりつつ、すーっと頬を撫でる風が通り、太陽は遠くに行っている。

冷蔵庫から５００mlのペットボトルの水を取り出し、喉を湿らせる。

あー、生き返ったー。

隣りの棚には多くのボトルが並ぶ。

これはワイン？そしてビールでしょ？これって？

あー、これはアラックだよ。中東のお酒。飲んでみる？美味しいよ。もう日も暮れてきたし、僕もビールを飲もうかな。この前もヨーロッパからの観光客とここで飲んでたんだ。

へー、じゃあ、一口だけトライする！

小さなプラカップにほんの１cmくらい。透明の液体が注がれる。

よく見てて。氷を入れるから。

彼は冷凍庫から１キューブの氷を取り出し、その小さなカップに落とす。
すると、氷の周りからゆらりゆらりと白濁していく。

色が変わった！

さあ、飲んでみて。

わたしはその試飲程度の量のアラックを口にした。

わー。何これ？強い！でも美味しい。いい香り。

いい香りでしょ？アニスの香りだよ。

フランスのアブサンにも似た風味。ヨーロッパから地中海を超えてパレスチナで共通点を感じる。

パレスチナのアラックとの出会い。