楽屋で、幕の内。|旅に出る Oct.13
久しぶりに旅の取材に行ってきました。出発の前の週からソワソワ。雲の上にでものっているかのように、足元はふわふわ。泊まりの取材って何ヶ月ぶりだろう。でも過去はどうだっていい。目の前の今から起きることに集中したいと感じていました。迎えた当日の朝。まだ暗い時間にスーツケースをゴロゴロと転がし家を出て、飛行機に乗り込みました。面白い記事にするぞ、と鼻息荒く。
土地の空気を吸い、光を浴び、使われている言葉を耳にする。しばらくぶりにさまざまな場所を訪れて、この尊い体験を噛みしめました。好奇心がもう飛び出しそうでした。
私たちの仕事は何かを感じて形にし、誰かに伝えること。もっと明確な意図があり、そのために材料を選別して加工し、一番届くと思う形にして送り出す場合もあります。どちらにしても私たちの仕事はろ過装置です。だからフィルターはいつも磨いておかなくてはいけないし、行きすぎもだめ。正解はないけれど、縁あって自分の手元に駒が回ってきた以上、最適を追い求めようとまた思いました。
知らない土地を訪ねることは、いろんな種を身体に蓄えることだと思うのです。キーボードの手を休めて、夕方の光を見るとき、この感じはどこどこのあの時間のようだと思う。あの時のあの人は元気かな。そろそろレストランの外灯が点くころかしらと。いつもの自分の場所にいながらどこかの土地を思い出す。泣いたり笑ったり、悔しがったりしながら生きている今も、遠く離れたあの人たちも生きているのだと思うこと、それ自体が力になります。
そんな旅の醍醐味を知り尽くしている人は当然、たくさんいます。でも以前のようには出かけにくいのが今。代わりに少しでもその種を媒体を通じて届けられたらと、おこがましいですが、思います。
さて取材は発見の連続です。そんなものがあるのかと驚き、「なんですか、それは」「本当ですか」「なんでですか」をいつも連発しています。今回の南の島でもそんな事柄にたくさん出会いました。さて、どうまとめよう。書くってワクワク。苦しいけどね。