それ!僕んちだよ!
砂埃と排気ガスが舞うヘブロンロードを南に歩く。上を向くと青い空、前を向くとうっすらとモヤがかって見えるのは砂埃のせい。道道に生える草も少し砂を被り鮮やかさを欠いている。
左のガソリンスタンドには大きなトラックが止まっている。
このガソリンスタンドの少し先のはずなのに何もない。
もう少し先に進んでみよう。ガソリンスタンドは左肩越しにも見えなくなってきた。少しだけカーブしているヘブロンロードを先に進み歩く。真っ白とは言わないが、砂で白くなっている道。乾燥してその砂はさらさらだ。オリーブの樹も砂かぶり。それらしきものはない。
そろそろデヘイシェキャンプが見えてくるはず。それより先ではないのに。
右手には家屋なのか店なのか何かしらの建物を工事していて足場が組み立てられている。まさか改装中?足場の上の方にいる男達。彼らに聞くしかない。
すいませーん。道聞きたいんですけど。
どうしたんだい?
一人のおじさんがわたしに気づくと男達が一斉にわたしの方を見た。
サバートアラックを探しています。知りませんかー?
大声で叫ぶわたし。すると・・・
それ僕んちだよ!
建物の2階部分にいた青年が笑顔で答えあっという間に地上に降りてきた。
え?君んちなの?ここ?
そう言ってわたしは写真を見せた!
そうだよ!
いえーい!
周りの男たちにわたしの喜びが伝わったのか、拍手喝采が起きた。
さあ、案内するよ。じゃあ、みんなこの子をうちに連れて行ってくるから。
働く大勢の男たちの拍手と暖かい笑顔に見送られわたしは少しだけ来たみちを引き返し、何もないと思っていた場所へ向かった。もちろん看板はない。
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