日記3おばさんとキッザニア

※おぼえがきです。内容が漫然としています。

 わけあって夫と子どもたちとキッザニアに行くことになり、行ってきた。夫が運転してくれる車に乗り、(ウギャアアーッ!! 助けてー!!!!)(なぜ私がこんな目に!!!!)(もうおわりだ!!!!!!!!)と思いながら行ってきた。道中は皇居の堀とか高層ビル&タワマンなどがめちゃめちゃ綺麗で輝いていた。東京駅のガード下付近にやたら道幅が狭い車ぎゅうぎゅう詰め詰めエリアがありますね。東京怖。

 キッザニア……事前情報で「めっちゃ混んでる」「ゆえに大人の立ち回りで子どもの運命が決まる」みたいな話を聞きまくっていた施設である。
 なので、キッザニアに行くことになった時には内心(イヤよキッザニアなんて!!!!)と悲鳴を上げたし、なんなら先述した通り、キッザニアに向かう途中にも心の中ではギャーギャー悲鳴を上げていた。
 絶対ひどい目に遭うに決まっている。
 ほとんど何の体験も出来ず、大泣きする子らを引きずって帰ることも覚悟していた。
 だが、蓋を開けてみれば色々できたし、子どもたちは今までの家族イベントの中で1,2を争うニコニコ帰宅をしていたのだった。
 ニコニコ帰宅が出来て本当によかった。そして本当に、キッザニアは凄い。

 ただ、まあ、大人が学びとか癒しとかを得られる場所かというと全然そんなことはないのは事実で、だからキッザニアは凄いのだと思う。
 多分だが、あの施設は大人『も』喜ばせようなんて計算は捨てている。大人が得られるのは子どもたちの笑顔だけ。
 あの施設は子どもが楽しんでお仕事をすること『だけ』を目的に作られている。
 ほぼ全人類にとって楽しくないに決まっている労働を、飽きっぽく、物わかりもあんまりよくない、子どもという存在に楽しんでもらうための場所……不可能を可能にするところ……。
 全年齢向け施設とは、背負った使命も気合も作り込まれ具合も違うのだ。
 多分。
 そう、多分。
 多分と書くしかない。
 なにしろ大人からは何も見えないのである。
 各企業が出展している子ども労働空間(本当はきっとこんな変な名前じゃない。私が今勝手に名付けた)には、子どもしか入れない。
 各子ども労働空間にいる係の人たちは子どもたちを『同僚』として扱うので、基本親ではなく子どもを見ている。子どもとしか話さない。
 係の人が子どもと雇用契約を結び、子どもたちは喜んで子ども労働空間へと吸い込まれて行く。
 中はなんか、よくわからないがすごく楽しいらしい。
 子どもたちは説明が拙いので、詳細を聞こうにも聞けない。
「ぐるぐるしてた」「おりたたんだよ!」こんな曖昧な言葉から一体どんなキッザニアの企業秘密を推し量ることが出来るというのか……。

 ガラス窓越しに子どもたちが何かやっている様子は見えたけれど、どうして子どもたちがあんなに「たのしかった」と連呼していたのか、理由は全く分からない。
 労働が「たのしかった」……?
 労働が?
 意味が分からない、そんな不思議なことがあるんですかッッ!?

 本当になにも分からないまままますべてが終わった。子どもたちは喜んでいた。不思議なことだ。

 我々が行ったのは平日の第二部とかいうやつだった。
 夕方から21時までやっているやつである。これは公式ホームページにも記載されていることなのだが、理論上は一番空いているハズの時間帯だった。
 だというのに会場は子どもたちと親、引率の教師などでごった返していた。
(空いているという話じゃなかったのか!!!!)と呆然とする私を見て初心者だと気づいたのか、どこからともなくルール説明専門の係の人があらわれて、手際よくルールを説明して下さった。
 これは本当に「どこからともなく」という感じだった。一体どうして我々が初心者だと気づいたのか、説明を必要としていると気づいたのか……今思い出しても不思議なことだ。
 子どもたちはなんとしても森永のハイチューお菓子工場で働きたかったらしく、私が説明を受けている最中にハイチュー工場労働の予約を行った。

 ところで、キッザニアは事前準備必須の場所だ。
 事前にキッザニアのアプリを入れなければ会場でアプリを開くことが出来ない。アプリを入れていなければ、いまどこのアクティビティが空いているのか常時チェックすることもできない。会場でモタモタアプリをインストールしていたら子どもが泣くこと必至だろう。大人の立ち回りが全てを決めるという話にも納得だ。
 あとお土産屋の対策もいる。なにしろ出口にあるお土産屋が凄まじい品ぞろえを誇っているのだ。子どもが絶対欲しくなる発光系オモチャや豆本、おみくじキーホルダーなどがズラリと並んでいる。お土産界のボスラッシュみたいなラインナップだ。
 それらが観光地遊園地より低めの価格で売られているのである。
「絶対買わせる」という意思を感じてオオッと思った。
 子どもが欲しくなるものばかりが置いてあって感心してしまった。はたらくくるま系の仕事を体験した後にその車そっくりのおもちゃを見たら欲しくなるに決まっている! あの空間に入る前に予算を伝えておかないと、あれもこれも欲しがる系のお子さんはエラいことになると思う。

 ……という感じでよくわからないままアクティビティをチェックしたり呆然としながら椅子に座ったりお土産屋をチラ見しているうちに我が家のキッザニアタイムは終了した。

 森永のハイチュー工場の求人に子どもたちが殺到し、伊藤忠の商社マンの求人や講談社の図鑑編集者の仕事が空いていて係の人が「働きませんかー!?」と求人に奔走する……外界では考えられないことが起きていて凄かった。
 ちなみに伊藤忠のやつは運よくタイミングが合ったので子どもたちが体験できた。彼らいわくかなり楽しかったらしい。私はガラス窓越しにしか見えていないが、カッコいいスーツを着て会議室で碇ゲンドウのポーズをキメて、ジョンという同僚とテレカンして、分厚くカッコいい資料を見ながら商品を企画&作成していたようだ……。

 親の我々が静かに椅子に座って(何も分からない……)と思いながら待ち続けている間に全ては終わっていた。
 何も分かっていないけれど、よかったことは間違いない。そんな感じの半日だった。まるで人生そのもののようだ。キッザニアは親の我々に人生の深淵を教えようとしてくれていたのだろうか。

 色々なところに行ったけれども、子どもたちがあんなに「たのしかった」を連呼していたのは初めてのことかもしれないくらいの喜びぶりだった。
 二部だったので帰り道は真っ暗で、湾岸のタワマンがキラッキラに輝いていた。湾岸のタワマン、もうパワーカップルでも厳しい位の価格になってるらしいスね。すげー。やべー。東京怖。

 土日は分からないけれど、少なくとも平日なら子どもはかなり楽しめると思う。我々の子どもたちは下手をすると遊園地やプールに行った時よりホクホク顔になっている。いいですよキッザニア。本当におススメの場所です。

 大人はもちろん、死ぬんですが……。