記念の大雪

ゆっくり粉雪が降りてくる
瓦屋根の上につもる
窓から二人顔を出して
音のない世界を見てる
寒いねと言って僕を見た
君のまつげに雪が乗った

町はまだ眠っているだろう
街灯もまだ付いている
けど君の言葉がやさしい
肩を出していても寒くない

「愛してる」なんて言葉など
多分今はいらない
何より大事なことは
こうして二人でいること


今年一番の雪だと
テレビは慌ててるみたい
ぼくらが他人じゃなくなって
空が味方しているんじゃない?

「電車が止まっちゃったから」
言い訳を彼女がしている
受話器を置いたすぐ後に
僕がフロントにかける

ベタベタしたくなかった
恋人同士ごっこなんて
やりたくなかったから
言葉が少なくなっていた


いつから好きだったのか
今は思い出せない
でも目の前の君が
いとおしくて
狂おしく可愛くて
せつなくて

太陽が赤くまぶしい
レシートに日付を書こう
記念の大雪だから
来年もきっと思い出せる

マフラーを僕の首に巻いて
「大丈夫 寒くない?」って聞くから、
それは男のセリフだよって笑った
またあした会えるね

これからもずっと会えるね

1998/02/14 23:18

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