むかし、美人から

昔、美人から何度もメールが来た。
期待してた訳じゃなかったけど
やっぱり君と僕は離れていったね。

気のないコたちばっかりからの年賀状
期待はしてなかったけど..

特別なときに特別な人が居ない
昔ならこんな気持ち女々しいって言われたんだろう
胸張って恋愛したいよね。
後ろ指さされたくないよね。
君にも後ろ指さされて欲しくなかった。

オトコになれなかった僕にとっては
こんな言葉いくつ並べてもあの日の留守電の重さに勝てるわけがない
「ただいま でかけてます...」
相手のこと知らなければこんなに八つ裂きにはされなかったろうに
マニュアル通りに裏通りの愛し方だって
今の子はすいすいやってのけるんだね。


  時代に失恋することがこれほどつらい気持ちなら
  ウソでも明日は笑っていよう。
  ホントは君を掠いたかったけれど、やっぱり
  車にロケットを付けるのはやめたんだ。


”恋人”は「いない」っていってたけど、
そんなウソは”馬鹿にしてる”って言うんだよ
そのつやつやした頬を精いっぱいの作り笑顔で見ていたのは
やっぱり気づいてた?いや、たとえそうでも
君はこたえないだろうね。

ひと駅手前で途中下車していく君をなんの気なしに送った僕の顔は
たぶん”馬鹿”にも似ていたことだろう
人間失格の烙印はたぶんみんな隠し持っているよ
ただその逞しい胃袋で消化してしまうんだ。

特別なときに特別なひとが他の特別な人とすごしている
そして、今その瞬間だということを僕は今、知った。
君が彼の指輪を外していることは、たぶん、みんな、知っている。
僕が、君にあげるはずだった指輪を留守番メッセージの前で握りしめたのを、
たぶん誰も知らない。


パソコンわからないから教えてなんて
僕をえぐることだけなんだよ さあ
優しい兄の仮面で君の目の前から
人を恨むことの素晴らしさを隠してしまえ

  「尊敬する人とはそんな関係には」
  それはさっき読んだレディスコミックの台詞かい?
  ホントは君を掠いたかったけれど、やっぱり
  車にロケットを付けるのはやめたんだ。

さようならの文字はペンでは書けなかった
キーボードの文字を拾うのが精いっぱい
非リアルタイムなフラれ方。
ああ、明日っぽい。
昔、美人から何度もメールが来たことがある。

あれっ?僕ってやっぱり
幸せ者なんじゃなーい? なんちって

1995,01,04 00:55

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