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愛されなきゃ、いけないの?
私は今、29歳。
俗に言う「アラサー」の真っ只中だ。
そして俗に言う、20代は仕事に恋愛に遊びに奔走してきました!ってやつをしたきた人なんだと思う。
寝る間も惜しんで飲み歩き、後悔しながら仕事に行き、性懲りも無く飲み歩き、遊び回り、時にはそのまま飛行機に乗った。新幹線の中で睡眠時間を確保した。確実に1日が24時間では足りなかった。
そんな身体に大ダメージを与えるような生活をしていた私なりに、ひとつだけルールを決めていた。
それは、"どんな出会いも大事にする"というもの。
例えばそれがナンパであろうと(あまりに酷いものからは逃げてたけどね。)、たまたま旅先で隣り合わせたおじちゃんおばちゃんだろうと、時にはお年を召したマスターであっても、その時その場の出会いを大事にする。そうすると私にとっても相手にとっても、特別な何かが積もる瞬間があるのだ。(と信じていた)
無鉄砲な遊び方をしていた割に、人脈に恵まれる運は持ち合わせていた方で、今でも入れば「おかえり〜!!」と出迎えてくれるお店があったり、いろんな地方に会いに行ける友達がいる。とってもありがたい。
その日も高校時代の友達と飲んでいて、「他県からきたんですけど、いいお店知りませんか?」という人達と一緒に飲み、2次会まで行った。
さらにその先でたまたま居合わせた渋いおじさまが「おもしろいお店に連れて行ってあげるから一緒にいこう!」と言うので、わからないけど面白半分についていくことにした。
3次会で行った先は、ゲイバーだった。
そして続けておじさまが言うのだ。
「ここが一番元気をもらえるところなんだよ。」
「アラ〜いらっしゃい何なの今日は小娘2人も連れてきちゃって私に敵うとでも思ってるの?いい度胸じゃない飲みなさいよ〜いくらでも付き合ってあげるわよ〜!!」
と、ここまでを一息で言ってしまうくらいの勢いを備えたママと、賑やかなゲイバーでの飲み会が始まった。
宣言通り、ただでさえそこそこ飲んでいた私達にいくらでもお酒を作り、いくらでも付き合ってくれた。最強のママがそこにいた。
飲みも終盤に差し掛かり、完全に酔いが回った私達とおじさまによる恋愛話が始まった。
「君たちはね、まだ若いんだから。たくさんの人と出会いなさい。僕はね、奥さんを大事にできなくて失敗したけど、でもちゃんと愛してた。人を愛して愛された経験をした人間は、優しく、強くなれるんだよ。」
シンプルに、しっくり沁みた。
なるほどね、だから本物の経験をまだ積んでない私達は、発展途上なのね。伸びしろだらけだね、なんて言って腑に落ちていたら、最強のママに、これまた一括された。
「ねえ、そんなよく言うけどさ、本当に愛されなきゃいけないの?」
え・・・?
「私はね、全人類を愛してるわよ。じゃないとこの仕事出来ないでしょう。ここに足を運んでくれるすべての人を、余すことなく愛してる。だから私、優しくて強いでしょう?加えて私、面白くて深みもある人間でしょう?」
「愛されるばかりじゃ、受け身なままじゃ、つまらないわ。きちんと人と向き合って、誰かを愛しなさい、小娘!」
一括されていたのはおじさまだったはずなのに、知らない間に矛先はこっちに向かっていた。いつだって、なぜか小娘は敵を作ってしまう。
愛されなきゃ、いけないの?
この日以降、この言葉が私の脳の片隅から離れなくなった。
女性がする毎日のメイクやスキンケアも、お洒落も、顔に貼り付けた愛嬌も、全ては”愛される”ためにする努力じゃなかったの?
それは他人からのそれもそうだけど、自分が自分から愛されるための努力でもあるし、必要なものなのでは?あれ?
そんなことはないらしいことをあの夜知ってから、それでも私にはわからないことが積もりに積もっていった。
もう1回話を聞きたくても、あのお店がどこにあるのか、何という名前のお店だったのか、ママの名前は何だったのか、何も覚えていない。後悔しかない。
でも、あの日あの場所で出会ったおじさまがたまたま繋いだ偶然の出会いだったとしても、あのママの勢いと佇まいを忘れることはないと思う。
愛されることを 望むばかりで
信じることを忘れないで
次の日に聴いたこの曲も含め、本当にいい夜だった。これだからお酒飲みはやめられないし、人ってものはつくづく面白い。
受け身なままじゃつまらない。だから、こっちから掴みにいくくらいの勢いを持って、これからも人付き合いを続けていきたいな。
愛されなきゃいけないの?いやいや、仕事も遊びも恋愛も楽しい今の私はそんなの待ってられないから。こっちから愛しにいきますので。そこんとこ、よろしくね。
あのゲイバーと、素敵なママと、イケ渋なおじさまが、今も元気で輝いていますように。