『秘密の森の、その向こう』

『燃ゆる女の肖像』が大好きで、そのセリーヌ・シアヌ監督の最新作ということで映画館に足を運びました。寝不足だったこともあり、途中すみません、眠くなるところもあったのだけど、それぐらい心地が良い映画。音楽も後半までずっとなくて、ほぼサイレントな中で、木々が黄や赤に色づく、まるで絵画のような森を舞台にお話が進みます。おばあちゃんとの別れを経て、新しい道を歩もうとする８歳の少女とその母。ふたりは心の底まで傷ついて、その哀しみを両手に抱えきれそうもありません。それでお母さんはある行動をします。それによってか、少女も特別な体験をするのです。

　もしかすると少女と母がもとのままの状態だったら、それぞれに壊れていたか、互いを傷つけることがあったのかもしれません。作品世界で起こることは母と娘が悲しみの壁を乗り越えるための装置だったのかなと思います。

　堪えきれなくなる母の気持ちはむちゃくちゃわかりました。パパやお母さんに甘える少女の気持ちもつたわって、今すぐ自分の子どもを抱きしめたくなりました。　

　セリフはたくさんあるわけではないのに、映画全体が語ってくるような作品。多くの方に観ていただきたいな。