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発酵・酵素・進化などの単語について
本来とは違う意味で使われることが多くなった?
ここ10年くらい、健康食品とかで、発酵や酵素が多用されているのが気になってた。ほとんどの場合はちゃんと発酵してるし酵素も生きてるけど、一部、発酵してないんじゃ?とか、酵素死ぬんじゃ?とか。
発酵してなくても、酵素が死んでても、「天然由来で体に良さそう」という意味でこれらの単語が使われている場合がたまにある。最初はいちいちツッコんでたけど、最近は、「生物学で使われてきた発酵・酵素とは、別の意味で使われつつあるのではないか」と思うようになってきた。それはそれでアリじゃないかと。「なんとなくイメージが良さそうな用語を、それ以外の場面で流用する」っていうのは良くあるパターンだと思うので、それもアリかなと思うようになってきた。
昔は「進化」についても、いちいち気になってた時期があったけど、最近は抵抗がなくなった。
生物学的な進化には「良くなる」という意味はあまりないけど、一般的には進化を「向上」という意味で使うことが多い。去年よりも今年は進化した、技術が進化した、ポケモンが進化した、など(これらは全て、生物学的な意味での進化ではない。向上、上達、変態など)。でも、こうゆう感じで「進化」を使うのはすでに一般化されているので、それも全然アリだと思うようになってきた。むしろ、生物を研究する専門家だけが注意すればいいハナシだと思う。化学進化や宇宙の進化も、大枠で言えば似たような状況とも思えるし。
なので、進化と同様に「発酵や酵素」も本来の意味とは違う使われ方をしても、それはアリなのかも、と思うようになってきた。
なお、「進化に良くなるという意味が全くない、完全に中性である」とすると、そうでもないところが難しい点だと思う。「進化によって結果的に良くなることはたくさんあるけど、それは結果であって、本質的にはその過程が重要で、その過程こそが進化」という感じと思う。退化を「退行的進化、Reductive evolution」と言うことも多い。
進化を理解するのが難しい理由
最近、「進化のメカニズムを理解するのが難しい理由は、直感と反しているから」という話を聞いて、たしかにそうかも、とすごく思った。
ほかにも直観と反する現象ってたくさんあって、「よくできた科学は、魔法と区別がつかない」と言われるけど、そんな状況が無数にある気がする。電気や電話、パソコンやインターネットだって最初はそうだったろうし、最近だと量子現象とか、AIによる内部データ処理とか、あとは細胞内や細胞間のネットワーク構造だって直感(人間の認知構造)と反していると思う。とても興味深い!
この文脈での直感は、「日常生活で培われてきた感覚」という感じと思う。「日常生活からの身体知」とも言えそう。
1つの単語が別の意味をあらわす?
一方で、似たような状況に、「昔は大雑把な定義だったのが、科学が進歩して厳密な定義になってきた」という単語も良くあると思う。たとえば、
発酵:ワインやビールなどの醸造過程 → 狭義には解糖系
呼吸:生物が息を吸ったり吐いたりすること → ミトコンドリアでの電子伝達系(電子の授受)が呼吸の本体であることがわかり、両方の意味になった。植物は昼は光合成し、夜は呼吸する、など。微生物も呼吸する(電子伝達系)。
硫黄のニオイ:もともと温泉のニオイをイオウと呼んでいて、そのため硫黄分子(S)が硫黄と命名されたが、温泉のイオウの匂いは硫化水素(H2S)なので、両方の意味になってる。なので、温泉の「硫化水素の匂い」を「イオウの匂い」と呼んでも間違いではない(歴史的な経緯から)。
など。たぶん探せばもっとあると思う。これらは、別の現象を同じ単語で意味しているけど、両者はほとんど同じものなので、特に問題は無いと思う。
ひるがえって、健康食品界隈で使われている「発酵や酵素」は、これと同レベルのものなのか?という疑問はあるけど、まあ別にどっちでもいいか・・。