今更ではあるけれど、昨2023年10月17日 付けのアーティスツ・フォー・パレスチナUK(Artists for Palestine UK、AFPU) によるガザ停戦を求める公開書簡 は、その決然たる内容や姿勢という点以外に、ハマスによる10月7日のイスラエル攻撃を端緒とするイスラエルによるガザ地区侵攻から時間を置かないその即時性という点でも見過ごされてはならない切実な訴えであったと思う。しかしそうでありながら、日本語訳が見当たらないように思われたため、ここに全文を引用し、併せて和訳を置いておく。
公開書簡の署名者には、ティルダ・スウィントン(Tilda Swinton) 、マッシヴ・アタック(Massive Attack) のロバート・デル・ナジャ(Robert Del Naja) 、チャールズ・ダンス(Charles Dance) 、スティーヴ・クーガン(Steve Coogan) 、ミリアム・マーゴリーズ(Miriam Margolyes) 、ピーター・マラン(Peter Mullan) 、マキシン・ピーク(Maxine Peake) 、ハリド・アブダラ(Khalid Abdalla) ら、イギリスを活動拠点とする4,409人(最終更新時点)のアーティストが名を連ねている(全リストはAFPUサイトの公開書簡掲載ページ を参照)。
公開書簡全文(英語) THE LETTER IN FULL: We are witnessing a crime and a catastrophe. Israel has reduced much of Gaza to rubble, and cut off the supply of water, power, food and medicine to 2.3 million Palestinians. In the words of the UN’s undersecretary for humanitarian affairs, ‘the spectre of death ’ is hanging over the territory. Gaza is already a society of refugees and the children of refugees. Now, in their hundreds of thousands, bombarded from air, sea and land, Palestinians whose grandparents were forced out of their homes at the barrel of a gun are again being told to flee – or face collective punishment on an unimaginable scale . Dispossessed of rights, described by Israel’s minister of defence as “human animals”, they have become people to whom almost anything can be done. Our governments are not only tolerating war crimes but aiding and abetting them. There will come a time when they are held to account for their complicity. But for now, while condemning every act of violence against civilians and every infringement of international law whoever perpetrates them, our obligation is to do all we can to bring an end to the unprecedented cruelty being inflicted on Gaza. We support the global movement against the destruction of Gaza and the mass displacement of the Palestinian people. We demand that our governments end their military and political support for Israel’s actions. We call for an immediate ceasefire and the opening of Gaza’s crossings to allow humanitarian aid to enter unhindered.
Artists for Palestine UK, "Tilda Swinton among 2000+ artists calling for Gaza ceasefire", https://artistsforpalestine.org.uk/2023/10/17/tilda-swinton-among-2000-artists-calling-for-gaza-ceasefire/ , 17th Oct. 2023 (Accessed 5th Aug. 2024) 公開書簡全文(和訳) 公開書簡全文: 私たちは今、犯罪と大惨事を目撃している。イスラエルはガザ地区の大半を瓦礫と化せしめ、230万人に上るパレスチナの人々への、水、電力、食糧、医薬品の供給を断絶している。国連の人道問題担当国連事務次長の言葉を借りれば、「死の亡霊 」¹がこの地区全体を覆っている。 ガザ地区とは、かねて難民とその後継世代によって構成されている社会である。それが今、陸海空からの爆撃にさらされ、遡って祖父母の世代には武力により居住地を強制退去させられたという経験²を持つ人々が、数十万人という単位で再び移動を迫られているのであり、さもなくば、想像を絶する規模 での集団的懲罰に直面するのである。権利を剥奪され、イスラエル国防相に「人間の姿をした動物(human animals)」³と評された彼らは、もはやほとんど如何なる行為の対象にすることも可能な存在となっている。 私たちの各国政府は単に戦争犯罪を看過してるのみならず、むしろこれを支援し、助長している。そうした政府はいずれ必ず自らの共犯性について責任を負うことになる。しかしそうであるにしても今、民間人に対するあらゆる暴力行為と、如何なる人かを問わずこれを犯す者によるあらゆる国際法違反とを非難するとともに、私たちに課されている義務は、ガザ地区に加えられている未曾有の残虐行為を終わらせるべく、あらん限りの手段を尽くすことである。 私たちは、ガザ地区の破壊とパレスチナの人々の大量強制移住に反対するこの国際的な活動を支持する。私たちの各国政府には、イスラエルの行動に対する軍事的・政治的支援を取りやめるよう要求する。 私たちは、即時停戦と、ガザの各検問所の開放によって人道支援が妨害を受けることなしに届けられることの実現とを求める。
Japanese translation by threehours
訳注 ¹ マーティン・グリフィス(Martin Griffiths)国連事務次長による2023年10月15日のSNS投稿(https://x.com/UNReliefChief/status/1713544239546581307 )を踏まえたもの。
² 1948年のナクバ(大災厄)のこと。
³ イスラエルのヨアヴ・ガラント(Yoav Gallant)国防相による2023年10月9日の発言。